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ノエルの魔物討伐

魔物討伐の旅は、一言で言えば過酷だった。


団長を始めとした騎士団の面々は王都を中心とした魔物を倒すことも業務の一環であるので魔物退治に慣れているが、それでも怪我が多い。幸いにして死者はでていないが、ノエルがいなければ負傷のために脱落していただろう者はそれなりにいる。


また、騎士団が定期的に魔物退治を行っていたり、領主がきちんと管理を行っている地域ではない場合、棲みついている魔物の数が多く、退治するのはとても大変だった。


ノエルは1番後ろで数人の護衛の騎士と共に待機し、傷つき運ばれてくる騎士たちを治すのが仕事だ。

ノエルの魔力は一般よりかなり多いとはいえ、治す量も多いので、魔力切れを起こさないように気をつけながら最善を尽くして治療にあたるのは加減が難しく、慣れるまでは大変だった。


しかし、それもひと月もすると大分慣れてきた。

慣れて余裕が出てきた分、余計なことを考えてしまう。


自分なりに頑張っているし、ノエルも間接的にではあるが騎士団の役に立てている。それだけで十分だと、思わなくてはいけないとわかっているけれど。


前線で戦う騎士を近くで見ていると、やはり羨ましく思ってしまうのだった。




▷▶︎▷




今日は特に疲れた。広範囲の炎を扱う魔物相手だったため、火傷をおった騎士たちが多かったのだ。

魔力切れまではまだ少し余裕があるが少しふらふらする。

早く休もう。そう思い、騎士たちへの挨拶もそこそこに仮の拠点とされている町のノエルにと用意された部屋へと急ぐ。


「ノエル。」


げっ。

聞き覚えのある低い声が聞こえて、思わず無視しそうになったが何とか振り返る。


「何か用?」


我ながら聖女らしからぬ冷たい声と態度だな、と思うがしかたない。最初に原因を作ったのはあちらだし、今のノエルは疲れていて余裕が無い。

ノエルの冷ややかな視線にレオニダスも怯むことなく応える。


「魔力切れで倒れたれたら迷惑だからな。送る。」

「騎士様のお手を煩わせるなんて畏れ多いですわ。遠慮させていただきます。」


どうせ弱ったノエルをいたぶりたいのだろう、相変わらずいい性格だ。

嫌味をまじえてはっきり断るが、ノエルの言葉など聞こえていないようにレオニダスは横に並んで歩き始めた。


いい加減疲れているのに、レオニダスの相手をする気力は残されておらず、ノエルは黙って宿まで歩くことにした。

しばらく無言の時間が続いたが、レオニダスがぽつりと口を開いた。


「副隊長とは、仲がいいのか」


まさかそんなことを聞かれるとは思わなかったので一瞬虚をつかれたが、ノエルは正直に答える。


「レオよりは仲良いわよ。優しくて、紳士的だし。」

「好きなのか?」

「そりゃね。フェリックス様を嫌いな人なんているの?」


そう言うとレオニダスは黙ってしまった。

なんだったのかと思ってちらりと横を見るとレオニダスは不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。


なにが気に食わなかったのかはわからないが、レオニダスが不機嫌そうなのはよくある事なので放っておくことにした。

ちょうど宿にも着いたし。


「また明日ね。」


そういって宿に入ろうと踵を返すと、


「待て。」


レオニダスに手首を掴まれた。


「何よ。」

「優しくて、紳士的な男なら誰でもいいのか?」

「人を男好きのように言わないでくださる?」


掴まれた手首を離させようとするが、レオニダスの力は思いのほか強く離せない。

仕方なくそのままにして話を続ける。


「レオが私のことが嫌いなのは知ってる。でもーー」

「嫌いじゃない」


レオニダスがノエルの声をさえぎってそう言う。

意志の強そうな赤い瞳がノエルをまっすぐ見ている。

よく知っているレオニダスのはずなのに、なんだか知らない人のように感じてノエルはたじろいだ。

そんなノエルをみてレオニダスはさらに何かいい募ろうと口を開いたが、


「レオニダス、またノエルにからんでるのか?」

「フェリックス様!」


ゆっくりとこちらに近づいてきたフェリックスが声をかけてきた。

その声に答えたのはノエルだ。

何となく変な空気だったのでほっとして思わず表情が緩む。

そんなノエルを面白くなさそうにレオニダスがみているのに気づいて、フェリックスは内心苦笑する。


「レオニダス、誰にでも優しくしろとはいわないけど、そんなんだといつまでもそのままだぞ。」

「・・・別に、それでいいです。」


ノエルには訳知り顔のフェリックスとなぜか不貞腐れているレオニダスの会話がよく分からなかったが、フェリックスの持っている紙袋に気がついて声をあげた。


「そ、それは・・・!」

「あ?きづいた?ノエルが好きかなと思って。」


そういってフェリックスが取り出したのは、この町で有名なお菓子店現代のクッキーに粒の大きな砂糖をまぶしたものだった。


「さすがフェリックス様です!ずっと食べてみたいと思っていて!」


ノエルは疲れていたのも忘れて思わずはしゃいだ。


「ノエル、疲れてるかなと思って。朝1番で買っておいたんだ。あげるよ。」

「いつもありがとうございます。フェリックス様も召し上がりました?」

「僕はいいよ、頑張ってるノエルへのご褒美だからね。」


なんていい人なんだろう。

もともと高かったフェリックスの株がノエルの中で上昇していく横で、レオナルドの機嫌がどんどん悪くなっていくことにノエルは気づかないのだった。

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