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37,落ち着いて!丁重に!的確に!

「機械は苦手なんだよな」

銀狐は渡されたハンドモニターに映る第三の侵入者を示す緑色の点を目で追う。

「こっちが東でこっちが西。現在地点がここで、こいつはここか」

「行ってくれ」

「あんたはお嬢ちゃんたちと楽しくゲームかよ」

脳波操作用ゴーグルをかぶった火竜は声のトーンを変えずに繰り返す。

「行ってくれ」


赤と青の火焔が襲ってきた!!美留は素早くかわした!

「逃げ回るばっかりじゃ拉致があかんで!」

「落ち着け、無茶振りにパニックなったら負けやってバラエティで勉強したやろ!」

「せやせや、必ず突破口はあるねん。よく相手を見て空気を読んでの切り返しや」

空気……空気……空気……!

空間をぐるりと一回転しながら美留は素早く全方位に視線を走らせた。

ファイヤーボールが身体をかすめて突っ走っていく。

「しかしあれやなぁ~!」

「なんやねーん!?」

梨奈とカナエも星雲の中を回転しながら攻撃をかわしている。

「回転してもスカートがめくれんゆうのはありがたいもんやなぁ~」

「宇宙はパンチラないみたいやな」

「見せパン無しで踊れる」

見せパンとはスカートの中に履くダンス用のパンツである。

文字通り足を上げて見せるためのパンツであり、実際の下着ではないものの

スカートがひらりとめくれてそれが見えるとファンの歓声は倍増する。

意図的な「チラ」もまた重要な技法のひとつである。

足元をファイヤーボールがかすめていく。

「このボンクラ人魂に見せるチラはないでえ~~!」

カナエが石板ボードで踏みつけるようにファイヤーボールへの攻撃を試みる。

「うわっち!あかんわ!」

しかし灼熱を感じて急速離脱した。空間に続々とテレポートしてきた隕石が浮かぶ。

隕石はやがて集結し大きな岩が生成されてゆく。

「うわわ、こんどはアステロイドアタックや。突っ込んできよるでえ!!」

「おちけつって!ゲームやから必ず攻略法はあるはずや」

「武器はないんか武器は、ミサイルか何か!」

「コントローラーはこの石版……、っちゅうことは」

美留は先程から気になっていた石板の上に置いた両足の先端を結んだ頂点にある

赤い三角形を踏み込んだ。唸るような電子音とともに目の前の空間に表示が浮かびあがった。

「おおっ!コントロールパネル来たでえっ!」

空間がそのままモニターになり並んだアイコンをタッチすることで操作できる。

「武器……武器は……!?これか!!」

画面に映る美留のシルエット、その肩の辺りに蛍光ピンクが表示された。

手を触れるとVR空間ながらしっかりとした感覚がある。美留はビームサーベルを引き抜いた。

「ピンクは一番可愛い色や!」

梨奈も同様に背中から武器を取り出した。

「天使のハンマーや!!」

カナエはガントレットを腕に装着している。

巨大岩が三人に向かって突進してきた!

「よーし!!もう逃げまわるのはやめや!」

美留を先頭に梨奈、カナエが一直線に並び巨大岩を迎え撃つ。

「とりゃーっ!!」

美留の攻撃!巨大岩を一刀のもとに叩き切った!

その破片を梨奈がハンマーで砕く!カナエがガントレットをつけたコブシで

昇竜パンチだ!!巨大岩は砕け散った!

それを見たファイヤーボール達が3人の周りをぐるぐると回転しながら距離を詰める。

「うちが囮になる!」

美留はファイヤーボールをひきつけながらパネルを操作した。

ファイヤーボールのデータが見つかった。

「なになに、HPは100……、で、弱点は!?」

距離をとってついてくる二人にデータを転送する。

「下から突き上げるんや!!」

そして激しく石板ボードの後部を踏み込むと急速に角度を上昇にセットする。

大きな円を描いて星々の間を180度回転した。

ファイヤーボール達がそれに続いて回転しようとする時、その死角となった側面から突進してきた梨奈がハンマーをファイヤーボールの腹にぶち込んだ!苦悶の表情を浮かべるように赤いファイヤーボールが揺らめきながら砕け散った!

「おりゃーっ!!パンチラいただきやでーっ!」

美留の今は足の下になっている上方から回り込んだカナエがそれに気付いて反転しようとするグリーンファイヤーボールの下方にそのまま潜り込んだ。カナエはガントレットを足に装着している。

「遅いんじゃワレえー!!」

カナエは高校生時代ローカルアイドルグループに所属しながら学校では男子に混じってサッカー部で活躍していた。現在でもサッカーマガジンに連載を持っているほどのサッカー通だ。ボードから宙に飛び上がりながら蹴撃一閃!!

「昇竜オーバーヘッドキーック!!」

赤と緑のファイヤーボールが破壊されるのを見た青いファイヤーボール達は動揺したかのように動きが止まるとそのまま逃げ出した。

「待てええええっ!!」

美留、梨奈、カナエは追いかけると片っ端から木っ端微塵に打ち砕いた!

見守っていたポッドが退却を開始した。

「逃がすか!!」

ポッドが逃げ込んだ惑星の基地。その攻撃ハッチが開くと巨大なマシンが現れた。

円盤型の巨大な胴体から伸びる2本の脚、その先には鋭い爪のようなミサイルがある。

胴体部分には強力な火力を備えた砲門が搭載されている。

濃紺に包まれた機体の頭部には赤い目のようなモニターが不気味に輝いている。

それを護衛するように隕石型突撃機、そして人型ロボット兵器達が現れた。

「うっわー!ボスキャラ出てきよった!」

パネルに映る索敵フィールドを眺めながら梨奈が叫んだ。

「しかも子分従えてるところがなんだかんだでゲームらしいな」

「ザクザク来よるで」

隕石型突撃機とロボット兵器達が向かってくる。

「パニクったら負けやで。よーし円陣や!」

3人は円陣を作って気合を入れた。

「落ち着いて!丁重に!的確に!せーの!」

「ぶち壊せーっ!おーっ!!」


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