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11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~  作者: 琴乃葉 ことは
第二章『それは、確かな歴史』
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第二十五話「才能無し」

 魔法とは己のイメージを具現化したものである。この世界に循環している「火、水、土、風、」のエレメントを、イメージ力と魔力によって操ることで、超常的現象を引き起こす。

 魔法の難易度によって「初級、中級、上級、超級」と分けられるが、同じ魔法を使っても威力や同時に扱える数は個人差がある。特に複数人で無ければ扱えない超級など、そのばらつきは大きい。



 火魔法


[初級編]


〈ファイアライト〉

 周りを照らす火を出現させる魔法。熱さはなく光としての役割しかない。


 詠唱:世界を焦がす燈火よ、光となり全てを照らせ



〈ファイアランス〉

 槍状の火を出現させ、投擲する魔法。


 詠唱:世界を焦がす燈火よ、槍となり全てを貫け

 





 そこまで読んだ所で、俺は読んでいた書物から一旦顔を上げた。



「ん? あれ、リリィーのやつ魔法はなんでもできるって言ってなかったか?」


「言ってた......。たぶん一般的に知られてないから、扱いやすい属性魔法しか書いてないんだと思う......」


「ああ、なるほど」


 確かにそんなことも言っていた気がする。



 今俺が読んでいたのは今日買ってきた市販の魔法書だ。

 基本的な魔法は、全て載っているらしい。特殊なものや超級の魔法は載っていないが、初心者のために基礎知識や練習方法がメインに書かれている。



 今日は帝国の観光地を歩き回ったり、英雄とばったり会うようなアクシデントもあったりと疲れていたのだが、眠気より魔法を試したい気持ちの方が勝った。

 そんなわけで晩飯を食べたあとは、こうして部屋閉じこもって読んでいたのである。


「よし、さっそくやってみるか」


 試しに使ってみるのは、〈ファイアライト〉でいいだろう。これなら誰かを傷つけることも、部屋のものに燃え移る心配もない。魔法が失敗しても爆発なんて事は無いらしいのでそこら辺は安心だな。


 イメージするのは白く発光する球体だ。取り敢えず地球にあった蛍光灯のようなものでいいか。

 手のひらを上に向け、右手を差し出してイメージを明確化していく。



「世界を焦がす燈火よ、光となり全てを照らせ〈ファイアライト〉」




 ............ダメか。


 しばらく待ってみても、手のひらの上には何か変化が起きる様子はない。辺りを見回すもそれらしき物は出来ていないし、やはり失敗か。


 以前スキルと魔法の違いについて、シオンに教えてもらった時から薄々分かっていたが、俺は魔法の才能が無いらしい。

 魔力の感知も触れた状態で何となくわかる程度だ。自分に流れている魔力もろくに感じ取れないし、ちょっとこれは厳しいかもしれない。


「なあイブ、魔法のコツって何か無いのか?」


「わからない...... 私は魔法使えないし......」


「え? そうなのか? 初耳なんだけど」

 

 出会ってからⅠヶ月。まさか今更知ることになるとは思わなかった。しかも結構重要なことだし。

 じゃあ、なんだ? 今まで使ってたものは全部スキルなのか。結構派手なものも使っていたし、ああいうのは全て魔法なんだと思っていた。


 結局俺は、今もスキルと魔法の見分けが付かない。それなりに魔力を感知する練習はしたんだが、なかなか上手くいかなかった。シオンとの特訓も、今では殆ど接近戦の練習になり、最近ではめっきり練習もしていない。


 どこかで腰を据えて感知系のスキルを取らなければならないかもしれないな。こらそこ、スキル頼りとか言わない。


 それにしても意外だな。イブは万能というイメージがあったから、何かが出来ないなんて想像した事すら無かった。



「スキルでも魔法みたいなことはできる......」


 そう言って、イブが先程の俺のように手をだすと手のひらに炎の球体が出来上がる。

 すると何を思ったのかこちらに向かって、手のひらに出来たそれを放り投げてきた。まるでボールでもパスするかのように。


 いや、下投げでも炎だし!落ちたら火事だし!


 慌てて手を伸ばすが触るわけにはいかないので、《万有引力》によって空中にとどめる。


「お、おい! イブ危ないだろ!」


(スキル《操炎》を獲得しました)


「ん?」


「ないすきゃっち...... じゃあ、どんどんいこう......」


 水、風、土、とイブの手に次々と属性ののった球体が生成され行く。さらには魔法書は載っていなかったが雷と氷なんてものまで出現していた。


「おい、ちょっ、まっ」


(スキル《操水》《操風》《操土》《操雷》《操氷》を獲得しました)






「私が教えられるのはこのくらい...... 後は自分で練習してみて...... 結構操作難しいから......」


「ありがとう。ただなイブ、やるときはやるって言おうな?」


 いきなり火の玉を放ってきたときはマジで焦った。よくよく考えればこの城は、ほとんどよくわからない石でできているので燃え広がる心配はないが、それでも部屋には机やベッドといった家具があるのだ。燃えてしまったらリリィーにどやされること間違いない。



 しかし、イブが分からないとなるとリリィーを頼るしかないか。魔法に関しては絶対の自信があるようだし、教えを乞うには適任なんだが...... また天狗になりそうだな。


