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プロローグ

とある村のとある居酒屋に、ある男がいた

その男は、知る人ぞ知る傭兵部隊の隊長、名をアーシムと言う

年は35歳くらいで、傭兵らしくたくましい体つきをし、腰に一本の剣を携えていた

ある任務で仲間の大半を失い、しばらく休養のため、気の向くままに旅をしていた

アーシムはこの村が気に入り、もう一か月も滞在している


今日も夜、アーシムが酒を飲んでいると、マウロが声をかけた

「お客さん、ずいぶん長いことこの村にいますよね?」

マウロはこの居酒屋でバイトをしている

年は19歳である

「そうだな、俺はどれくらい滞在してる?」

アーシムがメニュー表を見ながら返事をした

マウロが答える

「もう一か月になると思いますね」

「ずいぶん長いな、ここの酒がうまいからかもな」

そう言っていつものウイスキーを炭酸で割った酒を注文した

アテにこの店の特製チョリソーを頼んだ


しばらくして、注文した料理と酒が運ばれてきた

「うまいな」

そう言ってアーシムはチョリソーを一口食べ、ウイスキーを一気に飲み干す

すると、突然外から村人が入ってきて、こう告げた

「大変だ、山の向こうから盗賊の一味がこっちに降りてくる!」


「盗賊だって?」

マウロはとっさに、店の中に置いてあった剣をつかんだ

「なんでこんな村に?」

マウロが聞いた

すると、村人は、

「分からんよ、盗賊の目的なんてどうせ金や村の女だろう やつら、戦争で男が出払ってるのを機にやって来たんだ」

と言った

この国では、徴兵制度をとっているが、20以上の男がその対象であった

「とにかく、戦えるものを今かき集めている、マウロ、お前が頼りだ」

マウロは最近ようやく、独学で剣を覚え始めたばかりである

しかし、今は一刻を争う事態であった

「分かった」

マウロが返事をし、チラとアーシムの方を見て、

「お客さん、その腰にあるものは使えるんですか?」

と聞いた

「……もし今日のお代をチャラにしてくれるってんなら、協力してもいいぜ」

マウロは少し考えた

そんなことはバイトの自分の独断では判断できない

しかし、今は猫の手でも借りたい状況である

「分かりました、店長に後で言っときます」

「交渉成立だな」


マウロは外に出た

すると、すでに村の若者と、盗賊ざっと10人が対峙していて、一色触発の状態であった

みな片手に剣を持ち、にらみ合っている

「おとなしくすりゃあ、死なないで済む」

そう言ったのは、おそらく相手の首領である

数人の部下のうしろに身を隠している

戦闘になれば、村の被害は免れない

しかし、ここで大人しく捕まっても、どの道殺されるのは目に見えていた

若者の一人が剣を握りしめ、一歩近づく

そして、

「この村にそこから一歩でも踏み込んでみろ、全員一斉に斬りかかるぞ」

と言った

クスクス、と盗賊の笑いが聞こえる

「野郎、何が面白い」

「お前たちは人を斬れるツラじゃねえ、見ればわかる」

首領と思われる男が言った

そして、その男が

「やれ」

と顎で仲間の一人に指示を出した

村の若者は剣を中段に構えるも、手が小刻に震えている

マウロは、とっさに駆け出していた

村人と盗賊の間に割って入る

盗賊は剣を振り上げ、村人を真っ二つにすべく、剣を振り下ろした

マウロはその軌道をとっさに読み、相手の懐に潜り込み、頭上に剣を受けるような形でを構えた

相手の腕の軌道上に自分の剣がクロスする

「があああっ」

と盗賊が悲鳴を上げた

狙い通り、刃に腕をめりこませ、盗賊は悶絶した


「こいつっ」

予想だにしていないことが起こった

マウロの眼光は鋭く、他の村人とは何かが違った

それを合図に他の仲間が一斉にマウロに襲い掛かろうと動き出した

その瞬間であった

居酒屋の2階から何者かが飛び降り、盗賊の首領の背後に回り込んだのである

アーシムであった

場の空気が凍り付いた

首に剣を当てて、アーシムは言った

「終わりだな」

次の瞬間には、盗賊の首領は頸椎を切断され、即死していた

他の盗賊は首領を失い、一目散に山に逃げ帰って行った


騒動のあと、アーシムはマウロに言った

「黙ってたが、俺はちょっと前まで傭兵団の隊長をやってた だが、その傭兵団は解散して、次に新しい傭兵団を作ろうと思ってたんだ」

マウロも来年には徴兵制度で戦争にかりだされる

「もし俺の傭兵団に入れば、剣の稽古は俺がつけてやるし、仕事次第じゃ、国の兵隊になるよりずっといい給料を払ってやれる」

予想外の勧誘だったが、マウロはしばらく考えますと言った

そして、1日考え、その傭兵団に入ることを決意した

もし、本当にこの時代を生き抜きたいのなら、本物の強さを身につけなければならないとマウロは思った

アーシムの強さは本物である

マウロは、国で教本通りの剣の訓練を受けるより、こっちの方が強くなれるのでは?という結論に達した


この傭兵団、まだ形にはなってないが、近いうちに発足するとのことだった

それから数日後、マウロは剣を腰に携え、アーシムと共に村を出た



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