またまたお城にやってきた!
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翌朝。ルークはなんだか騒がしいなと思いながらカーテンを開けて、すぐに閉めた。
「ルークさーん、お話を聞かせたください!」
「ぜひインタビューを!」
「うちの娘を伴侶に!」
ルークが住んでいるのはマッサージ屋の二階だ。新聞記者や野次馬たちで店の周囲がごった返している。パン屋のおばちゃんの知り合いもたくさん来ているから、おばちゃんが話して回ったんだろうなぁ。
「これじゃ外に出れないな……」
ルークは途方に暮れた。商売どころか外出もできない。ユーティミス・オルグレンの言っていた「大変なこと」とはこのことだったのかと今更分かっても、時すでにおスシ……じゃなかった時すでに遅し。
はぁ、出張でマッサージに行ったときに出されたおスシがまた食べたい。特に炙ってある奴。
困り切って変なことを考えていると、鋭い笛の音がした。
「国王選定の儀の候補者はこれから城に来てもらう。御使い様のご指示だ。邪魔はしないでもらおう」
涼やかなかっこいい声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
窓からそっと外の様子を窺うとユーティミスと何人かの騎士が騎馬で新聞記者や野次馬たちを追い払ってくれているところだった。
ややあってから店の扉が叩かれる。
カギを開けるとユーティミス・オルグレンが立っていた。
「えっと……お手数をおかけしてすみませんでした」
ルークはひとまず素直に謝罪する。
「予想の範囲内だ。城やうちのような貴族なら門番がいるが、君の店は誰でも来れる。これから毎日こんな風になるだろう。城に来た方がいいのは分かるな?」
「はい」
「馬車もあるから支度をして城に行くぞ。店には休業の貼り紙を」
「……ありがとうございます」
掃除や洗濯は昨日のうちに終えていたので、ルークは着替えなどを旅行鞄に突っ込んで馬車に乗った。休業の知らせも忘れない。
騎士たちがルークの乗った馬車を囲むように護衛している。これではまるでお姫様だ。
「あのう……御使い様ってどういうことですか?」
ルークは馬車の窓を開けてユーティミスに話しかける。
「この国を造られた神が我々のために地上に派遣したのが御使い様だ。国王選定の儀の候補者の名前は御使い様から伝えられるんだ」
「へぇ……」
さっぱり分からない。ルークが故郷から王都に出てきたのはここ数年のことだ。前回の国王選定の儀があったのは今から30年ほど前。詳細なんて故郷では知る由もない。
「君は王都出身ではないのか?」
「はい、ド田舎出身なので国王選定の儀についてよく知りませんでした」
「そうか。王都で身を立てるのは簡単なことではないだろう。君は努力家なんだな」
貴族ってもっと平民をバカにしてくるものだと思っていた。ユーティミスがそうではないのか、国王選定の儀の候補者の地位はルークが思っているのより高いのか。
もう、ユーティミスみたいな人が国王になったらいいんじゃないだろうか。美形だし、厳しそうだけど優しさもあるし。
ルークは投げやりな気持ちになりながら昨日訪れたばかりの城に到着した。