桜餅二つ
「なんでっ!? どうして、これなのよぉ!」
「え? だって、桜餅食べたいって言ったじゃん」
「言ったけど、これじゃないのよ!」
今、私の目の前には桜餅がある。それは、コンビニに行ってくるついでに友達に頼んだもの。
だけど、友達が買ってきたのは私が食べたかった桜餅ではなかった。
「私は関東風の桜餅が食べたかったの!」
そう、目の前にはつぶつぶした桜色の餅米の桜餅。これは主に関西で作られる関西風。
私が食べたかったのは、しっとりとした平たい皮の関東風の桜餅だったのだ。
「同じじゃん」
「全然違うでしょ!」
「なんで、関東風のがいいの?」
「うっ・・・・・・だって、これは葉っぱが取りにくいじゃん」
「はぁ?」
友達が眉間に皺を寄せてわけがわからんという顔をする。
だけど──
「つぶつぶは皮に葉っぱがくっついて取ろうとしたら、切れちゃったりして上手く取れないでしょ」
「そんなこと? 葉っぱも一緒に食べればいいじゃん。これ、食べても平気だよ」
「知ってる! けど、変な味するんだもん」
ぷいっとそっぽを向く。
すると、友達がパックに入った桜餅を一つ取り、差し出してきた。
「ほら、せっかく買ってきたんだから食べなよ。あんこたっぷりだから、葉っぱの味もそこまで気にならないよ」
「うぅ」
頼んで買って来てもらったのは事実なので、しぶしぶ桜餅の半分くらいをかじる。
葉っぱがぷつっと切れて、歯が餅米を通過し、甘いあんこに辿り着く。
ん? あれ?
「あれ? 平気だ。葉っぱ、そこまで不味くない。なんで?」
「ひょっとたら、好みが変わったんじゃない? 味の好みって大人になるつれて変わるらしいから」
「そっかー、美味しい」
「私も食べよ」
「うん。あっ、水筒のお茶あるよ。ほうじ茶」
「ちょっとちょーだい」
「うん」
桜餅に夢中になっている私達の真上で桜が咲いている。
お花見に来たはずなのに・・・・・・。
花より団子──いや、桜餅な二人でした。




