アーシムvsマウロ
アーシムは、城に行き、
「国王に会わせてくれ、重要な話がある」
と城の兵士に言った。
「アーシム様、少しお待ちください」
と言い、城の中へ入っていき、10分ほどして戻って来た。
「是非、国王もお会いしたいとのことです。おあがりください」
と通された。
王宮の国王の部屋にアーシムは通された。
国王が、部屋の中央に立ってアーシムを待っていた。
「久しいな、アーシムよ」
「ええ、お久しぶりです、国王」
座ってくれと促され、2人はテーブルをはさんで向かい合い、椅子に座った。
「単刀直入に申します、この国を一度、解体してください」
アーシムの大胆発言に、王は驚いた。
「唐突に何を申す、なぜだ」
「今この国には、魔道士たちが軍に介入し、力を持ち始めています。もしこのまま野放しにすれば、いずれ手に負えなくなり、世界を巻き込んだ戦争になるかもしれません」
しかし王は、
「それはできぬ、アーシムよ。軍を解体し、国の制度まで解体し、新しい国の形を作るのにどれほどの期間と労力がかかると思う?もしその間に隣国に攻め入られたらどうするのだ?」
と言って、アーシムの発言を否定した。
すると、アーシムは立ち上がって、とんでもないことを口にした。
「なら、俺がこの国を滅ぼす」
アーシムの発言に、王は固まった。
「何を……英雄と言えど、今の発言は見逃せんぞ!」
アーシムは、
「隣の土地を砂漠に変えたイフリートを復活させる。俺にはそれができる」
と言った。
王は戦慄した。
この世界の歴史を紐解くと、はるか昔、世界は守護獣と呼ばれる魔物たちによって支配されていた。
それが、人間と共存するようになり、やがて、人間が守護獣を封印して、天下をわが物としたのであった。
アーシムはその封印を施した一族の末裔であり、家に代々伝わる聖剣を用いることで、封印も解くことができる。
「衛兵、つかまえよ!」
と国王が声を上げた。
扉から衛兵が2人、出てきた。
しかし、衛兵は動けない。
なぜなら、アーシムが睨みをきかせたからだ。
アーシムの強さを知る兵士は、仕掛けることができなかった。
アーシムは一枚の紙を取り出し、それを持っていた剣で切った。
そこには魔法陣が書かれていた。
「これで、イフリートが復活する」
アーシムはそう言い残し、城を出た。
砂漠が割れ、そこからイフリートが這い上がって来た。
全長5メーター、恐ろしい形相をし、王国に向かって走り始めた。
「何か、嫌な予感がする」
マウロは包帯を巻いた体で立ち上がっていた。
街に出ると、そこは大パニックになっていた。
「一体、何が起きている……」
見たこともない獣のような顔をした、2足歩行の化け物がいて、その肩にアーシムが乗っている。
その化け物は、手に火球を作ると、国の司法大臣のいる塔に向かってそれを投げつけた。
司法大臣は、殺し屋がしくじったことを知った。
「風の加護まで使っておびき出したというのに、しくじりおって。あの男は生かしておいたらまずい……守護獣がもし復活したら……」
ふと、窓の外を見た。
メラメラと燃ゆる、まるで世界の終わりかと思われる景色が、窓の外に広がっていた。
ドオオンとおいう音とともに、塔は崩れ落ちた。
アーシムが叫ぶ。
「関係ない人間はすぐここから逃げろ!ここはもうすぐ火の海になるぞ!」
逃げろ!という悲鳴と共に、住民が避難していく。
マウロはその流れに逆らい、走った。
「何がどうなってんだ」
兵士が集まって来た。
「奴を何とかするんだ!」
と兵士が叫んだが、みな戦意を保つのがやっとで、仕掛けようにも仕掛けられない。
イフリートが更に大きな火球を手に作る。
「やれ」
アーシムがそう言ったとき、
「やめろおおおお」
マウロが飛び出してきた。
「ここにはまだ避難できてない住民もいる!それを巻き込むのか」
マウロは、リーシアの両親のことを思い出していた。
アーシムは、
「マウロ、ここから離れろ!」
と言ったが、マウロは聞かない。
「降りてきて、僕と戦え!」
「……いいだろう、お前に免じて、一騎打ちだ」
アーシムが聖剣を抜く。
マウロも剣を抜いた。
しかし、到底勝てる相手ではない。
つけ入るスキも全くない。
それでも、マウロは突っ込んで、全力の剣をぶつけた。
ガアンと剣と剣が衝突する。
全力のマウロ、一方のアーシムは全力を出せずにいた。
(まともに稽古をつけるのは、これが初めてか。いや、これは真剣勝負か)
アーシムは感慨深げに、マウロの剣を受けていた。
アーシムが思っていた以上に、マウロの剣にはキレがある。
アーシムも、両手で持って、足を踏ん張らなければ受けきることができないほどだった。
「うおおおおおお!」
マウロは自分の持てるすべての力をもって、剣を振り続けた。
「くっ」
アーシムが剣をはじき返そうとした時、
キイイイイン……という音が辺りに響き渡った。
アーシムの聖剣が折れたのだった。
イフリートは、アーシムの縛りから解放され、どこかへ去っていった。
「……完敗だな」
アーシムは言った。




