3。神聖宣言
司会者がみゆに声をかける。
「どうですか!今のお気持ち!?」
みゆはキラキラと輝く目でカメラを見つめた。もちろんカイトに向けられたものだ。
「うれし――っっす!でもこんな私がこんな体育会系のチームに入ってついていけるか心配です」
メンバーたちが笑顔で一斉に手を振って否定する。
「選んでもらった以上、全力、命がけで取り組みます!テレビの前でみている人……たちをきっと幸せにしてみせます!私で良かったと言わせてみせます!」
再び大歓声があがった。
「最後にひとことお願いします!」
みゆはカメラをじっと見つめながら言った。
「考えるな感じろ!」
カイトがみゆを抱きしめながらいつも囁く言葉である。
「いやあ、やっぱりみゆのエプロン姿はいいな」
みゆが小さく頷く。
「どうした?」
みゆは涙ぐみながらカイトに抱きついてきた。
「ファンがキモいの。おじさんばかりで童貞とかニートばっかり!」
「でも俺がいつも浄化してやってるじゃないか」
「それと……。またさーやさんに怒られた。ダンスできてないって」
「あの体育会系バカ!みゆの人気に嫉妬してるんだよ」
みゆは首を振った。
「私、人気ない、全然人気がアップしないの」
「なんだって!?こんなに可愛いのに……。そりゃ困ったな」
(これでは金づるにできない……)
「それに、アンチがひどいの」
「なんだって!?」
俺の金づるに何をする!?そう思ってカイトはディープな掲示板を開いた。
「ここか。うえっ、気持ちわりい!ヲタクだらけだ!!」
アイドルをディープに語り合う掲示板だった。マニア達が好き勝手にアイドルを罵倒しあっている。カイト程度では及びもつかない最もディープな『ヲタク』と呼ばれるアイドルマニアたちだ。
「なになに、柊みゆはビッチだと!?」
カイトは掲示板を眺め回した。
「枕営業で外仕事を取っている、だと。そんなことさせっかよ。ふむふむ、なるほど。こいつらは処女が大好きなのか。気持ち悪い奴らだ。お前のスマホもってこい。こう書くといい。いいか、いいか、よく聞けよ」
カイトが思いついたセリフを言ってみせた。
「えっ、でも、私……」
「バレなきゃいいんだよ。楽しめればいい。それがエンタテイメントだ」
みゆは言われるまま自分のファン向けSNSにカイトが作ったセリフを書いた。
「嘘で塗り固めた人生なんてまっぴら!私は私らしく本音と真実で生きたいだけ!匿名でコソコソ言うしかできないお前らは一歩も踏み出せないままそこで朽ち果てるがいい!私が今から私の真実を言ってやる。いいかよく聞けよ!経験はありません。私は処女です!」
掲示板には一斉にスレッドが立ち並んだ。
「【大朗報!!】柊みゆ処女宣言!!」「みゆをアンチから守れ!!」
「俺には処女とわかっていた!」「神聖処女みゆたんに全てを捧げる」