バザール到着
3時間ほどが経過した
「やっと着いたぞ!マウロ」
マウロはかなり下の方にいるが、どうにか2人に離されずについてこれた
「はあ、はあ」
マウロは崖の上に着くと、寝転がって限界の体を休めた
「それにしても結構上から落ちたんだな」
ゼルセットは崖を覗き込んだ
川の流れが下の方に小さく見える
3人はそのまま道なりに進んでいく
途中、馬車が通りそうな気配はない
「正常な判断なら、あの雨の中でこの崖を通ろうとは思わないぜ」
ゼルセットが一人しゃべりながら歩いていると
「それは多分あたしが関係してるかも」
とターニアが言った
「どういうことだ?」
「あたし、お金を持ってなかったのよね その代わり、あるお客からくすねたルビーを持ってたのよ 血塗られたルビーっていういわくつきのね それを運賃の代わりにあげたの」
マウロ、ゼルセットは揃って聞き返した
「血塗られたルビー?」
「そう、そのルビーを持っているものはロクな目に合わないっていう噂 でも、それってとても高価なことでも有名なの 少なくとも1000万ゴールドはくだらないって言う話よ」
「1000万って、とてつもなくすごい額ですね」
マウロが言う
「そうね、だからリーダーは早めに処分しようと思って急いでたんだと思うわ」
ターニアがさらっとそんな事実を言い、
「ちっ、それに巻き込まれた俺たちは災難だったな」
とゼルセットがため息まじりに言った
それからまた野宿をし、次の日にようやく開けた道にたどり着いた
ここの街道をまっすぐ行けば、シーケットにたどり着く
長い道を3人でずっと歩いていく
日が暮れはじめ、また野宿か、とマウロは思った
その時、視界の先にテントの頭のような、とがったものが何本も見えてきた
「あれは……」
「シーケットのテント群だ」
王国を出てからおよそ4日目、ようやくシーケットが間近に見える所までやってこれた
「到着だ」
シーケットに到着した
夜の闇で覆われ、ランタンの日が町を照らしてる
それが幻想的な雰囲気を醸し出していた
中央の巨大な道の脇を、いろいろな形のテントが埋め尽くしている
「これが有名なワールドバザールだ」
ゼルセットが言った
「じゃ、ここで解散だな いろいろと楽しかったぜ またな」
そう言って、去っていった
ターニアも、
「じゃあね、もしよかったら、私の働いてる姿、見に来てね」
と言って人ごみに紛れていった
2人がいなくなるまで、マウロはそこに立っていた
別れの物悲しさに浸っていたが、すぐそんな気持ちは消えた
なぜなら、夜だというのに街には活気があったからだ
「さて、まずは干し肉だな」
と言って、マウロはテントを一軒ずつ見て回った
動物をかたどった木で作られた雑貨を取り扱う店
見たこともない、野菜や果物を取り扱う店
タコヤキ、と呼ばれる謎の球体を売る店、その球体はどうやら食べ物らしい
セイリュウトウ、と書かれた湾曲した剣を置く店
民族衣装のような服や、とんがった靴を置く店
など、ありとあらゆる珍品がそこに所狭しと並んでいる
いろんな客が店の商品を見ては、
「もう少し安く」
とか、
「まとめて買うから安くして」
などと、値段の交渉をしていた
「あれは!」
しばらく歩いていると、干し肉屋を発見した
燻製された肉が、その店にぶら下がっている
「すいません、これいくらですか?」
とマウロは肉を指さして尋ねてみた
そこの店番をしている男が、
「それは1200ゴールドだな」
と言った
「買います」
マウロはその肉を3本購入した
「ところで、この肉はどうやって作るんですか?」
居酒屋の厨房でバイトをしていたマウロは、ついクセでそんなことを聞いた
「お、自分で作ってみたくなったか、いいぜ、教えてやるよ」
と店の男は言い、
「これはヌーベエを仕留めて、その肉を煙でいぶして作ったもんだ ヌーベエの肉を適当な大きさに切って、塩コショウをすり込む、そんで釜に肉を並べて、わらを燃やしてその煙でいぶして出来上がりよ うちにでかい釜があるから、使いたかったら使ってもいいぜ」
店の男は袋に入れた肉を渡した
「親切にありがとう」
礼を言ってマウロは去った
マウロは寝床を探していた
バザールを出た脇に、キャンプのできる広場があった
バザールにもホテルの用途の建物はあったが、そこで金を使いたくなかったマウロはキャンプ地で寝ることにした
バザールで寝袋(3800ゴールド)を購入し、旅人のひしめく中、隙間を発見しそこに寝ることにした
マウロは思い出していた
干し肉を作るのに必要なもの
コショウ、わら、火をつける道具、釜は貸してくれるとのことだった為、あとはヌーベエという謎の肉
明日、マウロはそのヌーベエを狩りに行こう、と思い立った
もし、燻製をうまく作ることができれば、このバザールで商売することができるかもしれない
手持ちの金が18万程度では、すぐになくなってしまうだろう
ここで、何か収入を得る方法が見つかればいいな、とマウロは思ったのであった
深い夢の中にいた
黒いターバンの男がマウロの後ろをついてくる
そして、持っていた剣でマウロを背から貫いた
「うわあああっ」
マウロは飛び起きた
全身に汗をかいている
「夢か……」
安堵したマウロは、もう一度眠りについた
次に起きた時、もう夢の内容は覚えていなかった
ネタバレ
ターニア→ティナ
シーケット→ケットシー
ゼルセット→セッツアー