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11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~  作者: 琴乃葉 ことは
第二章『それは、確かな歴史』
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第三十話「裏側」

 遠ざかっていく五つの人影を見送りながら、俺は一度大きく伸びをする。


「さーて、やりますか!」


 気合も十分。身体の調子も問題ない。分身体である俺がどこまでやれるか分からないが、やれるとこまでやってみよう。あいつらの邪魔をさせるわけにはいかないからな。


 まあ、強敵がいるわけでもないし、魔物程度どうとでもなるだろう。

 こっちのことはこっちでなんとかすると言ってしまったし。


「っと、そういえばどうやって他の奴らに伝えよう」


 この《分身》というスキルは、分身体を出す以外の効果は全く無いのだ。だから、よくある遠距離で意思疎通できるなんて事もない。

 俺たちは俺たちで、一人々々が独立した存在なのだ。


 まあ、普通に考えて情報共有まで出来るのは強すぎる。《分身》というスキルにそんな所まで求めても、「自分担当の者じゃないんで」と即切りされる事間違い無しだ。


「困ったな。走り回って、見つけたやつから声かけてくぐらいしか思いつかないんだが」


「それは大丈夫......」


 突然後ろから声を掛けられ、ちょっとびっくりする。肩が浮いたが、それを悟られないように振り向いた。


「なんだイブか。大丈夫ってのは?」


「私が別の分身体に《念話》で伝えといた...... ユウキの分身体にも伝えてくれるはず......」


「《念話》?そんなもんがあるのか」


 そりゃ、無いなら他のスキルで代用すれば良い話か。


「同じ《念話》スキルを持つ者同士で話せる......」


「なるほど。 俺たち分身体のスキルは本体から受け継がれる。だから、当然全員が持ってる事になるのか」


 なんだそのシナジー。ずるくね?

 念話なんて珍しいスキル、持ってるやつは、かなり少ないだろう。一緒に使える相手がおらず腐ってしまうのが普通だ。


 だが単体では微妙なものでも、今回のように他のスキルと組み合わせて有効活用することも出来る。要は発想の問題か。


「俺も欲しいな。あとで本体に取るよう言っておくか」



 よくよく考えれば、俺の亜空間から短剣を飛ばすというのも、同じくスキル同士のシナジーによるものだ。他にも探してみれば、スキルの組み合わせ次第で、何か出来るかもしれない。

 色々と夢が広がるな。俺自身も結構スキルが増えてきたし、新しく何か試してみるか。


 しばらくスキルについて適当な雑談に花を咲かせていると、流石に段々と魔物が集まって来た。

 先程リリィが吹き飛ばした魔物達も戻って来てしまったらしい。数はさっきよりも多いな。


「とりあえず手分けして始末するか」


「ん......」


 イブは軽い返事をして背を向ける。

 後ろは任せたってやつだな!ちょっとテンション上がる。


 遠吠えや単純な奇声を発っする魔物に向け、俺は構えた。




(スキル《操雷》《雷電耐性》を発動しました)


「取り敢えずメジャーに雷人間といってみようか!」


 本来自身の周囲で雷を操るのが《操雷》の特徴だが、敢えて無視して自分の身体へ流し込む。

 ピリピリする感覚と共に、火花が飛び散り音を立てるが、雷電耐性のおかげで身体がダメージを受けることはない。


 飛びかかってきた魔物の攻撃を躱し、横っ腹へ手を添える。バチンッと音をたて、魔物が仰け反り感電すた。

 触れただけでこれだ。成功といっていいかもしれない。


(称号 《雷の化身》を獲得しました)


 おー、称号か。珍しい、久々に取れたな。


(称号 《雷の化身》を発動しました)


