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キャラバンの護衛

マウロは店員の指さした男に近づき、話しかけた

「すいません」

「……」

男は横目でマウロを品定めするような目で見る

「あの、キャラバンを率いていると聞きまして……」

そう話をすると、

「その通りだ、君の言いたいことは何となく分かる、その腰の剣、要するに我々のキャラバンに護衛としてやとってくれと、そういうことだろう?」

思わぬ話の流れに、逆にその方が自然でいいんじゃないか?と思ったマウロは、

「ええ、その通りです」

と返事をした

「やはりそうか、だが、君は見たところかなり若いな それで護衛が務まるのか?雇うとなれば、こちらもタダというわけにはいかないんだ」

男はそう言って、それなら自分が腕が立つというところを見せろと言わんばかりである

マウロは少し腕組をし、こう答えた

「僕は、一時期ですが、アーシムの弟子でした」

アーシムの名前を出せば間違いない、そう思ったが、

「アーシム、この国では有名なのか?私は出身が違うものでね アーシムという者は知らんのだ」

と答えた

「ダメか……」

と諦めかけた時、同じテーブルを囲んでいた一人の男がそのワードに反応した

「アーシムと言えば、この国の英雄じゃあないですか その弟子と言えば、なかなかすごいことだ」

黒いマントを羽織った、20代後半と思われるその男が言った

「リーダー、もったいつけないで、この人を雇ってみたらどうです?どうせ、護衛を探してたんですから」


リーダーと呼ばれたキャラバンを率いるその男は、実はこの居酒屋に護衛を探すためにやって来たのだそうだ

確かにこの居酒屋には傭兵が多い

「ゼルセット、それなら試してみろ」

リーダーの男はそう言った

マントの男の名はゼルセットというらしい

「分かりました、じゃあ君、手のひらを出して」

とゼルセットに言われ、マウロは手のひらを出した

すると、ゼルセットは筆を取り出し、素早く魔法陣を書きつけた

そして、

「お前は盗賊か?」

とマウロに質問した


突然の問い戸惑ったが、マウロは、

「違います」

と答えた

ゼルセットはもう一度質問をしてきた

「では、お前はキャラバンの護衛を希望しているか?」

「そうです」

「嘘はついてないみたいですね、この魔法陣、実は相手の心拍数を図ることができるのです 私の質問に対して、ほとんど心拍数の変化は見られなかった 若干、後者の質問で変化はありましたが、許容範囲でしょう」

ゼルセットはそこでようやく、自分が旅をしている魔道士だということを明かした

ゼルセットは、検知式、治癒式、と呼ばれる魔法陣を使えるとのことであった

検知式は、相手の心拍数を図り、嘘を見破るのに使うとのことだ

これは、キャラバンに同行する人間に、盗賊が混じっていないか、を知るのに使える

もし盗賊が仲間のふりをして同行した場合、道中で殺され、金品を略奪される恐れがある 

最近ではそういった事件も多いので、キャラバンのリーダーは彼の魔法陣を重宝しているとのことだ

また、治癒式は彼の本職で、対象の相手の病気やケガを治すのに使うらしい

それで、商売をしているとのことだ


「分かった、では次の行き先まで君を雇うことにする」

リーダーはそう答えた

「このキャラバンは私を含めて3人が同乗している、一人はこのゼルセット、そしてもう一人、踊り子のターニアだ 彼女は今は宿屋にいるから、出発する明日にでも紹介する よろしく頼むぞ」

リーダーはそう言った

「ありがとうございます ところで……」

と相手の名を聞こうとしたら、

「分かっている 行き先は大陸一の「ワールドバザール」有する街、シーケットだ そこまでは険しい山道を行くことになる 山賊、盗賊の襲撃もあるだろうから、5万ゴールドでどうだ?」

といきなり金額の話を始めた

「じゅ、十分です」

とマウロは答えた

「はっはっは、話の分かる若者でよかった 私の名はネカイエだ よろしく」

「マウロです」

勝手にいろいろしゃべってくれたので、結果オーライだな、とマウロは思った

ちなみに、ワールドバザールとは巨大なフリーマーケットのことである


翌日の朝、マウロは街の外れにある馬車置場までやって来ていた

天候は雨である

そこに、魔道士のゼルセット、踊り子のターニアがすでにリーダーの馬車に乗っていた

「初めまして、マウロです」

と乗っていた踊り子のターニアに話しかけた

「あんらま、あなたが護衛の方?よろしくお願いね」

若干ぽっちゃり気味のその踊り子は、そう答えた

あんまし好みじゃないな、とマウロは思った


リーダーが馬に乗り、他の3人は馬車の中で揺られていた

馬車は始め街道を行き、やがて山道に入る

そこから、道なりに進んでいくと、山道

険しい崖のある道も通らなければならない


ガタゴト、ガタゴト、と馬車は激しく揺れる

恐らくすでに険しい山道を通っているのだろう、とマウロは思った

雨も激しくなり、視界が悪くなる

「こんな状態で、この山道とはな リーダー、気を付けて道を進んでくれよな」

とゼルセットが言った

山道のすぐ脇は崖である

マウロは、早くこの道を抜けてくれと、心の中で祈っていた


馬車は急カーブに差し掛かった

その時、車輪がぬかるみで摩擦を失い、曲がり切れずそのまま道を外れた

ガアアンという激しい音と振動が馬車を襲った

「キャアアアッ」

という悲鳴が馬車の中で起こる

「ま、まずいっ」

リーダーが手綱を引いて、ブレーキをかけようとしたが遅かった

馬車はその勢いのまま、山道を外れ、崖へと落ちて行った




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