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王国内へ

リーシアとマウロが建物から出てきた。

それを見ていた盗賊が、マウロに仕掛けようと身構えたとき、

「待て!ウチの負けだ、これよりこいつら一行に手を出すことを禁ずる!」

と声を張り上げた。

盗賊たちはお互い顔を見合わせていたが、

「へい!」

と返事をした。


「ふー、何とかなったな」

とマウロが水を手に入れて、ボートに戻ったとき、異変に気付いた。

老人がこちらに駆け寄ってくる。

「まずいことになった」

マウロが急いでボートに戻ってくると、ゼルセットが布で顔を覆って、寝込んでいた。

ゼルセットからは汗が止まらず、老人が言うには、どうやら熱中症にかかってしまったらしい。

「ぜルセさん!大丈夫ですか?」

マウロが心配し声をかけるも、反応は薄い。

「とにかく、オアシスの建物に運びましょう、熱中症にかかったところがここで良かった」

そういって、老人と2人でゼルセットを担いで、オアシスの建物まで運び込んだ。


「うう……」

とゼルセットはうめき声を漏らす。

オアシスの水で湿らせた布を額にのせ、マウロが看病をする。

「すまない、俺のせいで……」

苦しそうに言う。

「何の問題もないですよ、時間なんてまだまだあるし、とりあえずここで2、3日休んで、それから出発しましょう」

とマウロが答える。

老人は、何か言いたそうにしていたが、結局口を開くことはなかった。

その様子を見ていたリーシアが後ろから声をかけてきた。


「一度熱中症になったらここから出るのは難しいな、熱中症ってのは再発する。仮にここで調子が戻ったとしても、王国まで行くのならあと2日の道程。確実にもたない」

その答えに、老人もうなずく。

「その通りじゃ、体が熱に耐性を持つまでは、1か月以上かかるじゃろう」

「……」

その事実を突きつけられ、マウロは黙ってしまった、

「マウロ、俺を置いていけ」

ゼルセットが決意を固めた。


「そんな、置いて行けなんて、そもそもあなたがいなければ国に入ることだってできないんですよ」

マウロが言ったが、

「何とかなる、俺の回復を待ってこんなところにいたらダメだ」

ゼルセットが力を振り絞って、マウロを説得する。

「……でも」

「王国に入りたいのか?」

リーシアがそう言い、マウロが振り向く。

リーシアが手の甲をマウロに見せた。

「ウチも王国の出身者だ。そもそもこの盗賊団、かつては国のお抱えだったって話だけど。まあ、相当昔の話らしいけどさ」

砂の盗賊団、その実態は、かつて風の加護を抜けてでもやってこようとする外的を排除するために作られた兵団のなれの果てだったのだ。

「ウチがあんたに協力してやるよ、命を見逃してもらった礼だ」

そう言って、旅に同行することになった。


「ゼルセさん、すみません、行ってきます」

そう言い残し、マウロはオアシスを抜けた。

ボートは風を切り、進んでいく。

もう王国は目前だった。


ダラクダーの小屋に到着した。

「まさか、1か月の道のりを1週間で走破しちまうとは、驚いた」

と老人は言い、

「わしはここまでじゃ、あとはこの道をまっすぐ進めば、もう王国じゃ」

と、そのまま小屋の方に向かっていった。

「ありがとう!」

とマウロが声をかけると、老人は振り向かず、「じゃあの」と右手をあげた。


マウロとリーシアは舗装された街道を進んでいく。

空は濁り、竜巻が渦巻いているのが、遠くから見えた。

歩き続けると、王国の城壁が迫って来た。

「久しぶりに来たな」

マウロがそうつぶやくと、

「あんたもか、ウチも10年ぶりくらいかなぁ、盗賊の頭やり始めてから、全然帰ってなかったわ」

と感慨深げに言った。

「リーシアさんって、なんで盗賊の頭なんてやってたんですか?」

と聞くと、

「頭なんてとは何よ、でも、ウチはもともといいとこのお嬢様だったのよねえ、でも昔から活発で、王国の兵士に志願しようとしたら、両親と大喧嘩になってさ、それで出てったってわけ。盗賊狩りをして金を稼いでたらいつの間に頭になってたんだけど」

みんないろいろ事情があるんだな、とマウロは思った。


「いい?ウチは実家には帰らないで、すぐに戻るわよ。あそこが居心地いいし」

と言ってきた。

やっぱり、両親に対してちょっと悪いと思ってるのかなぁ、と思ったが、同意した。


マウロはコートを被り、リーシアの後ろにつく。

歩いていくと、とうとう検問にたどり着いた。

王国の兵士がリーシアの方を向き直る。

「通るぞ」

と手の甲の印を見せ、

「こいつは賞金首だ」

と手短に説明した。

「あなたは砂漠の首領ですね、どうぞお通りください」

事情を知っている兵士は、2人を難なく通した。


「リーシアさんって、結構有名なんですか?」

と聞くと、

「まあ、表向きは盗賊団なんぞとは関係ないってツラしてやがるけど、利害の一致っていうか、ギブアンドテイクの関係だからな。裏じゃウチらが外的の排除をして、あっちは厄介な隣国から身を守ってもらってる形になってる。だから、ウチは好待遇なんだよ。実は武器の提供も受けてる。」

マウロは、

「あれ?でも10年ぶりって……」

と聞いたが、

「それは実家の話だ。言ったろうが」

と怒られた。

いや、王国に来たのが何年振りかって話だったし。

やっぱり、未練あるんじゃん。とマウロは思った。


リーシアと別れ、マウロはアーシムの家に向かうことにした。




ようやく終盤です 頑張ろう

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