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観測者たち

チャンさん「所以,这次我要介绍一道用我们新招募的劳尔俘获的两艘飞艇制作的菜肴。理想情况下,你需要两艘飞艇,最好是超过200米长的。拿到飞艇后,我们先来做一些准备工作。我们要像刮鱼鳞一样,把飞艇表面的装甲剥掉。之后,切开底部,取出内部的引擎。这个发动机零件可以做成美味的咸味小吃,和酒很搭,所以我们不要扔掉,把它留下来吧。现在,我们终于可以开始烹饪了……(ハイというわけでね、今回はウチの新人ラウル君が仕留めてきた空中艦2隻を使った料理をご紹介します。使用する食材は空中戦艦2隻、全長200m以上のものが望ましいですね。さて、空中艦を調達したらまずは念入りに下処理をしていきましょう。魚の鱗を削ぎ落す要領で葉面の装甲を剥いでいきます。それが終わったら艦底部を切り開いて内部の機関を取り除きましょう。この機関部ですが塩辛にするとお酒が進みますので、捨てずに取っておきましょうね。さてと、それではいよいよ調理に移っていきますが……)」


ユリウス「あの、誰かチャンさん止めなくていいんスか?」

ヴォイテク「チャンさんの料理の邪魔すると中華鍋でぶん殴られるよ」

ユリウス「ヒッ」

ラウル「食へのこだわりが強すぎる」


 土壌を巻き上げ、堆積した埃や蔦、苔を吹き飛ばしながら、推定全長680mの巨体がカッパドキアの空へと舞い上がっていく。


 協商連合に所属するどの空中艦よりも、彼女ら―――テンプル騎士団の空中艦は巨大だった。これまで最大規模を誇っていたモニカ艦隊の戦艦スラヴァや、新たに参戦しては一撃で敵艦隊を全部葬った総旗艦【チェルノボーグ】よりも遥かに巨大で、それらすべての大型艦ですらクジラの傍らを泳ぐ魚にしか見えない。


 どんどん高度を上げていくテンプル騎士団の空中艦【アストレア】。


 およそ6万年ぶりに自分たちの世界へと帰還を果たさんとする彼女たちを見送るべく、ソーキルは先導するように高度を上げた。


 高く、高く、より高い空の彼方へ。


 その後を追うように、6万年も放置されていたとは思えないほど滑らかな動きで後に続くアストレア。やがてソーキルは左へと旋回して道をアストレアに譲ると、アストレアの巨大な艦橋の左側面へとついた。


 艦橋の窓から右手を見ると、赤く輝くアストレアの艦橋の窓に向こうに、蒼いホログラムで投影されたクランウェル艦長や他の乗員たち―――意識を電子化して生きながらえた彼女らの姿が見える。


 皆、笑っていた。


 遠く遠く、次元の壁を隔てた遥かな祖国への帰路。


 変わり果てた故郷を救う旅が、ようやく終わるのだ。


 願わくば、彼女らの未来に―――そして彼女たちの世界に、幸福のあらん事を。


 艦橋側面のサーチライトが点滅した。それが発光信号で、『アリガトウ』と何度も繰り返しているのだと理解するのに、それほど時間はかからなかった。


 高度1万m―――ソーキルの到達限界高度まで上がり、どんどん高度を落とし始めるソーキル。


 一方のアストレアはというと、さながら宇宙戦艦の如くそのまま大気圏を離脱する勢いでぐんぐん上昇。ダークブルーに染まった空の中へと溶けると、ぐんぐんその威容を小さくしていく。


 やがて、変化が生じた。


 まるで切り傷のように、アストレアの進路上にぱっくりと紅い裂け目が生じたのである。


 次元の裂け目。


 本来繋がる筈のない、異世界と異世界を隔てる壁に穿たれた小さな抜け穴。


 アストレアはためらうことなく、その紅い裂け目へと巨体を躍らせた。


 バヂッ、と放電しているかのような乾いた音を弾けさせ、アストレアの巨体がこの世界から完全に消滅する。


 還っていったのだ。


 自分たちの故郷(ふるさと)へ。


 還るべき場所へ。


「すごい……あんな巨体が”次元転移”するなんて」


「ああ。とんでもない技術を持ってるもんだな」


 6万年も放置されていたのにまだ動く空中艦といい、680mの巨体が次元の壁の向こう側へと飛んでいく離れ業といい、いったいどんな技術力があればそんな芸当を可能とするのか。