「イブ、俺はちょっとリリィーのとこに行ってくるけどどうする?」


「眠い...... 待ってる......」


 余程眠かったのか、それだけ言うとイブはベッドにうつ伏せになり寝てしまった。

 今日はいろいろ歩き回ったし疲れていたのだろう。かくいう俺も結構眠気が来てる。雑にスキルを教えてきたのもの眠かったのが原因か。


 まあ、それでも魔法は試したいんだけどな。


 イブを起こさないようにそっと部屋を出る。流石にこの数秒で寝ることはないと思うが一応だ。


 さてと、この時間リリィーはどこにいるだろうか。

 今の時間は最悪風呂に入っている可能性もある。台所の家事していたはずなのでまだ食堂にいれば良いのだが、あいつは風呂が長いからな。そっちの方が確立が高いかもしれない。転生初日の苦い事件を思い出す。

 絶対俺悪くねーわ。




 幸いなことにリリィーはまだ食堂にいた。シオンの姿は見当たらず、既に部屋に戻ったようだ。


「あら、珍しいわね。お茶でいい?」


「ああ、頼む。ちょっと相談したい事があってな」


 いつもは部屋に戻ったらあまり出てくることがないので少々驚かれたが、話相手が来たと思ったのだろう。機嫌良さそうに茶葉を準備し始めた。


「ちょうど良かったわ。あんたに飲んでもらいたい茶葉があったのよ。本当は夕食の時に出すつもりだったのに忘れちゃったから」


「いいな。新作か?」


「ええ、少し待ってなさい。話は座ってから聞くわ」



 そうして出てきたお茶はいつもとは違い黄色味がかったものだった。紅茶? レモンティーか?

 匂いは普通だ。一口、口に含んでみる。


 ブハッ


「苦ッ、てか酸っぱ!」


(スキル《味覚耐性》を獲得しました)

(スキル《味覚耐性》を発動しました)


「フフフッ、良い反応するわね。はい、口直し。こっちはいつものお茶だから大丈夫よ」


 ご丁寧にも用意されていた二杯目のお茶を受け取り口の中を洗い流す。

 スキルのおかげで味がしないのは助かるが、これではちゃんと洗い流せたのか分からない。覚悟を決めてスキルを切ってみる。良かった、いつものお茶の味だ。


「お前、これ......」


「失敗作よ」


「人に失敗作を飲ませんじゃねー!」


 なんだ、酸っぱいって。飲み物からしちゃいけない味がしたぞ。


「いいじゃない、減るもんじゃないし。びっくりするほどの不味さの物が出来たから、誰かと共有したかったのよ」


「よし、今度シオンとイブにも飲ませよう」


「良いわね、それ」


 良くはない。全く良くはないがこの場にそれを指摘できる人間いない。



 閑話休題



「ふーん。魔法を使える気がしない、ねー」


「あー、初級の〈ファイアライト〉でさえ何の変化も感じられなかった」


 せめて魔力が抜ける感覚でもあれば希望があったんだがな。


「まあ、十中八九あんたが転生者である事が原因でしょうね」


「なんだよ、転生者にそんな縛りがあるってのか?」


「そういう事じゃないわよ。あんたの世界では魔法が無かったんでしょ? そんな人がいきなり魔力を扱える訳ないわ」


 それはたしかに。


「別に気にする必要ないわ。この世界の人だって魔法が使えない人は結構いるんだから。まあ、初級の〈ファイアライト〉すら出来ないのは珍しいかもしれないけれど」


「あれか。やっぱり小さい頃の経験ってのが大事なのか?」


「そうね。魔力の扱いは成長とともに上達していくものだし、子供の頃から魔法に触れていくことはとても大切なことよ」


 俺は17と若いがもう子どもではない。今から覚えていくというのは相当大変だろう。仕方ないとはいえ、ちょっと残念だな。


「別にそこまで魔法にこだわらなくていいんじゃない? あんた、スキルは腐るほどあるじゃない」


 そんな夢のないことを言うリリィーに俺はチッチッチッと舌打ちを返す。


「分かってないなリリィー。魔法だぞ。空も飛べれば、お菓子の家も作れるんだ」


「今のあんたなら空くらい飛べるでしょうが。あとお菓子の家なんて魔法でも作れないわよ」


「え、そうなのか?」


「魔法で作ったものは当然魔力で出来ているわ。だから味もしなければお腹も膨れないのよ」


 なんだ。やはり夢は夢にしかなり得ないのか。どう頑張っても現実にできないものはあるらしい。無念。



 しばらくの間魔法を使えないことに落ち込み、魔法という夢を壊され、シオンとイブにどうやって激マズお茶を飲ませるか話すこと小一時間。つい話し込んでしまい、そろそろ寝ようかと考えていたところ、外から笛の音が聞こえてきた。


 これはあれだ。インターホンだ。こんな時間にくるなんて初めてのことだがどうしただろう。リリィーと顔を見合わせるが、同じように不思議そうな顔をしている。


「こんな時間に何かしら?」


「とりあえず出てみよう」


 俺とリリィーはそれぞれ転移し外へ向かう。

 するとそこにいたはボルガ―と一人の女性。おそらく30代くらいだ。


「魔王様、夜分遅くにすみません。それに転生者様まで」


「それはいいけど、どうしたのよ」


「どうやら少々まずいことが起きているようで」


 まずいこと? なんだろうか。

 ボルガーが隣の女性に目配せし説明をうながす。どうやら詳しいことは彼女が知っているらしい。


「じっ、実はお隣のエノラちゃんとシルフィアさんがいなくなってるんです」


「なに?」


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