21。トキオ・ローディッド
開演10分前。円陣の真ん中でサーヤが声を上げる。
「行くどおー!客全員シバキ殺すぞおーっ!!」
全員が声を上げる。
「シバキ殺す!シバキ殺す!シバキ殺す!」
「ジュリアさん、お願いします」
サーヤに代わってジュリアが円陣の真ん中に立つ。
「私たちは、可愛い!世界一、可愛いッ!」
「オーッ!!可愛い!可愛い!可愛いっ!!」
ミルルーが吠える。
「てっぺん獲ったるでえええっ!!『本店』はうちらじゃああああ!!」」
「ウオオオオオッ!!」
メンバーたちが激しく足を踏み鳴らした。
ミルルーの「挑発」を受けてジュリアとマコの表情も引き締まる。
少女たちは闘志を全身から発散させながら幕が上がるのをジリジリと待ち構える。
SEが消えて明かりが落ちる。ホイッスルがけたたましく鳴らされる。
観客が大歓声をあげた。既に総立ちだ。
開演アナウンスが会場に響く。
「うほほほーい!」
(歓声「うほほーい!!」)
「本日は『国民的アイドルグループ・チームなにわっ子単独公演~時は来た!それだけだ!ごちゃごちゃいわんと誰が強いか決めたらええんや!』……に、ご来場くださいまして、誠にありがとうでーす!!」
(歓声&笑い)
「開演に先立ちまして幾つかの注意事項を申し上げます。演出の都合上非常灯が消えることがございますが、もし万が一の事故・災害の際にはスタッフの指示にしたがって落ち着いて避難されるようお願いします。将棋倒しはだめよー!」
(笑い・歓声「はーい!!」)
「また、公演中の一切の録音、カメラビデオによる撮影は固くお断りさせていただきます。発見次第退場していただく……というか、こわーいスタッフにつまみ出されまーす!!」
(笑い・歓声)
「皆さーん、思いッきり声を出して応援してくださーい!とは言っても、アイドル界やメンバーをバカにしたような野次は厳にお慎みくださいますようお願い申し上げます。メンバーのテンションが下がって塩対応になってしまいまーす!!」
(笑い・歓声)
「みなさーん!盛り上がる準備はできてますかーっ!!」
(歓声「オーッ!!」)
「できてますかーっ!?」
(オオーッ!!)
「声出していけますかああああっ!!」
(おお――ッ!!)
「もっと行けんだろ首都トキオーッ!!大阪ミナミはナンサンロードから暴れにきてやったぞおおおおい!!うちらが大阪の、な・に・わ・っ・子じゃ――い!!」
(オオオオオオッ!!「なにわっ子!なにわっ子!なにわっ子!)
「それでは!なにわっ子のバッチバチの闘い!たっぷりと見ていってくださーい!!影アナは、柊みゆでしたーっ!!ありがたやーっ!!」
爆竹のSEが鳴り響き、スモークが吹き上がる。レーザー光線が会場内を飛び交う中、次々にメンバーが登場する。「なにわっ子」絶対センター・山本サーヤが眩く輝く羽衣をまとい、ゴンドラに乗って天空から登場すると序盤から既に会場は爆発しそうなテンションだ。
「トキオ・ローディッド!!」
民謡「さくらさくら」のサンプリングから始まり、一気にハードに展開する90年代の「LAメタル・シーン」を思わせる人気曲だ。
やがてサーヤはステージに設置されたメタリックな高台に降り立つとスモークを割って階段を降りてきた。まさに天女の降臨である。その後ろには白滝美留と柊みゆを従えている。
観客たちの中から声が漏れた。
「みゆが序列3位だ!!」