 この世界は、そして他の世界は驚きに満ちている。


「……俺たち、正しい事をしたんだよな」


「……ええ、きっと」


 ぎゅっ……と、俺の左手を優しく握るクラルテ。


 彼女の手を握り返し、お互いの温もりを確かめ合う。


 これでいい、これでいいのだ。


 これできっと彼女たちは、故郷に帰還出来た筈だ。そして変わり果てた世界をタイムリバースで修復して、失われた繁栄を再び取り戻すだろう。


 もし次元の壁を超える技術があったら―――いつの日か、彼女たちの世界を訪れてみたいものである。


 きっと、その頃には美しい世界に生まれ変わっているに違いない。


 緑と、陽の光と、そして人々の幸福に満ちた楽園に。


 今はただ、そう願おう。


「―――さあて、俺たちも帰るぞ!」


「了解!」


「回到阿卡迪亚后,我今晚要做一顿丰盛的满汉宫廷大餐!(アルカディアに帰還したら、今夜は満漢全席にするよ!)」


「「「「「うおー!!!!」」」」」


 ここでの戦いは終わった。


 アルカディアに戻ったら、ちょっとくらいは羽目を外してもいいだろう。


 え、もう羽目は外しただろって?


 ははっ、そんな堅い事言うなよ。


 勝ったんだ―――戦勝記念って事でいいじゃないか。


「よーし、進路反転! 目標アルカディア!」


「両舷、前進強速!」


 安定翼を稼働させ、船体をわずかに傾斜させながら反転するソーキル。下方から上昇してきたチャイカ、カナレイカ、トキの3隻と編隊を組み、進路を西へと取る。


 帰ろう―――俺たちの理想郷(アルカディア)へ。


















 協商連合とミストルテインの一戦。


 遥か遠く、夜空の彼方からその戦いを見つめる機械の目が1つ。


 傍から見れば、それは単なるビジネスジェットに見えた事だろう。しかし夜空に溶け込むようなダークグレーの塗装と、背面に搭載された棒状のレーダーユニット”エリアイ・レーダー”の存在から、それが単なるビジネスジェットではなく『グローバルアイ』である事が分かる。


 戦闘空域から遥か離れた場所で、協商連合とミストルテインの戦闘を観測していたグローバルアイ。観測できた魔力反応と最大望遠の映像、その他各種データが表示されたモニターを眺めながら、機内の管制官は顔をしかめた。


「……新興のレギオンがこんな兵器を?」


 映像を巻き戻し、もう一度繰り返した。


 最大望遠の荒い映像ではあるものの、艦首のユニットから強烈な蒼い光が放たれたかと思いきや、射線上に展開していたミストルテイン艦隊が一瞬にして消失。直撃を免れた艦も装甲を融解させられたばかりか、動力を喪失してそのまま雲海へと沈んでいった。


 折れ線グラフが指し示す数値から、あれはプラズマである事が分かる。


「協商連合といえば、イライナと太いパイプのあるレギオンです」


 どうぞ、とブラックコーヒーを差し出しながら、観測員が言う。


「対消滅機関の安定供給を受けているという情報とも符合します。しかし、あれだけの出力を出すために一体どれだけ対消滅機関を積んだんだか……」


「いずれにせよ、あんなプラズマ砲の前では要塞は役には立たんな」


 船体規模から逆算すると、少なく見積もっても10基―――多く見積もって20基くらいは搭載できるだけの余裕があると見るべきだろう。もし事実ならばその発電効率は常軌を逸したレベルに達しており、その余裕のある電力供給を受けた状態であればもっと強力な一撃が放てるはずだ。


