魔竜国にて
「ここは?」
そこは、先ほど戦ったような竜がたくさんいて、しかし人もいて争うことなく楽しんでいる町があったのだ。
「セイヴァー?ここはどこなの?……」
そう美緒が聞くと同時に、ある声が聞こえた。
「おかえりなさい!!怪我は、大丈夫なの?!」
15、6歳程度の女の子が走ってセイヴァーに飛びついてきたのだ。そしてその女の子はこちらに気付くと同時に
「私はライリー・ローレンと申します。あなたたちが助けてくれたのですか?この子を。」
と、聞いてきたのだ。
「僕は岸 雄成といいます。いや、助けたというより助けてもらいました。あなた、セイヴァー…いや、この子と知り合いなのですか?」
「知り合いも何も私の家族です。私たちが外に行っているときに魔竜に襲われ私たちでは勝てず、逃げ出した時この子が魔竜を引き付けてくれ、逃げることができました。本来魔竜は聖竜単体で、戦うべき相手ではないのでもう会えないと思っていました。なのに、あなた方のおかげでこの子は帰ってこれたのです。本当にありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、この子がいなければ、生きていません。本当にありがとうございます。あと、聖竜、魔竜?とはなんなのですか?あと、この子この子と言ってますが家族ということは名前があるのですか?」
「魔竜とは家族がいない竜でこの世界の魔物が進化すると魔竜と呼ばれています。聖竜とは、魔竜とは違い私たちのような家族がいて、昔先祖様が、ある魔竜と家族になったのがはじめと言われています。この子や、ほかの聖竜はその先祖だといわれています。名前はありませんよ。まだこの子は14年しか生きていないのです。聖竜の名前は、15歳にならないと名はつかないのです。しかし、このことはほかの国の人でも知っていることです。なぜ知らないのですか?」
そう聞かれ、岸達はこの世界にきたきっかけ、そこから何をしていてこの子と会ったかをすべて話した。そして、
「転生人……ですか。伝説の存在ですが、魔竜を聖竜とした祖が転生人と言われています。なので、存在は否定しませんが…私一人ではこの国に滞在することを認めることができません。とりあえず私の家の客室を、使ってください。こう見えてもこの国の貴族です。明日までに結論が出るよう王に話を通します。それまで、少しお待ちください。」
「なにからなにまでありがとうございます。その話が通ればこの国のことこの世界のことを教えてもらえますか?」
「それは、もちろんです。私ではなく従者に聞いてください。今から、王宮に行きますので、おやすみになられてください。その間にうちの従者に聞きたいことがあれば何でも聞いてください。では。」
そして、岸達は突然背後に現れた従者に屋敷に連れて行ってもらい、休みを取りこの世界についておしえてもらったのだ。そして、次の日
「岸さん。皆さん。おはようございます。朝ごはんの用意ができました。一緒に食べませんか?」
「ライリーさん、おはようございます。ご一緒させてください。食料が全くないもので。」
「ライリー、ですよ?」
「いや、呼び捨てにするのは……」
「ライリーですよ?」
「……ライリー、おはようございます。」
「おはようございます。では、食堂の方へどうぞ。」
笑顔がとても怖く押されきってしまった雄成だったが、呼び捨てにしたらしたでほかの視線が怖くなったのは言うまでもない。
そして、朝ごはんを食べた後に
「雄成さん、このあと、美緒たちと王宮に来てくださいませんか?王が、直接会って話したいとおっしゃっておられます。」
いつの間にか下の名前で呼ばれているのだが、気にしたら負けというものだ。気にしてやめてくれと言っても押し通されて視線が怖くなるのは決まっているからだ。
「はい、こちらこそ。この世界の人々と話したいと思っていましたから。」
そして王宮にご飯を食べた後、王宮に行くまでの間いろいろな話をした。勇者の話や元の世界での雄成の話、雄成の先祖の話などをした。美緒が雄成の話をたくさんしてずっと彼女であることを自慢するかのようにずっとライリーのほうをにらみながら言っていたのは幻覚に違いないのだ。美緒が仲良くしたくて見ていただけのはずなのだ。彼氏という言葉が聞こえそうなときだけライリーが違う話にしたり、雄成のことをすっと見ていても幻覚にちがいないのだ。
そして、王宮について
「雄成さんたちなら大丈夫だと思いますし、今の王なら大丈夫でしょうが、一応礼儀はちゃんとしてくださいね。万が一、従者が怒ったら手がつけれませんから。」
「わかってます。さすがに王様相手にそんなことはしませんよ。」
「そうですよね。ではもう、王様の部屋につきます。」
そして、扉が開けられ、そこにいたのは、セイヴァーとは比べほどにならないほど大きい竜と一人の王様だった。
「お前らが、ローレンのやつが言っていた。転生人か……。そう身構えるでない。普通に話してくれるだけでいい。ローレンのやつが嘘をつくとは思えんしあいつのやつが助けてもらったといっていたからな。転生人じゃなくともそれ相応の褒美はやらないといけんからな。」
「ありがたきお言葉です。王様。私は岸 雄成と申します。」
