第四夜
僕は佐藤 健だ。クラスで一番の成績で親はある薬品会社の代表取締役つまりエリートというやつだ。そしてこのエリートがいるクラスに今日新しいやつが転校してくるらしい。ただそいつはあのクラスで一番の美少女の(と僕が勝手に言っている)鈴川 理奈を助けたらしい。それだけならいいが、その時のことを理奈は楽しそうに話していた。
いったい何をしたんだ。彼女は普段からクラスの女子達と楽しそうに話しているが、あんなに楽しそうなのは初めて見たぞ。そのせいでクラスの女子達は
「ついに理奈にも好きな人できたんだ。どんな人なんだろう」
「私もそんな素敵な彼氏ほしいなぁ〜」
とか言って恋話で盛り上がっているのを見たが、いい加減にしてほしい。あの時は学校が休みの日ですぐ動ける人が少なく、悪夢は基本的に大量発生するので大人達も忙しかった。なので、夢をある程度顕現出来る理奈しか行けなかったから、その時に救われたことによる吊り橋効果で勘違いをしているのだろう。だからその男を見定め排除しなければならない。
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そろそろホームルームだなと思った時教室のドアがガラガラと開いた。
黒澤先生が入ってくるのと一緒に男が入ってくる。たぶんあいつが例の転校生だろう。
「はい、みんな席に座ってね。HRを始める前になんと今日は転校生が来てます。というわけで守城くん、どうぞ!」
「えーと、いきなり引っ越す事になって転校して来た守城 悠木です。よろしくお願いします。」
突然引っ越して来ることなど知っている。夢のことに関わったんだ、連れて来られるに決まってる。
それよりもなんだあの男は。見た目はひょろひょろだし、特にこれといった特徴がないじゃないか。あんな男のどこが良いんだ?理奈は絶対誑かされたんだろう、ふざけやがって!
と思いながら奴を思いっきり睨んでやる。
で、奴の自己紹介が終わったあと
「じゃあ悠木くんの席はあそこね」
と言って先生は廊下側の一番後ろの席に人差し指を向けた。そうあの理奈の隣の席だ。あんな奴が隣になるとは許せない。さらに怒りが増す。
なっ、あいつが席に向かおうとしたら理奈が手を振っただと。しかもそのあとなんか楽しそうに喋っていた。そのせいで
「あの、一応ホームルーム中なので静かにしてくださいね」
と、理奈と奴が先生に注意される。
あの野郎、理奈と仲よさそうにしやがって。
しかもそのあと理奈は先生から奴の学校案内を頼まれていた。理奈と二人きりで学校案内だと⁈ぐううう、ふざけやがって学校のことなんぞてめーで勝手にパンフレット見ればいいだろうが‼︎
クソッ、めちゃくちゃむかつく。なにか奴を貶める方法はないのか?
そういえば奴の左隣の女は夢を顕現しても役立たずだったはず。そしてこのことを奴を知らない。しかももうすぐで試験がある。ならこの作戦で行こう。
「ククク……」
「おい、佐藤いきなりどうした?何か面白いことでもあったのか?」
数学の教科書の問題を解く時間だったのか近くを歩いていた先生に注意された。
「……なんでもないです」
授業中だったことを忘れてた……
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「おい転校生」
数学の授業が終わった直後誰かに声がかけられる。あ、さっきなんか笑ってた奴だ。
「そろそろ試験があることは知ってるな?」
まあ知ってるけど、こいついきなりなんなんだあの篠原さんと同じ空気がするんだが、
「ああ、一応知ってるけど」
「その試験ではもちろん夢の顕現を扱う試験がある。そこでだ、僕と勝負をしないか?お前はあのカエルを倒したんだろう。なら、当然高得点出せるよなぁ?」
俺が答えた瞬間被せるように言ってきた。しかも煽ってきてるし、流石にムカつくな。たぶん断ってもいいだろこれ。
「嫌だ」
「勝負形式はいたってシンプル。どっちがポイントを、って今なんて言った?」
「嫌だって言ったんだが、そもそも試験の内容を詳しく知らないのに、はいそうですか勝負しましょうかとはならねぇだろ。つかいちいち英語使うな、ムカつくから」
まあ簡単な英単語なら全然良いんだけど、それでも英語は嫌いだからできるだけ使って欲しくない理由は何を言ってるのかよく分からなくなるからだ、っていうか日本人なら日本語をできるだけ使って欲しいと思います。
ちなみに答えた後こいつは
「なっ⁉︎まさか勝負を受けないとはな。ちょっと挑発したら乗って来ると思ったんだがそこまで馬鹿じゃなかったか」
と小声で言っていた。っていうか小声で言ってるけど聞こえてますよ〜。
っていうか俺のこと馬鹿にしすぎじゃね。なんかすごい既視感を覚えるんだけど。たぶんこいつにも関わらない方が吉か。
「まあ知ってるならそりゃあそうだよな。隣のお荷物抱えながら戦うのはさすがに負け確定だからな」
小声でさらに何か言ってる。つか、お荷物ってなんのことだ?
