表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

ノエルは幼なじみと喧嘩する。

目が覚めると、まず見えたのは覚えのない木造の屋根だった。


むくり、と起き上がるとずきっと頭が痛む。


(ああ、そういえば・・・。)


レオニダスの上に、魔物が岩を落とすのが見えて、でもレオニダスは気づいてなくて。レオニダスを守らないと思った時にはもう走り出していた気がする。

レオニダスを突き飛ばしてからの事は記憶にないが、この頭の怪我があるということは多分守れたのだろう。


そう考えながら頭の怪我を治すと、じわじわと痛みが消えていく。

ふと足のあたりに重みを感じてそちらを見ると、レオニダスの寝顔が見えた。


(なんでここで寝てるの・・・?)


よく見ると、いつもは精悍で凛々しい顔立ちのレオニダスだが、やつれているように感じる。

何となくレオニダスの方に手を伸ばすと、レオニダスが弾かれたように目を開いて上体を起こした。


「きゃっ?!」

「ノエル!」


急にレオニダスが動き出したことに驚いて声をあげる。伸ばしていた手を引っ込めようとしたが、その手をレオニダスに掴まれてそのまま引き寄せたられた。


(これ、抱きしめられてる?なんで?)


というか、


「レ、レオ!!痛い!離して!」


レオニダスの抱きしめる力が強すぎて痛い。

そう言って離れようとすると、レオニダスも我に返ったのか腕を緩めてくれた。


「なによ、寝起きのくせに・・・。あ、というか!レオ怪我はないの?」


そう言われたレオニダスの顔は、今までノエルの見たことのないものだった。怒り、悔しさ、悲しさ、そういった様々な感情が詰め込まれたような表情をしている。


「っ・・・!俺は!お前に助けて欲しいなんて思ってかったんだ!騎士になれたつもりかも知れないが、お前は聖女なんだから、大人しく守られてろ!」

「そ、そんなこと言って、私が助けなかったら死んでたかもしれないのよ?!」

「別に俺が死んでもいいだろ!どうせノエルは俺の事なんて嫌いなくせに!」

「わざわざ嫌いな人を命かけて守らないわよ!」


売り言葉に買い言葉でそう叫ぶと、レオニダスは一瞬、泣き出しそうな顔をした。


「と、とにかく!もう二度と俺を守ろうなんで思うな!」

「もう二度とレオを助けないなんて思わないから!早く出ていって!」


そう言い放つと、レオニダスは黙って部屋から出ていった。


折角、再会してからは和やかだったのに。

言いすぎただろうか。


そう後悔していると、ドアを叩く音がした。

入室の許可をすると、にこやかにフェリックスが入ってきた。


「フェリックス様!」

「あ、楽にしてていいよ。俺も座らして貰うしさ。」


フェリックスはそう言って起き上がろうとしたノエルを軽く手で制し、ベッドサイドの椅子に腰掛ける。

ノエルはベットの上ではあるが、姿勢をただし頭を下げた。


「フェリックス様、今回はすみませんでした。

聖女なのに、気を失って倒れるなんてご迷惑をおかけしました。今後はこのような事が無いようにします。」

「ん〜、まあそういうリスクも折り込んでノエルにも戦ってもらって効率をあげてたからね。ノエルが悪いんじゃないよ。

これは俺や団長の采配ミスだ。」


そうフェリックスは言ってくれるが、あの戦況から気を失ったノエルを運ぶのは相当大変だったことは想像に難くない。

恐らく怪我人もいただろうし、多大な迷惑をかけてしまったことは事実だ。


「・・・。」


ノエルとの付き合いが長いフェリックスは、今誰が何かをいっても正義感の強いノエルが自分を責めるのを止めないことはなんとなく分かっていた。

黙っているノエルを励まそうと話をかえる。


「さっきここに来る時に、ひどい顔のレオニダスとすれ違ったよ。

何かあった?」

「・・・、レオは、やっぱり私の事嫌いなんです。」

「うーん?それはないんじゃない?」


唐突なノエルの呟きにフェリックスが驚きつつも、きっぱりと否定する。


「だって、レオニダスのやつノエルが怪我してから2日間、つきっきりでみてたんだよ。自分も討伐後で疲れてるのにさ。

休めって言ってもきかないし。」

「私が、レオを庇おうとしたから、責任を感じただけだと思います・・・。」


そうだ、最近は優しくしてくれていたから勘違いしていたけれど、そもそもレオニダスはノエルの事が好きじゃなくて、意地悪ばかりだったのだ。

レオニダスからしてみたら、大人の礼儀として親切にしていただけなのに勝手に親しまれて、その挙句に庇われて、迷惑に思っただろう。


(レオは、私が嫌い。)


そう思うと、分かっていたことなのになぜだか胸が痛む。

討伐に来る前だったら、なんとも追わなかったはずなのに。

(なんで、こんなに悲しいの。)

しかし、落ち込んでいる場合ではない。


「お前は聖女なんだから、大人しく守られてろ!」


レオニダスのセリフを思い出す。

不本意とはいえ選ばれたのだから、聖女として、出来ることをしなければ。

そう思ってノエルはフェリックスに向き直った。


「フェリックス様、お願いがあります。」




ノエルのお願いを聞いたフェリックスは多少驚いたようだったが、団長に確認するね、といって部屋を出ていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