レオニダスは守られたくない。
昨日は楽しかった。
レオニダスにしては素直に話せたし、悪態もつかなかった。
それに、ノエルがレオニダスの好物を覚えていてくれていた。
他人に聞かれると、なんだそんなこと、と言われそうなささやかなことだったが、レオニダスにはかなり嬉しい出来事だった。
気をよくしたレオニダスは、それ以来ノエルに余裕がありそうな時は食事に誘うようになった。
ノエルはいつも誘いに乗ってくれて、徐々にレオニダスへの警戒心も薄れている気がする。
レオニダスも、ノエルと話すことに慣れてきたので、照れ隠しや嫉妬で変なことを口走らなくなった。
つまり、今までで一番順調だった。
だから、レオニダスは浮かれていたのだ。
▷▶︎▷
その日は、戦闘中に急に雨が降ってきた。
雨が降ってきたなと思っていたらすぐに大降りになった。風も強く視界が悪い。
「予定より少し早いがここを片付けたら切り上げるぞ!地盤がゆるそうな所もある、気をつけて急げ!」
轟々と吹きつける風に負けない大声で団長が指示を出す。
レオニダスは視線の端でノエルを確認する。周りに 数人の騎士がいるので、とりあえず安全そうだ。
この辺りは翼のある空を飛ぶ魔物が巣食っている。魔術や弓で叩き落としてから止めを指す必要があり、討伐の難易度が高い。
ノエルだけでなく、騎士たちにも手こずっている印象の者が何人かいた。
それでも、比較的知能も低いし、体格も小さい。何とかなるだろうと思っていた。
空から、何かが降ってくる。少し反応が遅れたが何とか剣で防いだ。
がきっ!
すごい音がして剣が折れる。
どすん、と音がしてそちらに目をやると大きな岩だった。
魔物が落としたのか。
雨風のせいで視野が悪いが、よく目をこらすと小さい魔物に隠れるようにやや大きな体格の魔物が空を飛んでいる。足で岩を持っている。
周囲では騎士たちの慌てた声、そして岩が地面に叩きつけられる低音が雨の中に響く。
ノエルは、大丈夫だろうか。
そう思ってノエルを探すことに気を取られていたレオニダスは、再度頭上に迫る岩に気づかなかった。
「レオ!!」
そう叫ぶ声がして、ノエルが視界いっぱいに広がる。と、同時にノエルがレオニダスを全力で突き飛ばした。
そんなノエルの動きを全く予測していなかったレオニダスは後ろへと数歩下がる。
「なに、を・・・。」
何をするんだ、と言おうとして言葉が出なくなった。
レオニダスの目に入ったのは、先程までレオニダスがいた所で頭から血を流して倒れているノエルだった。