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4。ゼロ番

「カイト聞いて!!」

みゆが歓喜の声をあげて電話してきた。一般解禁前の内部情報だった。

「今もうレッスンに入ってるの!イントロで皆がダンスして、その列がバッと左右に割れたら、階段から降りてきた私がゼロ番に歩いて行くの!!MVは台湾で撮影だって!秋長先生が私をイメージして書き下ろしてくれるんだよ!!」

ステージ上でのポジションは数字で表現される。「ゼロ番」とは先頭にして中央、つまり楽曲の主役『センター』である。

それから1週間後にスポーツ紙の芸能欄に記事が出た。


『次のシングルセンターはあの哲学美少女!!』


『国民的アイドルグループの今回のセンターはなんと!あの清純哲学アイドルが若手ながら大抜擢!』

プロデューサーの秋長康人氏はこう語る。

「彼女のセンスに僕は前々から気づいていた。オーディションが始まる前から予感があったんだ。彼女にしか表現できない世界を見せつけてくれることは間違いない。」


柊みゆの哲学書を手がけた幻影社の見船徹社長はこう語る。

「みゆたんの前衛的センスは神がかってる。彼女の霊性を僕は何度も感じた。『考えるな感じろ』と言うなどその鋭いセンスには前々から着目していたし、夢のために全てを賭けている姿勢が僕の全身に響いてくる」(新聞記事より抜粋)


哲学書は学者や個人のブログからカイトがパクってパッチワークした原案をみゆが持ち前の勤勉さで

アレンジしてそれらしく仕上げたものだ。


「サーヤさんに最近怒られなくなったよ」

「そっか、よかったな」

「みんな私に合わせてくれるの」

「ダンスなんて拘っても見てる人誰も理解できないもんな。あんなのはユルくていいんだよ。だけどみゆ、これからが本番だぞ。いよいよ『ゴリ推し』がかかってくる。この『ゴリ推され権』を譲っちゃいけねえ」

アイドルグループ運営が集中的に時間と費用を投下して売り出すことを『推す』という。猛烈に売り出し攻勢をかけることを『ゴリ推し』するという。メディア露出も格段に増加する。才能を証明してゴリ推される権利を獲得することがアイドルたちの闘いの第一歩である。

「オマエはどんどん炎上発言を繰り返して、炎上女王リーノを叩き出すんだ。卒業に追い込んでお前がグループの女帝になりあがるんだ。それにしても……」

裸エプロンのみゆがキッチンでりんごの皮をむいている。

「見られるのは気持ちいいか?」

みゆは全身をあからめながら、小さくしかし深く頷いた。カイトはその姿をじっと眺め回した。

「もっともっと燃えるんだ。俺のためにな」

みゆは今度は大きく頷いた。

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