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リュカなんか隠してる & 温泉へ行こう





夜の電脳タウン。


アパートの廊下はネオンの反射で、薄い紫に濡れていた。




鍵を回す音がして、ネフフルが帰宅する。




「ただいまー……っと」




室内は、静かすぎる。




いつもなら、リュカのゲーム音か、リュカの意味不明な独り言か、テレビの音が聴こえるのに




「……リュカ?」




返事がない。リュカがいない。


自分の部屋か?




ネフフルは靴を脱ぎながら眉をひそめた。


そして、すぐ気づく。


なんか変な匂いがする......




恐らく、リュカは自分の部屋にいる様だ




「……あの子自分の部屋に居んのか?珍しいな」


ネフフルは少し怪しさを感じる。




ネフフルは“観察モード”に入った。




リビングへ。




そして、床に――本がある。




"ママになる為の二十の方法"




その、微妙にわかりずらいタイトルにネフフルは言葉を失った。表紙もなんだか怪しい。中身は見ない、触ったのバレたらリュカが五月蠅そうだからだ




「これは......どういうことだ?え.....あの子.....え、何?」





ネフフルは高速で思考を巡らす。




「これは、えっち的な事か?あの子にそんな興味が?もしかして湧いてきたのか?」




「そうなら自室に籠るのも納得できる」




「いや、もしかしてもしかして既に彼氏的な奴がいて、なんか嫌な事があって悩んでるのかもしれない!クソ彼氏は絶対許さん!リュカをもて遊ぶならこの刀で冥府に招待してやる」





「あああ、駄目だ。詮索と決めつけはいけない.....テンパって独り言が多くなる」




「とにかく調べねば、リュカの為に.....てか、二十の方法ってなんだよ。方法なんて一つだ..............でも、沢山あるっちゃあるか........ふふ」




「私キモ!」




本の内容も見ず、破廉恥な話と思い込むネフフル




リュカの"そういう問題"に興味を抑えきれないネフフルだった




その瞬間。




ガサッ。




リュカの部屋のほうで、音がした。




ネフフルがスッと構える。




「……リュカちん?」




ゆっくりリュカが扉を開ける。




リュカがいる。




すごい上機嫌だ。心無しか目がトロンとしてる




腕にはひっかき傷




(うわああ!!!確定じゃん。男の楽しさ覚えてるじゃん!!!あの可愛いリュカが!!!くそーーー憎たらしい!!!しかもDV野郎か???許すまじ許すまじ許すまじ!!!)





「……リュカちん、何してたの?」




ネフフルが低い声で聞くと、リュカはトイレに向かいながらネフフルに言った。




「たのしいこと♡」




「え、なに?なになに?たのしいことってなに?」




「あたぼーに秘密」




「…………」




(クソ)




(あの子、今の私の心境知ってるな?


私の焦りの感情の上をダンスするように楽しんでやがる。


リア充の余裕か!へんたいめ)




リュカがトイレから出てくる




カニの様な横歩きで、ひょうきんにおちゃらけながら




「ちょきちょきちょき、通ります。ちょきちょき」




いつものどうでもいいギャグが余計に癇に障る




「リュカちん、あたしら相棒だよね?」




「何、いきなり?」




「答えて」




「あたぼーに」




今日、あたぼー多いいな





「じゃあさ、隠し事は無しだよね?なんでも話す仲間だよね?」




「そうだね。ネフフルってさ、たまに脱衣所の私の下着見てるでしょ?なんで」




(くそーーーーー!!!裏突かれた!!!)




「あああ.....ああ....それはね、リュカってそういうの疎いからどんなの着けてるのかなってお姉ちゃん的に心配で、人に笑われたら可哀想だしね、てへ」




「へぇお姉ちゃんてそういうのなんだ、ご近所さんとSNSで聞いてみよっと」




「やめてーーーーーー!!!お願い、リュカちん!いや、リュカ殿、悪かった!!!この通り」




「えっちへんたいマン、最低」




「もう許して.....」




「女の子が好きなの?」




「ちがーう!ホントにちがーうんだけど、嫌いではないかな......嫌いじゃない全然」




「まぁいいよ、今度から気を付けてね。えっちへんたいマン。私ちょっと買い物行ってくるから」




「はーーーい、行ってらっしゃいませご主人様♡」





(うわーーー完全に墓穴掘った。なんか私の完敗じゃん!最悪。ちょっと色々バレたし。むきーーーー!これも全部リュカのDV彼氏のせいだ。許すまじ許すまじ許すまじ)





