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29,囚われたみゆ!

冥界のような暗い通路。銀狐はみゆを枝分かれした通路の奥、その一室に連行し、押し込んだ。

「お待たせ。楽勝だよ」

待っていた火竜がスマートフォンを操作しながら言った。

「さすがだな。時間通りだ」

「いいにおい~」

銀狐がみゆを抱きすくめようとする。

「いやあっ!」

「待て、仕事が終わってからだ」

「そっちの仕事は依頼外だろ?」

「いや、むしろこっちがメインだ」

「チェッ」

「舌噛んじゃいけねえからな」

火竜が布をたたむとみゆの口を縛った。そしてロープで腕を後ろ手に縛った。

「あまり動かねえほうがいい。食い込むと跡が残る」

足を縛ると床に転がした。銀狐が荒い息を吐きながら、横たわるみゆの全身にねっとりとした視線を何度も行き来させた。

「こうして間近で見ると、これもう本物の天使にしか見えねえな!」

みゆの身体に手を伸ばそうとするのを火竜が払う。

「匂い嗅ぐくらいはいいだろ~?」

そう言うと銀狐はみゆの身体に鼻先を近づけて存分に吸い込んだ。

「はぁ~、生娘っていいよな~」

「そう思うか?」

火竜が冷たい目でみゆを見下ろしている。

「えっ、ま、まさか……?」

「さあな。あとでじっくり確かめればいい」

「そんな言い方されると余計盛り上がっちゃうな。よーし、後でたっぷりかわいがってやるからね。時間はたっぷりあるんだから」

男たちは部屋を出ていった。外から器具をとりつけてドアをロックしたようだ。


ホールではコンサートが何事もなかったかのように続行中だ。サウンドが微かにみゆが囚われた場所にも届く。楽曲が終わり歓声が響く。

「私行かなきゃ。美留センパイとの絡みもあるのに……」

だけど……。今のみゆは手足を縛られ、声も出せずイモムシのように埃だらけの床を藻掻くことしか出来ない。みゆは悲しさと悔しさに身体を震わせた。大粒の涙が溢れ、その白く滑らかな頬に伝った。

「助けて、カイト……」

涙の重みだろうか?口に食い込んでいた布が緩んだ。

みゆがそれから何度か頭を激しく振ると布がするりと解け落ちた。

「カイト――っ!!」


いったい誰が?まさかみゆを狙って……!?通路にはほんの最近出来たかのような傷がある。

台車で走った跡がかすかに残っていた。美留はそれにそって走った。

「みゆ―っ!!」

真新しく深い傷が通路に刻まれていた。

(急停車した跡?)

壁にはいくつかの扉がある。手近なものを開いた。扉の向こうは冥界のような闇だ。別の通路が伸びて、枝分かれしている。何かが落ちている。スマートフォンだ。パネルが割れており、バッテリー切れで電源は入らない。暗闇の向こうから微かに声らしきものが聞こえた。

「みゆ?みゆなん?」

イヤモニの感度を上げると集音効果が高まる。

「カ、イ、ト?……って?」

美留はイヤモニの感度を最大にあげた。

「みゆ―っ!どこにいるの―っ!みゆ――っ!」

美留が闇の中に足を踏み入れようとした時だ。

「美留ーっ!」

仲間たちの声がする。戻らない美留を呼びに来た仲間たちが通路に気付いて追いついてきたのだ。

「こんなトコに道があったやなんて!」

「ミルルー、これ」

メンバーの1人が拾ったものを美留に渡す。リップスティックだ。みゆが転倒した時に落としたものだ。

「そのスマホも?」

美留は頷いた。スティックにも同じミニステッカーが貼ってある。

みゆのお気に入りキャラクター『みかんマン』だ。

「みゆはきっと、誰ぞに、さらわれよったんや!」

「なんやてえ!?」

「まじかい!?シャレならんで!」

「やけど美留、出番が……!!」

もう時間がない。美留は唇を噛むと絞り出すように言った。

「しやけど、あいつほんま……。『みかんマン』好っきゃな!!」

仲間たちが美留の手を引く。美留は暗闇に叫んだ。

「みゆのボケ――っ!ぜったい助けたるからな――!!」

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