晴れ女
初めて小説を書かせていただきました。おかしな点が多々あると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
今日、僕は付き合っていた彼女に振られた。
辛かった、悲しかった。
僕の心の中ではその気持ちでいっぱいだった。
そんな気持ちを抱えながら僕は家に帰り、いつもより早めに寝た。
一刻も早くこの気持ちを忘れたかったからだ。
ふと気がつくと僕は雨が降っている中、白いベンチに座っていた。
周りを見渡すとそこはベンチ以外、野原で他に何もなかった。
なぜ僕がこんなところにいるのか最初は分からなかったが、すぐにこれは夢だと思った。
なぜなら、いつもより体が軽く、ふわふわしている様な感覚で、視界も少しぼやけていたからだ。
雨が降っている中、僕は傘もさしていなかったので、全身がびしょ濡れだった。
あんまり濡れているような感覚はなかったが、冷たく感じた。
まるで今の僕の心の中ようだ。
振られたことを思い出し、胸が痛む。
そんなとき、ふと自分が雨に濡れていないことに気がついた。
上を向くと、僕と同じくらいの歳で黒髪のロングヘアーで白いワンピースをきた人が、赤い傘を僕にさしだしてくれていた。
「風邪、ひいちゃいますよ?」
彼女は笑顔で言ってきた。
「どうぞ、もう1つ傘があるので。」
彼女はもう1つの傘を僕に見せてきた。
彼女に合う、白い傘だった。
「・・・ありがとう。」
僕は赤い傘の方を貰った。
これで雨に濡れずに済むが、相変わらず心は冷たく傷ついたままだった。
しばらく俯いていると、彼女が僕の隣に座り、話しかけてきた。
「何かお悩み事ですか? 私でよければ話を聞きますよ。」
彼女は優しい笑顔で訪ねてきたが、今はいくら夢でも話す気にはなれなかった。
「ごめん、今は話したくないんだ。」
と、小さな声で答えた。
しばらく沈黙が続き、雨の音だけが聞こえていた。
どのくらい経ったのだろう、沈黙が続いてから結構時間が経った気がした。
ここで僕は少し不思議に思った。
いくらなんでも夢を見ているのが長すぎではないかと。
僕が今まで見てきた夢でもこんなに長く見たことはなかった。
そんなことを考えていたら、彼女が口を開いた。
「あの、あなたのお悩み事って・・・ ---」
ここで目を覚ました。
どうやら普通に夢だったようだ。
彼女が話している時に目を覚ましてしまったので、話の続きが少し気になった。
しかし、もう終わってしまったことなので、僕は諦めた。
そしてすぐに昨日のことを思い出し、心に痛みを持ったまま学校に行った。
あぁ、やっぱりダメだ。
学校に行くと必ず元カノに会う。
その度にどんどん胸が痛くなる。
僕はそんな気持ちで、家に帰り、深い眠りについた。
また僕は白いベンチに座っている夢を見た。
天気は変わらず雨のままだった。
ただ、今回は最初から赤い傘を持っていた。
そして、隣で彼女が座っていた。
もしかして昨日の続きなのかもしれない、僕は昨日の夢で彼女が言いかけていた話のことを思い出し、聞こうとしたとき、彼女から話しかけてきた。
「すみません、昨日グズグズしていたもので・・・。」
彼女は少し落ち込んでいた。
別にこれは夢なのに妙にリアルだなと僕はまた不思議に思った。
もしかしたらこれは夢じゃない何かか・・・?