「ハハ。わしは、オリバーという。礼儀正しい奴じゃな、お前は。わしの王竜も警戒を初対面でしないやつは初めてじゃ。して、本題に入るが転生人と証明できるものはあるか?この世界にないようなものだ。できたのなら、何もせずに信用できる。だが、証明できないのであれば、ローレン家が養うしかない。信用できたのであればこの国がもてなしできるだけのことはしようではないか。証明できなかったら他国からのスパイなどがありうるからな。其れを国で守ったとなれば大ごとだからな。一応じゃ。わしはもう信じとるが、形式上な。」
「当然です。証明ができないのに助けたとあればローレン家、王家が信用を失いますから。証明といってもスマホなどがありますが、携帯というものや写真というものはありますか?」
「スマホ?シャシン?ケイ…タイ?なんだそれ?みせてみよ。」
そういわれ、雄成はスマホを取り出し、王様に渡した。
「何なのだこれは?」
王様は初めて見たスマホが、興味深いようでずっと見ている。
「これは、スマホというものです。下のほうにあるボタンを押してもらうと電源がついて、それで文字を書かずに記録したり、遊んだりできるものです。」
「ほう。確かにこんなものはないな。いいだろう。これはもらったりできるか?、できないようなら、少しの間借りるだけでいいのだが。」
「さしあげますよ。王様。それで証明になりましたか?」
「ああ、十分だ。では、これからどうするのだ?」
「この国この世界のことをもっと知りたいです。ので、この国を回りたいと、思います。しかし、私たちと一緒に来た転生人がほかに二十人いて、この世界の探索をしています。ローレン家の従者に聞いた話では魔物がたくさんいると聞き心配なのですが、どうにかして助けれませんかね?」
王様は、少し考えた後、
「よし、それであれば、竜戦士たちに地上の探索をしてもらおう。お前たちみたいにほかの国に拾われてたらということも考えて、使者も一応飛ばしておこう。」
「ありがとうございます。王様。」
「では、一応部屋も用意できるがどうするか?ライリー?」
「王よ、わたくしの屋敷で預かりたいと思います。どうでしょうか?」
「ライリーよ。よもや……何も言うまい。いいぞ。では、転生人たち一行はローレン家管轄とする。いくらでもこの国のことを見て行ってくれ。」
「ありがとうございます。王様。では、失礼します。」
そして、王宮を出てまずは、ライリーの案内で町を回っていた。
「そういえば、ライリー、王様の横にいた王竜ってなんであんなに大きいんだ?」
「王竜はですね。代々王家に継がれている聖竜の祖直系の竜で今年で250年生きていたはずです。」
「へえ、だからか。普通の聖竜はあんなに大きくなるのか?」
「一応なります。聖竜の祖の血が薄い竜は少ないですからね。まず、あまりいない。でも聖竜の祖直系よりは薄いので王竜を超えることはできません。それでも、うちの子は寿命が250~300歳ぐらいだと思いますね。王竜は350歳ほどだといわれてますが。もう最近は200歳を超えれる聖竜も少なくなってきました。」
「そうなんだ。聖竜の祖は、どれくらい生きたかわかる?」
「伝説なのでほんとなのかはわかりませんが500年ともいわれていたりその遺体がないのでまだどこかで生きているともいわれています。」
「その聖竜の祖やその伝説の転生人がいたのは、何年前ぐらいだといわれているの?」
「1000年以上前だと、言われています。しかし、誰も本当のことは分かりません。」
ライリーは暗い顔になっていった。
「どうしたの?」
「900年前に起きたある大戦争で全ての聖竜の祖や伝説の転生人に関する書物が消え去ったのです。その時はまだ年を取らないといわれていた転生人は生きていたといわれています。でもその大戦が終わったときに数万の人とその多数の書物が消え去り伝説の転生人も消えました。それが、時空の覇国があるといわれたきっかけです。その戦争に巻き込まれ、たくさんの聖竜が、命を失いました。うちの子の先祖もです。」
「そうだったんだ。その大戦ってなんで起きたの?」
「もとは、この空の魔国、地下の帝国、大地の王国は一つの国でした。しかし、魔物と聖竜のことを考える宗教がありその考えは一部の貴族に伝わりました。そして、それは聖竜のみでなく獣人、魔物の耳や尻尾をもった一族たちのことも悪しきものと考えだしました。そして、その考えを持つ人々がその時反乱を起こしました。もとから魔物がたくさんいる地上は住んでいなく地下に全員住んでいました。その反乱により、聖竜を家族とするもの、エルフ、獣人は追い出されました。地上では住めるような場所も少なく、聖竜たちが空の国を持ち、獣人たちはわずかな平地で暮らしました。そうすることで反乱、大戦は収まったとおもしました。しかし、追い出された側はそれで済まさず、地下へと攻撃を始めました。その大戦でたくさんの命がなくなり、取り返すこともできませんでした。それが収まったときにはすでに転生人はいなかったということです。今のが現在に伝わっている大戦です。」
それを言い終わったライリーは、とても疲れた顔をし、でもすぐに元気な顔を取り戻し
「でも、今はこれでいいと思ってます。あれから900年ずっと平和です。無理やり地下を取り戻しても戦争ばっかりだと思いますしね。国交も良好ですし。」
それを聞き雄成たちは、なにかを感じ、伝説の転生人が何かをしてほしい、何かをしたかったという気持ちがわかった気がした。
そして、このようにこの世界のことをたくさん教えてもらって町を回って、ローレン家に帰ってきたその夜
ライリーが訪ねてきた。
「雄成さん、お話いいですか?」
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