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雑貨屋の話
彼女とデートに出かけた。
訪れたのは、町はずれの雑貨屋。塔のような造りをしていて、店内の中心にぐるぐると天井まで続く螺旋階段が伸びている。階段に沿って棚が並び、品物がごちゃごちゃと飾られていた。
彼女と共に階段を登りながら商品を物色する。妖しい黒や紫の小箱やねずみなのかトカゲなのか分からない不細工なぬいぐるみ等、どうにも趣味の悪い物ばかりだ。
早く出ようと彼女を見ると、胡散臭い占い師が持っていそうな塗装の剥げかかった香炉を気に入っていた。購入する、とレジへ向かうと、売り台に座っていたのはこれまたそういう感じの紫紺のローブに身を包んだ太った老婆だった。
正直気味が悪く、変なものでないといいけれど……と心配になったが、包みを嬉しそうに抱く彼女はそんなことはまるで考えていないようだった。機嫌が良いのか、帰り道は彼女の方から僕の手を繋いだ。
目が覚めた。彼女がああいう物が好きだとは知らなかった。あの雑貨屋が現実にあれば、彼女はきっとすごく喜ぶのだろう。