(でも......あの子買い物とか全然行かないタイプの人間だろ?ニート並みにインドアだし.......怪しい。さらに怪しい)




ネフフルは今だと言わんばかりに、リュカの部屋に近付く。


リュカはステルスの術を使えるから油断大敵だ。


今も様子を伺って、ネフフルの失態を待ってる可能性もある




そう考えたネフフルはこれ以上の汚名は背負えないと、最大の精神集中と警戒を張り巡らせリュカの部屋の扉に手をかけた.........どんな戦いよりも慎重に100パーセントの作戦成功を賭けて。リュカを上回るのは至極至難の業なのだ





この先に答えがあるのかもしれない.........ドキドキする




見ちゃいけない物かも..........興奮してきた




(私キモ!)




思い切ってドアノブをグイッとひねる.......




そこには――




白い、もふもふ。




二つの丸い耳。




そして、きゅっと細い声。




「……ぷにゃ」




ネフフルの時間が止まった。






「…………」





(リュカねこかくしとるーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!ねこねこねこねこねこねこねこ!!!!!!!)




段ボール入った愛らしい子猫、横には汚い字で張り紙が




-------このねこさわらないでください---------




「なにこれ!?え、私あて?え!?リュカ字きたなっ!」




リュカが帰宅する




「ただいーま。にゃんいーま」




(くっそ、無茶苦茶速い。もはや今にゃんいーまって言ったな上機嫌に。)





「おかえ」




言うまでも無く、リュカは私の背後にべったり着き、耳元で囁く




「そこで何してるんですかネフフルさん?またえっちなことですか?」




「ちがーう、音がしたから。猫の音!」




とっさの嘘だ




「ねこのおと?」




「そうそう猫の音」




変に納得してくれたみたいだ




「てかさ、リュカちんどこで拾ってきたの?ダメじゃん!ここペット禁止って100回は言ったよね」




「イドイーヌで拾った」




「もう!いつの間に」




「依頼でイドイーヌ草原最近一緒に行ったじゃん?あの時見つけて目をつけてたやつだよ」




「何、目をつけてたって?後日拾いに行ったって事?」




「うん」




「えーーー.............もし、その親猫悲しんでたらどうすんだよ?リュカちんそれでいいの?」




「それはいや」




「だよね?前もこんなくだりして、結局動物のDVD沢山買ってあげたでしょ?