 周辺への被害を考慮し、出力を絞っていたとしか思えない。


 しかしそれで―――手加減した状態で50隻規模の艦隊を葬ったという事実は、衝撃的なものとして受け取る事ができた。


 無論、協商連合と戦争を始めるつもりはない。そもそも彼らはこちらから手を出さなければ決して牙を剥く事の無い、そういう性格のレギオンである。


 だがもしも―――万が一にも彼らと、あるいは彼らと同等の技術を持つレギオンと敵対する事になった場合、()()()()()()では相手にならないだろう。射程距離外からプラズマ砲を放たれ、ワンパンされる結末が目に浮かぶ。


「データ、しっかりとったな」


「はい」


「よし、嗅ぎつけられる前に離脱しよう。”ボス”にこの情報を」


「了解です」


 黒灰色の翼を翻し、グローバルアイが空域を離れていく。


 協商連合が投入した戦艦チェルノボーグの存在は、多くの勢力にとって脅威と映った。






 ―――そして同時に、超兵器の開発競争に火を着ける嚆矢ともなった。


















 カッパドキアの戦いの惨敗という知らせを聞き、レギオン”ミストルテイン”の代表ウォーロード―――本名『アルメリアス・スッラ』は怒り狂っていた。


 絶対に勝てる戦力を差し向けたつもりだ。戦艦、巡洋艦、駆逐艦……ありったけの投入したのだから、今頃はこんなクソのような知らせではなく、我がレギオン大勝利という朗報で勝利の美酒に酔いしれていても良かった筈だ。


 しかし、この体たらくは何事か。


 投入した戦力はことごとく喪失し、カッパドキアに眠る未知の空中艦の確保にも失敗したどころか、その未知の空中艦内部の技術は全て協商連合に渡るという最低最悪の結末。到底許容できないものだ。


 既に作戦の指揮を執っていた参謀総長は解任、処刑した。しかしそれでも、この腹の虫は収まる事を知らない。


「か、閣下」


「何か!」


「お電話が入っております」


 こんな時にか、と怒り散らしながら、ひったくるように受話器を手に取るスッラ。


 誰だ、とぶっきらぼうに応じると、受話器の向こうから聴こえてきた嘲笑が彼の神経をこれ以上ないほど逆撫でした。


 聞き間違う筈がない―――その嘲笑は、間違いなく”あの男”だった。


 「協商連合に戦を仕掛ければ得である」と吹き込んだ、あの男の声だった。


《クックックックッ……いやぁ、随分とすっげえ負けっぷりだったなァ。えぇ、スッラさんよ?》


「貴様……ッ! この落とし前、どうつけるつもりだ!?」


 ドン、と拳を怒りのままにデスクに叩きつけた。


「貴様の言う通りにしたんだぞ! タイミングも、戦力も! しかしこの有様だ、判っているのか!? 協商連合に敗北したばかりか領空侵犯までして、連中に報復の大義名分を与えてしまったんだぞ!?」


《落ち着けよジイさん。まァその、なんだ。おっ死んだお宅のところの部下共には哀悼の意を表する……まあそんな事はどうでもいい》


「お前ぇ……ッ!!」


《ああ、確かに言ったさ。それで俺の言う通りにそっちも動いてくれた。それは感謝している。でもよォ……お宅らちょっとばかし弱すぎやしねえか?》


「我らミストルテインを愚弄するつもりか!?」


《それ以外のニュアンスに聴こえたのかボケジジイ?》


「おのれ……薄汚い獣人の分際でよくも!」


《正直、もうちょっとばかり戦いを引き延ばしたり、各方面に延焼させるくらいは持ちこたえてくれると期待してたんだがねぇ……長年”老舗”という看板の下に胡坐をかいて、まともに周囲を顧みなかった老害レギオンに期待した俺が馬鹿だったよ、反省する》


