シーケットにて、再会
「おい姉ちゃん、これが俺の顔かい?ずいぶん男前に書いてくれたじゃねえか、覚悟はできてんだろうな?」
そこには、つぶされた男の顔が書かれていた。
悪夢を書くという女性メリアは、その日、ガラの悪そうな筋肉質の大男に似顔絵を描いてくれと頼まれ、いつものように悪夢を描いた。
その男はメリアに一目ぼれし、ナンパのつもりでそう声をかけたのだが、一瞬でキレた。
「おらあ!」
と男がこぶしを振り上げ、メリアに殴り掛かる。
「キャアッ!」
メリアを拳がかすめ、その場にしりもちを着いた。
そして、ザワザワと人だかりができ始めた。
皆、ガラの悪そうな男に不満のまなざしを向けたが、
「文句あんのか?」
と男が人睨みすると、うつ向いてしまう。
しかし、その中から一人の青年が前に出てこう言った。
「おっさん、勝負なら俺がするよ?」
前に出た青年は、さっき仕留めたヌーベエを担いでいた。
「あ?ガキじゃねえか」
見た目は20代前半か、いや、それより若いかもしれない。
腰には一本の長剣を携えている。
「おいガキ、まさかその剣を使って俺とケンカする気か?そりゃあ、でかい口もたたけるわな」
「いんや、素手でいいかな、おっさん程度なら」
男はいきり立ってこう言った。
「なめんじゃねえぞ、クソガキがっ」
そして、青年に突進してきた。
その勢いのまま、男は拳を繰り出した。
青年は、腕をクロスさせて受け止める。
メリっと音がした。
「おお、見た目通りのパンチ、結構効くね」
涼しい顔で青年はそう言う。
更に、男は青年の肩をつかむと、思いっきり頭突きを食らわせてきた。
頭と頭がカチ合い、見ていたギャラリーも思わず顔をひそめた。
「ありゃ、効くぜ」
とギャラリーの一人が言う。
しかし、青年はびくともしない。
男の方が逆に目を白黒させて、驚いていた。
「どう、いう、ことだ……」
「俺も殴っていいか?」
そう言って、青年は思いっきり男の顔にパンチをめり込ませ、完勝した。
男の顔は、書かれた絵画のようにつぶれてしまった。
メリアはお礼を言うために、その青年に近づいたが、
「あれ?あなたって!」
メリアの知る人物だった。
「お久しぶりです」
その青年とは、マウロだった。
メリアはまじまじとマウロを見つめる。
「あれから、1年もたってないのに、どうしちゃったんですか?」
あの時から、雰囲気もかなり変わった。
今までのきゃしゃな体つきとは違い筋肉質で、兵士と言ってもなんら疑いのない肉体へと変貌していた。
「パブカトレスで兵士になって、そこで訓練を受けたんです。きつかったぁ」
と笑いながら答える。
「いいじゃないですかぁ、でもなんでこんなところに?」
「あの日の夢を、食い止めに来たに決まってます」
メリアは、
「そう言えばそんなこともあったっけ」
と言った。
マウロは干し肉屋に向かっていた。
「マウロ!お前、久しぶりじゃねえか!」
干し肉屋の店員のウガは、マウロの顔を見るなりそう言った。
「久しぶりです、それより、これ」
と言って、担いでいたヌーベエを見せた。
「今度はちゃんと仕留めました、剣で」
ウガは驚いた。
「狩りの道具なしで仕留め立ってのか!一体どうしちまったんだ、はっはっはっ」
と豪快に笑った。
マウロは、兵士になりそこでの過酷な訓練、ヌーベエをどうやって仕留めたかを説明した。
「なるほどな、お前も成長したってわけか」
と考え深げに腕を組み、
「よし、お前が帰って来た祝いにこの肉で燻製を作ってやる」
と言って、ウガは燻製を作ってくれた。
それからしばらく時間をつぶし、夜から始まる居酒屋に向かった。
そこには、顔なじみのメンバーが揃っていた。
ゼルセットと、ターニアである。
「久しぶりだな!1年ぶりくらいか」
とゼルセットは言った。
ターニアも、
「あんた、兵士になれたってね、良かったね!」
と喜んでくれた。
それから、3人で世間話をした後、
「そろそろ本題に入りましょう」
とマウロが切り出した。
「その前に、一つ問題がある」
ゼルセットがそう言った。
「なんですか?」
「このシーケットから、王国に向かうための街道の途中、原因不明の異常気象のために進めなくなってる。まるで、パブカトレスの兵を阻むかのような形でな」
パブカトレスと王国の間で、近いうち戦争が起こるとのもっぱらの噂であったが、それを阻止するような形で、トルネードが発生し続けていて、その間を通行できない状態らしい。
「ただの自然現象か、それとも誰かの仕業かは分からないがな」
ゼルセットがそう言ってから、店員を呼んで3杯目のウイスキーを注文した。
ターニアはすでに酔っぱらってしまって、寝息をたてている。
「そのトルネードを通過する手はあるんですか?」
マウロが尋ねたが、ゼルセットはこう答えた。
「さあな、だがもう一週間以上もそんな調子だ。消えるまでまつか、迂回して王国に行くか、どちらかだな。トルネード自体を何とかするってのは現実味がない。アーシムの暗殺まではあとどれくらいだ?」
「おそらく、一か月ですね」
マウロはメリアの予知夢の1年という話から日にちを割り出して、そう答えた。
「一か月か、だったら、迂回する方法もありかもな、それなら王国まで大体一か月、トルネードを突っ切れば一週間の道のりだが……」
「迂回する場合、どこを通るんですか?」
「砂漠地帯だ、過酷な道程になるぞ」
マウロは迂回か直進か、2択を迫られた。
マウロのレベルが20くらいになりましたw
今までは2くらい
マウロは目がいいので、特殊能力、「ライブラ」を開眼しました