「お荷物?」
思わず声に出してしまった。
「ん?あ、もしかして知らずに断ったのか。負けるのが単純に怖かったのか、なるほどな。じゃあ一応教えておいてやろう」
こいつ無駄に偉そうだな。
「今度の試験はツーマンセルで行う。そして悪夢の大量発生を想定した討伐、もしくは一般人の救助を行う二つの試験がある。もちろん、どれだけ倒したか、救出したかでポイントが変わってくる」
想定した試験ってことは悪夢が大量発生する時があるってことか。で今回の試験はそれに則った試験ということだ。って言ってもあの時はカエル一匹しかいなかったが救援が来なかったのはどうしてだ?
あとツーマンセル?ってなんだろう。
「そしてお前がペアを組むのは左隣のそいつ。夢を顕現してもろくに役に立たない女だ」
と言ってこいつは俺の隣の席を指差した。そこには眼鏡をかけた本を読んでいる少女がいた。
っていうかさっき挨拶したわ、よろしくって言ったらちょっとだけお辞儀をしてくれた。
「だからお前がもし勝負を受けていてもお前は負けていたのさ。ただ覚悟しておけ絶対に理奈は渡さないからな」
そう捨て台詞を吐きあいつは去っていった。あ、そゆことですか。ツーマンセルって隣の少女と組んで試験をやるってことね、いやいきなりお荷物呼ばわりは可哀想だし、無駄に英語使われると分かりづらいわ!理奈さんのことは俺のもの的なことも言ってきたし。
……今の理奈さん聞いてなかったかなぁ、と淡い希望を抱いて周りを見たが、当の理奈さんは女子達と喋っていた。
というかそもそも周りが結構騒がしいから会話聞こえてなさそうだし、またこれはかなり面倒なことになったな。いや正確には面倒臭い奴に絡まれたか。っていうか転校生って宣戦布告されるものなのか?普通は質問攻めにあったりするもんだろ。
「はぁ〜」
思わずため息が出る。なんか授業合間の小休憩のはずなのに疲れた。あいつと話し始めて5分くらいしか経ってないけど、めっちゃ疲れた。だるくなって机に突っ伏してると
「大変やなぁ、お前も」
と、今度は前から声をかけられた。
まあ返事した方がいいだろう。
「まあな」
「ちなみに教えとくと鈴川って可愛いから結構クラスで人気があってな。特にあいつ佐藤健っていう奴はな。鈴川のことを本格的に狙ってる奴なんや」
「はぁ」
「そこで鈴川が事件の後楽しそうにお前のことを喋りよるから、たぶんお前恨まれとんねん」
なるほど関西弁か。
っていうかそんなことで俺は勝負に挑まれたのか。しょうもないが本人にとっては大事なことなのか?まあでも教えてくれたこの人には感謝しなきゃな。
「そっか、教えてくれてありがとう」
「いやいやむしろ知らんままの方が可哀想やったから勝手に話してもうたわ。俺は江川泰平って言うもんや。よろしくな守城」
「別に下でいいよ、こちらこそよろしく」
「そうか?ほならこっちも下でよんでくれや悠木」
「ああ、そうさせてもらうよ」
ちょっと喋っただけだけど絶対いい奴だよ泰平。わざわざ知らんままの方が可哀想だからって教えてくれるとか、よかった〜こういう人が前の席なのはとてもありがたい。
あ、そういえば聞きたいことがあるな。
「そういえば俺が関わった事件の時、全然救援が来なかったけどなにがあったか知ってるか?」
「ああ、それな。実は悪夢が各地に大量発生してる上にすぐ動けて戦える奴がその時少なくてな。だもんで対応が難しかったんが原因らしいわ」
「そうだったのか……」
やっぱり悪夢が大量発生する時はあるのか。
「つっても一匹は悠木が倒したんやろ?初めてなのにすごいやないか」
「まあ色々とあったけどね。っていうかそういうことももう広まってるんだな」
「鈴川が喋っとったからなぁ。そりゃあ広まってもしゃあないやろ」
ですよねー。というかたぶん理奈さんが話さなくても広まってたんだろうな。あと聞きたいことは……
と考えてる時に
キーンコーンカーンコーン
と、学校のチャイムが鳴る。子供の頃からチャイムという英単語は知ってるからこれは大丈夫だぜ。
教室に先生が入ってくる時に泰平は
「じゃあ教えて欲しいことあったら出来るだけなんでも教えたるから後でな」
と、言ってくれた。優しいなぁ泰平。
ちなみに泰平は
こいつ鈴川のことがあるとしても転校初日から佐藤から宣戦布告されるとかおもろすぎるやろ。それに相当強いらしいし関わっといて損ないやろ。
と、結構打算的なことを考えていたが悠木は知る由もないことであった。
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忙しかったけどやっと終わった。さて、仕事が終わったら何が始まるんです?




