相棒との別れ
なぜかモチベは高いですw
「なーんか知ってる人がいるなと思ったら、やっぱりマウロ、あんただったわね」
とターニアは言った。
「あれ、こんなところで何をしてるんですか?」
とマウロが聞くと、
「私は仕事が終わって友達と飲みに来てたのよ、あんたの方こそ、まだこんなところで飲んだくれてるなんてね」
と言われてしまった。
マウロは今まであったことをターニアに話した。
「結局商売はうまくいかなくて、今はどうしたらいいのかって感じです。このまま有り金が尽きたら、村に強制退去です。そしたら、そのまま徴兵に取られて、僕の師匠のことも助けられないで終わってしまう」
マウロは涙声でそんなことを言った。
王国の兵は良くない、そうアーシムは言っていたため、そこから逃れてきたという事情もあった。
酒が入り、ついつい感情的になってしまう。
ターニアは、
「あんた、諦めるのは早すぎるわよ。いいこと教えてあげるわ」
と言った。
「なんですか?」
「シーケットから更に北に進んだところに、パブカトレスという国があって、そこは出身の国を問わず、兵士を募集してるの。その応募期日が1週間後よ」
という情報をくれた。
その話に、マウロは目が覚めた。
「兵士を!本当ですか?」
王国の兵は良くないが、もし別の国の兵ならどうだろうか、また事情が変わってきそうだった。
「兵士になればとりあえず給料がもらえるし、何よりそこで剣を学べば強くなれる!」
マウロはターニアにありがとう、と感謝し、走り出した。
「パブカトレスはすぐそこだから、慌てなくていいわよ」
と後ろから笑いの混じった声が聞こえた。
マウロはこの街を出ていくことを決めた。
その日が、最後のシーケットでの夜となった。
キャンプ地でマウロは夜空を眺めた。
星が煌いている。
「明日は、快晴だな」
そう言って、寝袋に入った。
眠りにつくまでに、マウロは今までのことを思い返していた。
山道で、ゼルセットとターニアの後ろを歩いたときに思った、自分の無力さ。
ヌーベエと戦った際に、何もできなかった自分。
今はアーシムを助けたいという思いよりも、その自分の弱さを克服したかった。
「絶対に、強くなって帰るんだ……」
朝、マウロは腰に片手剣を差し、出発した。
寝袋や食料はリュックに積んである。
北の街道を進む。
ターニアの話では、そこまで遠くはないらしい。
北の国からやってくる行商人に何度もすれ違う。
やはり、向こうからバザールを目指してくる人は多いんだなと、マウロは思った。
歩いて半日もたたずに、パブカトレスの検問までやって来た。
マウロは門の前にいる兵士に声をかけた。
「ここを通りたいんですが」
「では、出身の国の証を」
と言われ、手の甲を見せた。
そこには出身の国の刻印が刻まれている。
だが、それを見た兵士は、
「王国の出身……」
と、つぶやいた。
この国は王国と戦争をしたばかりで、王国出身者を毛嫌いしている兵士も多い。
「王国出身者には、ここを通る際、特別料金を払ってもらうことになっているんだ。5万ゴールドになる。払えないなら問答無用で帰れ」
5万という法外な値段を言われたが、兵士になれれば何とかなるか、と思い、有り金の残りすべて、5万を渡そうとした。
すると、
「ガキのくせに……」
と口の中でつぶやき、
「あー、そうだった、昨日料金の改正が行われたばかりだったんだ。6万だ」
と言ってきた。
「ちょっと待ってください、6万ですか?それは高すぎますよ」
とマウロは食ってかかったが、
「黙れ、ないなら、ここから消えろ」
と兵士に一括された。
しかし、マウロは黙って引き下がるわけには行かなかった。
どんな苦難を乗り越える時も、そばには片手剣があった。
「相棒、どうすればこの状況を切り抜けられる?」
マウロはそうつぶやいた。
検問の前に居座ってから1日が経過した。
「あのガキ、まだいんのか……」
兵士は、夜と昼は担当が別だが、当番は2人だけのため、マウロがずっとそこに居座っていたことが分かった。
兵士はしばらく無視していたが、マウロの無言のプレッシャーに、苛立ちを覚え始めていた。
「ふざけやがって」
しかし、もし邪魔だと言って切り伏せれば、あとでどんな処分を受けるか分からない。
更に2日目、3日目が経過した。
さすがにお互い疲労の色を見せていた。
「あいつ、なんなんだよ……」
マウロは兵士に近づき、
「5万あります、通してください」
とその日も同じ兵士に言った。
兵士も半ば折れかけていたが、
「黙れ、6万なければだめだ」
と言い続けた。
更に4日、5日が過ぎる。
マウロは、とうとうある決意を固めた。
6日目、やっといなくなったと兵士が思っていたら、マウロがやって来た。
そして、
「6万ある。これでいいでしょう」
と言って、兵士に6万を渡したのだ。
「お前、どうやって……」
兵士は気づいた。
腰に差していた片手剣がないことに。
「お前、それは命の次に大事なもんだろ、なんでそこまでするんだ?」
マウロはただこう答えた。
「うるせえ」
マウロの目には、涙がたまっていた。
兵士は無言で自分の剣をマウロに渡し、
「大人げないことをした、すまなかった」
と言った。
長剣である。
「……」
黙ってその剣を受け取ると、マウロは去っていった。
ここから1年後に飛ぶかもです 分からんけど




