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CALL  作者: unicorn
2/5

CALL2:「相変わらずだね。元気だった?」



「リョウちゃん!どういうこと!」


大好きな先輩にかけたつもりの電話がどうして、あの忌々しいアイツの携帯に繋がってしまったのか。納得のいく説明をしてもらわなきゃ。


「ちょっとナツミ!昨日どうしたの?」


「そうだよ、心配してたんだよ!昨日いくら電話しても繋がらないし」


あの後、どう帰ったかなんて覚えていない。ただアイツの憎たらしい微笑みが頭から離れず、眠れぬ夜をすごしたのだ。



「四之宮先輩となんかあったの?」


「四之宮って言葉は聞きたくない!!」


 二人は目を丸くしている。



(もしかしてふられたんじゃないの?)


(マジで!?どうすんだよ)


(リョウなぐさめてよ!)


(俺には荷が重過ぎる!)



「聞こえてないつもりだろうけど全部聞こえてるから。

 そんなことより、この電話番号!」 


「は?電話番号?四之宮先輩の電話番号だろ。

 お前が知りたいって言うから、俺が書いてあげたんでしょうが」


「リョウちゃん携帯出して!早く!今すぐ!」


「ナツミ落ち着きなさいよ。

 何があったの?話してごらん」



その後、私は二人に全てを話した。リョウちゃんの携帯を見ると、四之宮先輩の電話番号とあの四之宮の電話番号は下一桁違いだと言うことが分かった。




「あはははははは!!!!つまり俺が四之宮先輩の電話番号を一桁間違えて書いてしまったお陰で、危うく売れないホスト「四之宮ハジメ」に告白しそうになったって訳か」


「笑えない!!」


「はい、すみません」


「すごい偶然。間違い電話をかけた相手も四之宮っていう苗字だったんでしょ?」


「そう!ほんっとリョウちゃんのバカには呆れた」


「リョウを当てにしたのが間違ってたのよ」


「ハルナそういうなよ〜俺も悪気があったわけじゃないのよ?」


「バカ!あほ!死ね!」


「まぁまぁ、四之宮先輩にふられたわけじゃないんだから、いいじゃない?」


「しかもその四之宮って奴、かっこよかったんだろ?」


「うるさい!!」




(こりゃ重症だね)


(ハルナ何とかしてよ)


(は?もとはと言えばあんたの責任でしょうが)



「だから聞こえてるってば!!」





――――

CALL

――――




 結局、リョウちゃんにはハンバーガーを奢ってもらう事で許してやる事にした。確かにリョウちゃんも悪いけど、別にリョウちゃんを怒っているわけじゃない。私は違う何かにイライラしていた。恐らく、その原因は四之宮ハジメだ。アイツの仕草、声、自信たっぷりな性格、どれもこれも気になってしょうがなかった。


「機嫌直せよ、ナツミ」


「そうそう。ほら着いたよ」


 ハルナにひっぱられながらハンバーガーショップに入る。


「席とっとくから注文宜しく」


そう言うとハルナとリョウちゃんは早速座っていた。


「んもう〜〜」


「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」


「あっえっとチーズバーガーと……」


「あれ?ナツミちゃん?」



 ふいに呼ばれ顔を上げる。そこには憧れの四之宮先輩の笑顔があった。


「四之宮先輩!」


この笑顔が好きだった。優しくて包み込むような笑顔。アイツみたいに人をバカにしたような微笑みなんか大嫌いだ。だいだいアイツは私のことをガキだっていってたけど、自分も同じようなものじゃないの。高校生相手にむきになって……。


やだ、何あいつのことなんか考えてるんだろう。目の前には大好きな先輩がいるのに。

邪念を吹き飛ばすように、私はぶるぶると顔をふった。



「はは、相変わらずだね。元気だった?」


「はい。先輩ここでバイトしてるんですか?」


「ああ、つい最近始めたんだ。大学に通う合間にね。

 そうだ…」


はい、と先輩から差し出されたチラシの裏には先輩の電話番号とメルアドがかかれていた。


「ありがとうございます…」





「あの、先輩!

今お付き合いしてる方いるんですか?」


「うん、いるよ」


「そうですか」


 先輩の笑顔につられて私も笑顔になった。


「またいつでもおいで。で、あっちのリョウにも宜しくいっといて」


「あ、はい!」




 注文通りにきたハンバーガーを両手に抱え、ハルナたちのもとへ急いだ。



「ナツミ!ナツミ!こっちこっち!」


「さっき、四之宮先輩と話した」


「マジ!?四之宮先輩と何話したんだよ!」


「彼女いるってさ」


「!!!!」


「ナ、ナツミ…ほら、男は先輩だけじゃないから」


「そうそう私がいくらでも紹介してあげるよ」


「よかったな!ナツミ!ほら食え!元気出せ!」


「……元気だよ」



 先輩に彼女がいるとわかったのにあんまり悲しくないことに気が付いてしまった。なぜだろう。あんなに好きだったのに。


「それはほかに気になる人ができたからじゃないの」


「えっ」


「ナツミの気持ちは嬉しいけど、俺………」


「リョウ死ね」


「うわーハルナひでぇ」


 相変わらずな二人に思わず笑ってしまった。ハルナは安心したように顔を緩ませ、私の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「マジな話さ、ホスト四之宮を好きになったんじゃない?!」


「私もそう思うな」


「そ、そんなわけないじゃん!!」


 ただ、ムカついて気になってるだけで、好きになったわけじゃない。アイツの笑った顔が頭から離れないだけ。そう、それだけだもん。



「ナツミの気持ちも分からなくもないよ。でもホストはダメ。

 明日合コン開いてあげる。その中からいいの選びなさい」


「いや!行かない!」


「ダメ。命令」


「リョウちゃん助けて〜」


「諦めろ」


 ハルナは一度決めたら、意志を絶対に曲げない。そこがハルナのいいところでもあるが、その頑固さに度々悩まされることもあった。今回も嫌と言っても無理やり連れていかれるんだろう。


 とにかく、私があんな嫌な奴のことを好きになるはず無いのに。



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