「ふざけるなぁっ!! 貴様の甘言でいったいどれだけの同胞が死んだと思っているのだ、【ヘンリック】!?」


《俺の知ったこっちゃあねェ。てめえも近々地獄に落ちるんだ、あの世で負け犬のケツでも数えて点呼とってやがれ》


 ガチャ、と無慈悲にも切られる通話。


 目を見開き、唇をわなわなと震わせたスッラは、怒りのままに受話器を床へと叩きつけた。


「ヘンリックぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


 あの男の甘言に乗せられたのが全ての誤りだった。


 今ならば新興レギオンの協商連合を潰し、下手をすれば第1文明以前の超技術を手中に収める事ができると。


 もしそれが叶うならば、ミストルテインの地位は世界のパワーバランスの中で確固たるものになるであろう、と。


 約束された永遠の繁栄―――しかしそれは、遥か遠くに輝くばかりの理想、その残滓となってしまった。


 もう、どうしようもない。


 手元には何も―――。







 ドカン、という銃声が、失意の底に沈もうとしていた意識を絶望の淵へと叩き落す。


 ハッとしたスッラが顔を上げた頃には既に執務室のドアがぶち破られていた。吹き飛ぶドアの向こう、側近の団員が慌てたようにリボルバーを引き抜くが、親指が撃鉄を起こすよりも先に先ほどの大砲のような爆音が轟き、側近の上顎から上が消し飛んでいた。


 どちゃ、と脳の一部や神経の繋がった眼球が壁に叩きつけられる。


「……こんばんは、ミスター・スッラ」


 吹き飛んだ扉の向こうにいたのは、小柄なハクビシンの獣人。


 身長は150㎝ほど―――黒く、すらりとした軍服風の衣服に身を包んでいて、頭髪は黒いが前髪の一部が白く、眉毛と睫毛もまた白い。さながら闇と袂を別つ光の如しで、白い前髪の下から覗くネコ科の動物のような瞳もまた鋭い銀色だ。


 体格と容姿だけを見れば、こんなところでベネリM4などという物騒な代物を抱えているよりも、黄色い帽子とランドセルを身に着けて学校に通っている方が遥かに似合うであろう。


 あろうことかミストルテイン本部の執務室にカチコミをかけてきたのは、対立するレギオン”協商連合”の代表、ミカエル・パヴリチェンコその人であった。


「良い夜だね、今夜は」


「き、貴様……何故ここに……っ! け、警備兵! 何をしている、コイツを―――」


 吹き飛んだドアの外には、上顎から上を吹き飛ばされた無残な死体ばかりが転がっていた。


 散弾ではない、12ゲージのスラグ弾だ。


 散弾のようには拡散しない、大粒の弾丸。空気抵抗こそ大きく狙撃には向かないものの、至近距離における殺傷力は絶大だ。ボディアーマーも遮蔽物も意味を成さず、ヒグマのような大型の猛獣ですら狩猟できる代物である。


 そんな物騒な代物でヘッドショットを心掛けているのは、ひとえにミカエルの慈悲ゆえだ。


 ―――苦しめて殺さないように。


 せめて一思いに天に召されるように、というミカエルなりの慈悲。


 だからミカエルに殺された相手は、いずれも急所を的確に撃ち抜かれているのだ。彼女の性格をよく知る者は、その死体だけで誰がやったかを瞬時に見抜くという。


 しかしそんな事よりも、スッラは別の事に驚いていた。


(なぜ、このガキがここに!?)


 まだカッパドキアの戦いが終わってから30分も経っていない。それに情報では、ミカエルはあの総旗艦チェルノボーグで出撃し艦隊戦を勝利に導いた筈である。


 ならば、今目の前にいるこの女は何者か。


 まさか()()()()()2()()()()とでもいうのか。


 有り得ない、と首を振りながら後退るスッラ。


 しかしその背中が窓ガラスに押し付けられ、逃げ場を喪失するのはすぐの事だった。


「Було б чудово поспати під зірками цієї ночі(今夜は星の下で眠るといい)」


 ドカン、とベネリが吼えた。


 





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― 新着の感想 ―
なんかめんどくさそーなやつ出てきたなぁ...しかも兵器系の能力持ち。...いくらでも出せるかもしれんが破壊されたら結構な痛手になる機体なんだし一応護衛機くらいつけようぜ観測者さんよぉ... やっぱり…
アストレアは無事帰りましたか…故郷へ。電子化したとは言えクルーが皆笑っているあたり、ようやく6万年の悲願が叶いましたね。さて今度こそアルカディアでラウル君達もゆっくり出来ると良いんですが。 さてグロ…
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