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8。チュッ!チュッ!チュッ!チュッ!

「そろそろ宿舎に戻ったほうがいいぜ。夜の全体リハもあるんだろ」

「ああ、もうそんな時間かあ。ずっといたいなあ」

みゆはまだまだ満ち足りないようだ。ベッドを駄々っ子のように転がりまわる。

「まるで赤ちゃんだな」

そう言ってカイトはみゆの髪を撫でる。みゆはバブバブと赤ん坊の口真似をしてみせた。

そしてそのままの勢いでファン向けのメールを打ち始めた。

『みゆたんのハートは赤ちゃんのまんまのピュアネス。自分のハートのまんまを届けたい。嘘なんてつけないの。バブ~!みんなにもそうあってほしいなあ。みゆたんの願いはあなたが幸せになること!あなたと一緒に幸せになること!あなたの喜ぶことならな~んでもしてあげちゃう!今日が終わるまでずっと一緒だよ。チュッ!チュッ!チュッ!チュッ!大好キッス!』

「ちょっと貸してみな」

カイトはモバイルを取り上げると簡単な修正を加えた。顔文字を増やし、最後に『ああ、選挙シングルの写真に入りたいなあ。あなたの愛、みゆたんに伝えてほしいにゃ~☆』と付け加えた。

「これでよし」

カイトは送信ボタンを押した。 


大ホールでの集中公演の際には宿舎でメンバーたちと過ごさなければならない。カイトはむずかるみゆに服を着せるとハグとキスとともに送り出した。カイトはなんとはなしにネットを開いて「なにわっ子」のサイトを眺めた。


アーヤが宿舎の部屋から動画を配信していた。アーヤこと山根彩乃は未来のセンターと目される期待の新人だ。そこにミルルーこと白滝美留が入ってきた。これは1期生のベテラン。華麗な容姿と豊満なスタイルを誇り、サーヤに次ぐ「なにわっ子」のエースである。「なにわっ子」次期センター本命とされており、みゆの前に立ちはだかる大きな壁である。


「みゆたんさんといつも一緒の部屋なんですがー、この前もなかなか帰ってきませんでしたー!アーヤは後輩なので、勝手に先に寝れませーん!」

アーヤが愛らしい無邪気な笑顔で怒ったフリをする。

「ははは、薬局行ってるんだっけ?健康食品好きだからね~」

隣でミルルーがフォローする。

「ここだけの話、みゆは公園にエロ本拾いに行ってまーす!」

視聴しているファンたちがコメント欄に一斉に「wwwwww」を打ち込む。

「いやいや冗談、マジな話すると哲学の勉強してるんやけどね。階段の踊り場なんかで薄明かりの下勉強してたりするからね~~。みなさん見つけてもそっとしておいてくださーい」(wwwww)

「みゆたんさーん、早く帰ってきてー!エロ本なら私がいっぱい持ってますよー!」(wwwwww)

「持っとんかいっ!(ポカッと軽くグーパンチ」(wwwwwww)

「きゃ~~っ」(かわいー!超絶かわいいアーヤー!アーヤーは大天使!)

「中学生はさっさと寝なさい。今日は私が許すってか、ネロ!」

「はーい!おやすみなさーい」(8888888888)

「大人メンバーは全体リハとミーティングでーす。公演で会いましょう!」(8888888)

配信が終わった。カイトはチッと舌を鳴らして吐き捨てるように言った。

「まずいな。ミルルーの野郎、感づいてやがる。正統センター候補は伊達じゃねえな!」

カイトはゴロリと横になった。ベッドにはまだみゆの匂いが残っている。

しばらく目を閉じてあれこれと考える。それからカイトはギラリと目を見開いた。

「急がなきゃ」

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