【予告編】the HERO
―――ずっと、ヒーローにあこがれていた。
強きをくじき、弱きを助ける。そんなヒーローにあこがれていた。
世界征服をもくろむ怪人を倒す、悲しみを抱えた仮面のヒーロー。
宇宙より来る脅威と戦う時間制限つきのヒーロー。
5人一組で悪と戦う、戦隊ヒーロー。
子供のころは、いつか自分も彼らの一員になると、思っていた。
彼らがフィクションだと知ってからも、ヒーローを目指した。
弱者を守り、悪を倒し。
正義を貫くヒーローを。
その為に力も付けた。
努力は欠かさなかった。
だが、それも昔のことだ。
今、自分を見てふと思う。
何がヒーローだ。
何も解決できていない自分がヒーローになりたい等と、口が裂けても言うことはできない。
悪を倒す?今や自分こそが悪ではないか。
強きをくじく?今や自分こそが弱きをくじいているではないか。
たった一人、ビルに囲まれた都市で、己のことを嘲笑する。
そんな自分が、この言葉を口にする資格があるのかと。
それでも、戦うことを選んだ己は、どれだけ業に満ちているのだろう。
懐から電子機器を取り出す。
一昔前の携帯電話によく似たそのデバイスは、全ての光を吸収するがごとく真黒に堕ち込んでいる。
そのデバイスを掲げ、印を虚空に描く。
そして口にする。あの言葉を。
「変 身 !」
the HERO 2012年中に執筆予定?