あの三匹のペンギンが一斉に横向くやつとか?大笑いしてたじゃん?」




「飽きた。リアルじゃない」




「生々しい......」




「でも、猫飼ったら追い出されるよ?当分お金無いし、今みたいにゆっくりゲームできないよ?いいの?」




「じゃあ、いらない」




「え、やば。心変わりやば、興味のカーストやば」




「じゃあ、明日一緒にイドイーヌへ返しに行こう?だから今日は思う存分可愛がっていいから」




「うん」




そういうと、二人はリュカが先程買ってきた猫の餌を子猫にあげて、一晩中可愛がったのであった




翌朝。




猫「にゃぁ」




ネフフルが言う




「……くそ、可愛い声出すな!!!!!!離れたくなくなるだろ!!!!えーーーん」




リュカが静かに諭す




「ネフフルダメ.......ペットは飼えない」




「くっそ、だれのせいだよーーーー」




とんだ勘違いをし、終始、振り回されるネフフルだった。






--------------------------------------------





さらに翌朝。


ネフフルとリュカは先日の依頼で報酬として獲得したバイクの前で腕組みしていた。




黒い神獣の様な威厳のある巨大なバイク。




「温泉行くか」




「うん、私が運転する」




「駄目だ、せっかくのバイクが大破する未来が見える」




「しかも、運転した事あるのかリュカ太郎?」




「無い、自転車も無い」




「なんで運転するっていった」




「なんとなく.....」




「.....」




「さて、行くか」




「あたぼーに」





目的地は電脳タウンから100km先の温泉地帯、ルナサン山




リュカがヘルメットを被りながら言う。




「ネフフル。これマシンジジイ臭い」




「我慢しろ、こういうのはジジイ臭い程、安全なんだ」




「どうりで、たまにネフフルジジイ臭い時ある。だから安心安全な相棒なんだ」




「どういうこと?加齢臭って言いたいのか?ぶつよ?さすがに」




「ごめんち」





バイクは走る。


電脳タウンが次第に後ろへ消えていく


代わりに、空と荒野が広くなる。




風が強い。


100kmの距離が、エンジン音と一緒に縮んでいく。




ネフフルが叫ぶ。




「ひゃっほー!無茶苦茶爽快だな。なんつ―滑らかな走りだ。そんで馬力がすごい、スピードが簡単にでる。こりゃ病みつきだ」




リュカも叫ぶ。


「ジェジェジェジェトコースタタタターーー」




ネフフルは笑う


「揺れすぎだろ!?笑かすな」




リュカが揺れながら言う


「バネ一個とれれれたかかからかななななああ?」





ネフフルは真顔になる


「は?」




それと同時にネフフルはパーツが全部バラバラになる悲劇的なイメージを浮かべる


「まじで怖いんだけど?」




リュカが言う


「うそそそそそのそーーー」




「バカくそ紛らわしい!!!」





バイクは新幹線の様に超特急で静かに道を進む。速度はそれをも超えるかもしれない




ネフフルは広大な荒野と凄まじい機動力の乗り物にすっかりご満悦で、日頃のストレスから解放されてる




ふと、ミラーを見る。リュカがえらく静かだ




後ろでごそごそしてる




よく考えれば、ネフフルに捕まってないのだ、いつのまにか抱き着いてない。




「おーいリュカどこにつかまって..............っておい!!!手に何持ってんの」




「んーーー?なんかトカゲみたいなん捕まえた。結構おっきいやつ」




それはカラフルでそこそこでかいイグアナの様な生き物だ




「おい!!!イグアナじゃん!何してんだよ!?てか、いつ拾ったんだよ!!」




「さっき、ちょっと寝そうだったけど。ギリギリ捕まえれた」




「色々やばいんですけど。」




「というか普通にイヤ!!!真後ろで知らない生き物触られるの嫌!!!捨てろ!」




「もったいねーのー、ぽーい」




「雑っ!」




リュカはイグアナを宙に投げた。イグアナはやけにカラフルでバイクより超特急で飛んで行った




「勿体ないってどんな価値観だよ。はぁ.....」


「そしてイグアナって飛べるんか.....」




「あの、トカゲ。動画配信で見たことある」




「へぇーーー」




「1000年に一度の希少種らしい。いくら出しても欲しいひととかいるんだって」




「へぇーーー......って"さき"に言え!!!!!!!あーーーもう!!!もうもうもう!!!!なんか大分損した気分!!!」




「まぁいいじゃん。どくあるし,、あぶないかもだし」




そう言ってリュカはネフフルの革ジャンに手を擦り付ける


「やーーーめろ!てめ!どくつけんなバカリュカ」




「はなみず」




「お大事に―ってばか、やめろ」





山道に入ると空気が変わる。


硫黄の匂い。白い湯煙。


熱が地面から立ち上がって、景色が揺れる。




「見えてきたぞリュカ……温泉街だ!」




「おう!なんか臭い。ネフフル臭い。前に乗ってるのにコクのやめて」




「だれが後ろに人がいる時コクか!」




「じゃあ、何この匂い」




「硫黄だよ?知らねーのか?温泉の成分」




「いよー ぽん そらしらなんだ。コカれたのかとおもうたりけり」




「何語?」




そんなこんなで、宿に着く。




番頭さんが言う




「お二人様ですねー」




ネフフルが答える




「はい、女二人で」




リュカも続けて


「ボクたち二人で!爆破戦隊バズレンジャー」




ネフフルは恥ずかしそうにリュカの口を押える


「お願いヤメロ。みんながみんなお前のネタ許してくれるかわからんぞ........お姉ちゃんまじ心配」




番頭さんは笑う


「可愛いコンビね」