またそんなことを考えていたら彼女が話しかけてきた。
「昨日の続きですけど、あなたのお悩み事って、『恋愛』についてですか?」
「そうだよ、なんで分かったんだ?」
僕はそう尋ねた。
「私も昔、失恋しちゃったんです。
あなたの顔がその時鏡で見た自分の顔とそっくりだったので・・・。」
と彼女は俯きながら言った。
あぁ、彼女となら分かり合えるかもしれない。
僕はそう思った。
彼女の話は続いた。
「実は私、付き合っていた彼氏に振られたんです。
その時私はあなたと同じくらい傷つきました。
辛くて、辛くて、とりあえずそんな気持ちでいっぱいでした。」
彼女も僕と同じ思いをしたんだな。
僕はそう思いながら頷きながら聞いていた。
「そんな気持ちの中、ついに耐えられなくなってしまい、私は
自殺しました。」
「え・・・!」
僕は驚きを隠せなかった。
「はは、馬鹿ですよね。
そんなことで自殺するなんて・・・。
今はとても後悔しています。
失恋してもまだまだ人生があったのに・・・。」
「馬鹿ではないんじゃない?」
「え・・・。」
「あの気持ちのままいるのは確かに辛い。でも・・・」
僕は少し間を置いてから言った。
「逃げてしまったんだね・・・現実から・・・。」
「・・・はい・・・・。」
彼女は静かに泣き出した。
僕も彼女の背中をさすりながら、一緒に泣いた。
実は僕もこの夢を見る前、死にたいと思った。
辛くて苦しい気持ちから早く解放されたいと思った。
現実から逃げたいと思った。
でも、この夢で彼女と出会い、大切なことに気がついた。
現実から逃げてはいけない、人生はまだまだあるんだ。
そう気がつかせてくれたのは彼女だった。
それから僕は寝るたびに彼女と会う。
彼女が生きていた時の思い出などをたくさん教えてくれた。
僕も徐々に学校の出来事や家庭のことなどが話せるようになった。
そして次第に、あの辛くてたまらなかった気持ちがなくなっていった。
ある時、僕は雨が止んでいることに気がついた。
僕はすぐになんで止んだのかが分かった。
「私、学校の友達に『雨女』ってよく言われてました。」
「『雨女』?」
「はい。
よく友達と一緒に遊びに行ったときや学校の体育大会勝ったときに、必ず雨が降ってくるんです。
おかげで楽しみにしていた人気のジェットコースターに乗れなかったんです。」
彼女は苦笑しながら言っていた。
「僕はあなたが『雨女』だと思わない。
むしろ『晴れ女』だと思うよ。」
「えっ! なんでですか?」
「最近、雨降ってないよね。」
「えぇ、確かに降ってないですね。」
「きっとこの天気は僕の心の天気だったんだ。
っで、今はもうあの辛い気持ちから立ち直れた。
あなたのおかげだよ。
あなたのおかげで僕は大切なことに気がつけたんだ。
ありがとう・・・。」
彼女はとても驚いていた。
「そ、そんな!! お礼を言うのは私の方です!
今まで私の話を聞いていただき、ありがとうございます!!」
彼女はベンチから立ち上がり、慌ててお辞儀をした。
そんなことまでしなくていいのに、と僕は少し笑った。
すると、彼女の体が急に光りだした。
まるで暗いところから急に明るいものを見たかのように、とても眩しかった。
しばらく経ったときその光は消え、彼女の体が見えるようになった。
しかし、彼女の体は透けていった。
僕は驚いた。
どうしてそうなったのかが理解できなかった。
すると彼女は口を開いた。
「そろそろ行かないといけないみたいです。」
「行くって、何処に?」
「私は本来ここに来る必要はなかったんです。
でも、私が自殺したあと、心の整理が出来てなくて、ずっと成仏せずに彷徨っていました。
そんな時に私はここにたどり着き、あなたに会いました。
たくさんお話が出来て、やっと心の整理が出来ました。
なので私は成仏しに行かなくてはなりません。」
「じゃあ、いなくなるのか?」
「そうなりますね・・・。
このままずっとあなたとお話したかったけど、ここに居ると、あなたに被害が出てしまうのでもう行かなくちゃ・・・。」
彼女の目は涙ぐんでいた。
しばらくの沈黙、初めて会ったときのことを思い出す。
そして彼女の体はだんだん消えていく。
このままではダメだ!僕は口を開いた。
「さっき、お礼を言うのは私の方って言ってたけど、僕もあなたに救われたんだ。
だから、もう1度言うよ、ありがとう・・・。」
彼女は笑って、
「ありがとう・・・!!」
その笑顔は今まで見てきた笑顔の中で1番綺麗だった。
そして彼女は静かに消えていった。
あれから彼女が出てくる夢は見なくなった。
そして、いつもと同じように人生を歩み始める。
僕は寝るとき、たまに彼女のことを思い出す。
大切なことを気づかせてくれた、すてきな晴れ女のことを・・・。