 流石称号だ。雷の出力が今までと比にならないくらい出力が増し、身体からいくらか放電してしまっている。

 これは相手に触れなくとも、近づいただけで勝手に雷が敵へ襲いかかるだろう。

 味方に当てないよう気をつけないとな。




 イブと一緒に魔物と戦うこと十分ちょっと。魔物の波が一斉に引き、俺たちの周りには魔物の死体が転がるだけとなった。


「終わった......?」


「みたいだな」


 おそらく本体達に掛かっていたリリィーの魔法が解けたのだろう。だから正気を取り戻した魔物達が、俺達に勝てないと悟って逃げて行ったと。


 警戒を解いてイブの方を見ると、何故か背中に黒い翼を生やしていた。ここに来るとき移動に使っていたのは白かったので、それとは別だろう。

 よく見ると目が紅くなり、口の中から鋭い八重歯が覗いていた。黒い翼というのも蝙蝠に近い気がする。


「どうしたんだ?それ」


「称号 《吸血鬼の盟友》...... これ一つで凄く力でるから使ってみた......」


 吸血鬼化か。ほんとに何でもありだな。

 相手の血を吸ったら何かあるんだろうか?吸血鬼化が身体能力向上だけなわけ無いだろう。しかし、既に相当な存在感を放っている。

 流石は称号。俺も早く集めていきたいところだ。




「けど、イブはやっぱり神って感じがしないな」


「どうして......」


「いやだって、どこの世界の神に吸血鬼化する奴がいるんだよ」


 イブの姿を見ながら俺は苦笑まじりに言う。


 俺はこの時冗談半分で言っていた。あまりに自分の描く神様とかけ離れていて、思わずいつもの軽いツッコミのつもりで口走っていた。

 しかし、イブにとっては冗談では済まない事だったらしい。




 イブの姿が霞んだと思った次の瞬間、首を捕まれ、背中を大木に打ち付けられる。

 予想外の出来事に受け身も取れず、一瞬息が止まった。



「なんで.....」


 疑問系ではなく、その声には失望。


 イブの細い指がギリギリと俺の首を締め付ける。


「ぐっ、イブ」


「私はこのままでいい...... このままがいい...... ユウキはそれじゃダメなの......?」


 返事を返そうとするが首を抑えつけられて声が出ない。見た目に反してとてつもないパワーだ。きっとスキルを重ねがけして使っている。


「ユウキの言うとおり、私はきっと神なんかじゃない...... だって、転生者の存在や身体の造り替えのことを()()()()のに私にはそれが出来ない......!他にも記憶が無かったりおかしい事ばかりって分かってる......!」


 イブの告白に俺は目を見開いた。

 泣いている。いつも無表情にポーカーフェイス貫いているイブが、眉をよせ苦しそうに。


 まさか俺の苦笑が、イブが神じゃないかもしれない事への失望だと思ったのか?


「私が神じゃないと知ったら、みんなは私を捨てるかもしれない......」


「あいつらはお前が神だから一緒いるわけじゃない。きっとそんな事しない」


 喉絞められたままだが、カスカスの状態で何とか声を出す。


「私だってわかってる......!でも、信じられない......!だって、怖いんだもん......!!」


 想定外だった。イブのことなら、ある程度分かっているつもりでいた。理解者であれると思っていた。




 まさか、イブの心がここまで追い詰められていたとは。



「イッ......ブ......」



 本体へ伝えないと。


「あなたを本体の元へ帰すわけにはいかない......」


 違う! 伝えなければ、イブを助けろと!


 この世界で自分は救う側になろうと決めた。見て見ぬ振りをする奴らを側で見てきたからこそ、手を差しのべられる人間でありたいと思った!

 それなのに!俺はこんな幼い少女一人救えないのか!!


 必死にのばす左手がイブの腰に届く。


 それをイブは不思議そうに眺めていた。何故腰に?とハテナマークを飛ばしていた。こんな状況ながら、ちょっと可愛いなんて思ってしまう。

 無警戒に見えるが、何かされても反応出来ると思っているのだろう。


 もちろん何もしないわけじゃない。

 グイッと腰を引っ張り、イブを抱き寄せる。首を掴んでいた拘束が外され、自分の前には、今までないくらい近くにイブの顔があった。


「ユウキ......?」


「悪りぃーな。今の俺じゃお前を救えないらしい」


「なにを――」


「だから、もうちょっとだけ待ってくれ」


 そう言って静かにイブの唇を奪う。


 目の前に映るイブの顔が、普段からは想像がつかないほど、表情に変化を見せた。明らかな同様が伝わってくる。どうしたらいいか分からなくなっているようだ。

 何かしなければと動かす両手は、何も出来ないままパタパタと空を切る。



「俺がここで生き残るのはダメなんだろ? それなら、一人じゃ寂しいし、一緒に来てくれないか?」


 それは情けないお願いだった。かっこつかないし、情け無いったらありゃしない。


 果たしてこれは救いなのだろうか? だが、ここでイブ一人を置いていくよりは良いと思えた。

 イブの本体は良くても、今度はこの子が救われないから。



 イブが恥ずかしそうに視線を彷徨わせている。

 なんだこれ恥ずい。今しがた自分がした事を思い返していると、頰が熱くなるのが分かる。


 別にあんなことしなくても良かったんだが、自分の命が最後だと思ったら、つい動いてしまっていた。

 やっぱ俺イブのこと好きなんだな。まああいつは、まだそんな気持ちはないと突っぱねるだろうが。


「ほら早くしようぜ。俺もうちょっとこの空気だめだ」


「えっと...... じゃあ、その...... 最後にもう一回......」


 イブがもじもじと恥ずかしそうにしながら、俺へ合わせるために背伸びをする


 仕方ねーな。そんな事をされては断れるわけ無い。


 今度はカツッと歯が当たった。


 けれどイブはそんな事を無視で、今度は飛び込み抱きついてくる。

 少々驚いたが、倒れずにはすんだ。


 頭上に嫌な気配を感じ顔を上げると、今までは無かった筈の黒雲があった。これはサイクロプス事件の時の。

 火力ありすぎないか?


「大丈夫...... あれは選んだ対象だけ灰にするから」


「なら大丈夫だな」


 何が大丈夫何だろうか。少なくとも森が消える事は無さそうだ。


「それから音もないから安心......」


「なら安心だな」


 だから何が安心なんだろうか。これで本体達に気づかれることは無いな。完璧かよ。


《再生》を切らなくてはと思っていたが、あの火力なら大丈夫だろう。痛みも感じず、きっと一瞬だ。何だそれ、もう神だろ。

 死に際だからだろうか。くだらない思考がどんどん流れていく。


 イブはどういった存在何だろうな。まあ、俺がこれ以上考えても仕方ないか。




 イブの事を今まで以上に強く抱きしめる。すると、また一段と強く抱きしめ返された。


 あとは頼んだぞ!本体!


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