リュカはひょうきんに頭を揺らしながら答える


「ありがとよ、美魔女ちゃん」




「もう、ホントごめんなさい。リュカ!たまにはまじで空気読め!!!」




「いいのよ、すごく楽しそうね うふふ」




脱衣所。




ネフフルが服を脱ぎながら、ちらっとリュカを見る。




リュカは――いつの間にか着替え終わり


タオルを胸の上まで引き上げ、背中を向けて、壁際をカニみたいに少しずつ横に移動する。




「……なにしてんの」




「えっちへんたいマンがいるから」




「ちーがーうって。色々誤解してるわあんた」


ネフフルは下着姿で自分の髪を軽くまとめながら、豊満な体をくねりと動かし悪びれずに言う。


「リュカちんの下着たまに見てるのは、お姉ちゃん的な優しさ!………たぶん」




「それ普通?」




ストレートに聞かれた。素直に答えるかと思うネフフル




「私にもわからん。たぶん普通じゃない」




「………」




リュカはタオルの端をきゅっ、と握り直す。


耳まで真っ赤だ。




ネフフルがニヤッとする。




「お? リュカ、照れてんの?」




「照れてない。ふざけんな」




「照れてる照れてる。ほら、耳。真っ赤」


ネフフルが一歩寄る。距離が縮む。




リュカは反射的に、さらに横にスス…と逃げる。


「近いー」




「ありゃ?ありゃりゃ?恥ずかしいでちゅか?バブイですねー」




「意味わかんない」




「そんなおこんなよーりゅかちん、冗談じゃんかー はは 謝罪の意を示して肩もみもみしましょうかー?」


ネフフルは後ろから手を伸ばすフリをする。




「やめて、ごつい手で」




「何、そのストレートに傷つく言葉。一応、嫁入り前の乙女なんですけど」




「ブタゴーレム」




「なんて子。口の悪さ。エゲツナイト」






湯船。


白い湯。湯煙。


露天から見える山。


風が肌を撫でる。




ネフフルが湯に肩まで沈み、




「はぁ……」と息を吐く。


「……染みるぅぅぅ」




リュカもゆっくり沈む。


湯面がふわ、と揺れて、湯煙が薄く流れる。




ネフフルは目だけ動かして、ちらっと横を見る。


リュカの首筋。濡れた髪が貼りついて、肌が白く光ってる。




「……お前さ」




「なに」




「最近、なんか……変わってない?」




「どこが」




ネフフルは一拍置いて、湯の中で足をもぞ、と動かす。


なんだかドキドキする




「……いや、言わない。言ないけど」




そういいつつ、ネフフルは自分の豊満な体を強調する




湯煙の向こうで、リュカがじっとネフフルを睨む


耳が赤い。




「知らなーい」




「知ってる顔だ、それ」




ネフフル、ニヤッ。




「ほら、ちょっと……確認させて。


湯煙で見えないし。事故だよ事故」




「事故の言い方おかしい」




「よいではないか、よいではないか〜」




ネフフルがじり、と距離を詰める。


湯の中で肩が触れる




リュカは、ふっと目を逸らして。




「……いいよ」




ネフフルの顔が固まる。




「……え、ガチで!? いいの!? ちょ、え、


え、私いま心の準備……」




鼻息が荒くなるネフフル




「はい」




湯煙がすっと割れる。




そこには、湯に浮かぶ――


水で膨らむ恐竜のゴムボールが、ぷか……。




ネフフルが言う




「確かに変わってるけど……家から持って来たんだ……まっそんなこったと思ったよ」




リュカ


「熱い。あがる」




そう言うと、湯船からすっと立つリュカだった。


湯が肩から背中を伝って落ちる。




ネフフルは思わず釘付けになった――




「……いや、結局大胆.....」









風呂上がり、瓶牛乳。




リュカがごくごく飲んで言う。




「グレイトモーモー」




ネフフルが尋ねる




「でた……それなんなの?いつも言うけど」




リュカが言う


「おーーー!きたぜ!って表現」




ネフフル


「なるほど!確かに」




「……」




リュカは真顔で続ける。


「なんか頭かゆくなってきた」




「速っ!史上最速じゃん。ちゃんと洗った」




「いいや」




「あんた不思議だなホント」




「結構いわれるかも。あーし的に普通なんだけど」




「いきなりギャルじゃん」




「チョベリバー」




「いつのギャルだよ」




「ジャベリンー」




「槍的な武器だろ」




「シュナウザー」




「可愛い犬だ」




「献立ー」




「どんだけーみたいにいうな」




「楽しいな」




「うん」




「私といて楽しいか?リュカ」




「今世紀最大」




「んもーーーこの子可愛すぎ!一生は・な・さ・な・い!!!んまんまんまっ」




「ちゅーすんなネフフル、もっかいお風呂入る」




「菌みたいに言わないでーリュカちん」




「お返しだ ちゅ」




唇にチューされるネフフル




「あっえ!!!......」




「まいふぁーすとちゅー」




「かぁーーー!!!」




ネフフルは顔を真っ赤にし、変な声を出した




---------------------------------------------






帰りの夜道。


バイクのライトが闇を切る。




ネフフル


「……最高だったな、また来ような」




リュカが返す


「うん」




そこでネフフルが、少しだけ声を落とす。


「……リュカ、私があんたを守るからな」




バイクの轟音で上手くリュカに届かない


「ん?聞こえない もっかい」




「なんでもないよ」

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