予想外すぎる部下の価値
今、わたくしは貴族達に囲まれております。早速次期王妃に取り入ろうということなのだろう。適当にあしらおうとしたら、エルとガルに助けられた。
「くまも?」
「くーまぁ」
囲まれると、あれが食べたい!と料理を指すのだ。当然道をあけてくれるので目当ての料理を使用人に取り分けてもらう。
「くまぁぁ……」
「くまもぅぅ……」
ぬいぐるみなのに、エルとガルは食事ができる。食べたものはどこに行くのか……不思議である。排泄は多分しない。とても不思議である。
しかし、そこがどうでもよくなるぐらい、大きなナイフとフォークに苦戦しながら食事するエルとガルが可愛い。
「ほーら、エル。あーん」
「くまぁ!」
食べにくそうだからわたくしがカットしてあげることにした。あーんをしたら、嬉しそうにお肉をモグモグしている。可愛い。
「くま!くまも!!」
「はい、ガルもあーん」
「くまもー……」
それを見たガルが猛アピールしてきた。もちろんガルにもあーんをしてあげる。可愛いわ……!
「わ……私もくまさんにご飯をあげていいかしら」
「わ、わたくしも……!」
エルとガルは可愛いですものね!わたくしは頷いた。可愛いものは愛でるべきだわ!!他の貴族達も代わる代わるエルとガルに食事を与えている。そんな和やかな光景を眺めていたらガンドルフ様が話しかけてきた。
「同じ作者が、同じように、同じ時に作ったくまなのに、こちらは動かんな」
ガンドルフ様が、お揃いのくまを持ってきた。エルとガルは気がついたらしく、こちらに駆け寄ってきた。そして、ガンドルフ様によじよじと登る。皆様、羨ましそうに眺めている。
「この子達にとって、家族のようなものかもしれませんね」
エルとガルが一緒に作られたくまを抱きしめる。ふと、気がついた。このくまと、エルとガルの違い。
「………ガンドルフ様、この子にも名前をあげてはいかがですか?」
「名前?ふむ……エル、ガル……ルフはどうだ?」
その瞬間、ルフは輝いた。そして、跳んだ。
「くーまも!!」
はい??
「くま!」
「くまもー」
「くまくまー」
エル、ガル、ルフが輪になって踊っている。わー、かわいいー。※アルスリーアは混乱している。
「…………ふむ、動いたな」
「くーま!」
ルフはガンドルフ様の足からよじ登り、動かないもう一体のぬいぐるみを抱いてリーリアに渡した。
「は!?え!?」
「くーまも!」
「えええ……やってはみるけど……」
リーリアは戸惑いながらも針を取り出した。見事な装飾の針……これは、魔法具なのかしら?縫術師用の品?不思議な気配だわ。リーリアはその針に触れ、糸を生み出していく。それは、魔力の結晶。さっきよりも輝いているような気がする。
「私の友人で、主の旦那様認識……どうか、幸せになりますように」
それは、祈りだ。リーリアは迷わずくまに縫術を施していく。さきほどよりも明らかに強力な術だ。
「……できました!」
くまは動かないが、先程までとは比較にならないほどの魔力を感じる。
「ふむ……では、お前はリーアだな」
くまはピョコンと起き上がる。
「くまぁ!」
可愛いですわ!すごく可愛いですわ!
「くま」
「くーまも」
「くまもり?」
エル、ガル、ルフが輪になって踊っている…………!可愛いですわ!めちゃくちゃ可愛いですわ!!
「くまぁ」
「くまもー」
「くまっ」
「くまー」
はうう、仲良くスイーツを食べてますわ!可愛いですわ!可愛すぎますわ!!
「アルスリーア様」
「はっ!なんですの?」
「……もしかしたら、アルスリーア様のためなら守護も作れるかもしれません」
「………それは内密にしましょうか」
本気でリーリアをめぐる争いが勃発しかねない。守護は可愛いだけではない。守護を作ることは、縫術を極めたということ。守護を持つことは、最高の縫術師からの忠誠を得たということなのだ。そんなホイホイ量産されては困る。
くまだらけ……には惹かれるが、問題が起きるのは間違いない。
「縫術師様、お話を……」
「ぜひうちのお茶会に……」
「うちの息子はいあがですか?」
「はい!?え!?」
貴族達が早速リーリアに接触し始めた。蹴散らそうとしたら、ルインが誰より早くリーリアの側に移動した。
「申し訳ありません。彼女は自分と婚約予定なんです。まだマナーについて不安もあるので、またの機会にお願いいたします。リーリア、行こうか」
「ひゃい!」
やるわね、ルイン!あれはときめくわ!わたくし、応援しましてよ!ルインは次男だから家を継げるわけじゃないし、リーリアの家に婿入りしてもいいわよね!よく嫁欲しいって嘆いていたものね!リーリアの方もルインが気になっているようだし………アリだわ!
これから、きっとたくさん大変なことか起きるだろう。シャルドネ嬢や男爵令嬢の件も、解決していない。これから解決していかなくてはならない。
だけど、大好きな人がいる。
親友にして、配下もできた。
わたくしはもう、大丈夫だわ。
「くまぁ!」
「くまー」
忘れないで、というようにエルとガルが抱きついてきた。
「ええ、貴方達もわたくしを守ってくれるのね?」
「「くま!!」」
「アルスリーアは俺も守る」
「はいはーい!アルスリーア様の部下です!守ります!!」
「ふふ………ありがとう」
大切な人達に囲まれて、わたくしは本当に幸せだと感じた。皆となら、何があっても大丈夫だと心から思えた夜だった。
ここでアルスリーア編は終了。次回からはリーリア編になります。




