無くしたもの
こんにちは(=・ω・)ノchocoと申します
初めて小説書いてみました!
良かったらぜひ感想お聞かせください( *・ω・)*_ _))
改善点などもありましたらお願いします!
やあ、こんにちは。僕の名前はレミオ・アルレイン。気軽にレミオ、とでも呼んでほしい。君の名前は?…そうか。思い出せないのか。それは困ったね。
そんな君に、ぴったりの噺があるよ。どうだい?お茶でも飲みながら、僕の戯れ言に付き合ってくれないかい?
…ありがとう。そうだ、飲み物は紅茶でいいかい?僕はどうもコーヒーが苦手でね。おっと、話がそれてしまった。では早速始めるとしよう。
これは、一匹の黒猫の噺さ。その黒猫は頭が良くてね。人間の言葉を理解することができた。黒猫は、人に飼われることを望み、ありとあらゆる金持ちにすり寄っていった。なんたって人の言葉がわかるからね。金持ちが「淋しい」と言えば膝の上に乗っかり、「悲しい」と涙を流せば隣に座って頬をすり寄せた。名前を呼ばれれば振りかえって甘えた声で鳴くんだ。
しかし、猫とは気まぐれなものでね。可愛がられては姿を眩まし、また新たな飼い主を探しに旅へ出るんだ。飼い主が変われば、当然黒猫の名前も変わる。黒猫は名前を一つ一つ覚えていた。
ほら、猫は死期が近付くと自分から姿を眩ますとよく言うだろう?過去の飼い主たちは黒猫が突然いなくなって必死探したが、結局見つかることはなく「死に際を見せたくなかったのだろう」という結論に至ったんだ。
だから猫は、一人の主に縛られることなく、自由気ままに人間のもとを渡り歩いた。
ただね。
猫にだって寿命はある。
最期を迎えるとき、猫はいろいろなことを思い出す。そう、まるで走馬灯のようにね。
暖かかった暖炉の火。ミルクの味。主が読んでいた本の題名。
ただ一つ、どうしても思い出せないものがあったんだ。
名前。
名前だけがどうしても思い出せない。あんなに何回も何回も呼ばれてきたのに。
実は黒猫は、名前の本当の意味を知らなかった。悲しいことだね。ずっとずっと、名前を何かの暗号のように思っていたんだ。
こう言われれば自分は振り返って甘えた声を出すべき、って頭にインプットされていただけで、自分の名前だとは考えもしなかったのさ。
…さて。僕の噺はこれでおしまい。
どうだい?君の名前は思い出せた?
…そうか。君はマリアと言うのか。思い出せたようで何よりだよ。名前を暗号だと思い込んでしまうのは、実に悲しいことだからね。
さあ、もう元の世界へおかえり。ここは無くしものが来る場所。もう君がいるべき所じゃないのさ。
また何か無くしたらおいで。僕はずっと、ここにいるからさ。