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電脳タウン散歩──金の匂いはしない

電脳タウンのネオンは、夜になると派手に輝く


街は派手で賑やかなのに二人の財布は軽い。




リュカ・ネザとネフフル・ミーナは、夜の電脳タウン――安い店と怪しい店が混ざった闇市通りを歩いていた。




二人とも、腹ペコだ。




「ねぇ、リュカー?ねぇねぇねぇ?」




ネフフルは、うなだれるようにリュカに話しかける




「何?何?何?今、時間帯イベントだから忙しい」


リュカは最近ご執心のアプリゲームに夢中で前も見ず歩く




「私、無茶苦茶お腹空いてるの、特に中華の口になっちゃってさー、リュカの白い肌も麻婆豆腐の豆腐に見えるわけ」




「食べないでね、食べたら叩くからね。」




「そうでしょ?だから早く食べたいんだけどね、さっき通った中華屋とか特に」




「なんで入らなかったの?」




「そこなのよ、お金が一人分しかない!!!だから安い店をゾンビの様に彷徨ってるの」


ネフフル・ミーナはお腹を抑えてうずくまりだす。




「もう、ネフフルは子供なんだから。簡単だよ。食べよ?じゃんけんで勝った方が」


めんどくさそうにリュカが言い捨てる




「えーーー、あんたはそれをできるの?大切な相棒が飢餓に陥ってる前で、熱々の中華食べれるの?」




「んーーー場合による」




「どんな場合よ、私は少なくとも人間的な理性は捨てれないのよ。てかこうなったの誰のせいよ 泣 あんたがアプリゲーに家賃注ぎ込んだからでしょ?」




「譲れない戦いがあるの」




「でも、全部カス引きって自分で言って怒ってたじゃん」




「.......」


リュカはちょっとしょんぼりしだす




「ごめんね、ネフフル......」




「あーーー責めてない、責めてない。てかこのやりとりもう100回はしてるわ」




「謝られたら全部許すチョロいの辞めたい.....トホホ」




「そこがネフフルのいいところ♡」


ペロっと舌を出してリュカが言う




「あーもうずるい!!!」


リュカはそのキュートで人形みたいな見た目と虹色のキラキラの瞳を駆使して、今日もあざとくネフフルの説教をかわす。






電脳タウンの夜は、“見世物”が多い。


・路上に並ぶジャンク屋台


・違法スレスレの改造屋


・ドローンが客引きしてくる謎のバー


・AI占いと、怪しすぎる祈祷アプリの看板


・そして、異常に安い「一発で稼げる」広告




ネフフルはその看板を見るたび、眉間にシワを寄せた。


「……ねえリュカ。こういう“稼げる系”ってさ」




「うん」




「ホントに稼げるのかな?」




「うん」




「絶対聞いてないでしょ?あんた、もはやゲボ踏んでるの気づいてないし」




「え゛っ!!!」




普段は無表情なリュカだが目を見開き盛大に驚いてバク中する




「はっははっはは!!!」


その姿を見てネフフルは爆笑する




「ごめんごめん、嘘!!!何今の?クール天然キャラ崩壊じゃん!!!うける!」




「んーーー!!!」




頬を赤く染めて、むすーとむくれあがり、ネフフルの肩を拳で突くリュカ




「痛い痛い!!!おまわりさーん、ここにゲボジャンプ選手権の金メダルがいまーす」




さらにリュカは怒りだし、ネフフルをポカポカ連打で叩く




「あーーーもうやめ、余計に腹減ってきた」




「ネフフルが変なこと言うから」




「バク中してお腹すいちゃった」




「綺麗なバク中だったね」




「ありがと」




「何このやり取り」




「うん」




リュカは屋台の串を見つめた。


値札は“290D”。二人の所持金は“290D”。(電脳タウンのお金はデジタルで、貨幣は電脳のD)




「食べたい」




「だめ」




「食べたい」




「量少ないからダメよ」




「食べたい」




「だーめ!!!!」




ネフフルは財布を握りしめる。


「今この290Dは、未来の私たちの希望なの」




リュカが遠くを見つめて言う


「290円で私の希望が買えるなら安い」




「私って......あんたまだ独占の企み捨ててないな?悪者め」




「ふひひ」




「腹が満たされたら、心が静かになる」




「……それはそうだけど」




ネフフルの声が弱くなる。




リュカが静かに言った。


「じゃあ、安い野菜沢山買って家で食べよ。私が作る」




「ホント!!?待ってました、リュカは雰囲気に似合わず料理上手いよね、いや、チャイナドレスだから似合ってるか」


「私、リュカの料理大好き。全然作ってくれないけど」




「忙しいもん」


リュカは少し恥ずかしそうにしながら、スマホゲームの指を慌ただしく動かす




「とりあえずハイパーまで歩くか?」(この世界のスーパーマーケット)




「うん」





二人はさらに歩く。


ネオンが濃くなる。人も増える。


電脳タウンの中心に近づくほど、情報が騒がしくなる。




その時、頭上の巨大ビジョンに広告が流れた。




「あなたの感情を買い取ります」


「“感情ログ”を提出して報酬GET!」


「今なら初回ボーナス!」




ネフフルが足を止める。




「…………なにこれ」


リュカが反応する




「感情ログ」




「いや単語の意味じゃなくて!!」




ネフフルはビジョンを睨む。




「これ、絶対やばいやつでしょ。提出したら私の恋愛観とか性癖とか丸裸にされて、広告にされるやつでしょ」




「ネフフルの性癖、広告向き」




「やめろ!!!!!」




リュカは無表情で首をかしげる。




「でも、お金になる」




「お金になるけど、“何かが”が減るやつよ!」




「なにもは減らないよ」




リュカはぽかーんとした顔で言う




「減るのよ!!そういうのは減るの!!リュカはおこちゃまだから何も知らないだけ」




「あんたキスしたことも無いでしょ」




「ない、きもちわるい」




「ほらね」




「じゃあ、ネフフルはあるの?」




「ふんっ.......知らない!」


恥ずかしそうにそっぽをむくネフフル




「チュッ♡」


リュカは突然ネフフルの頬にキスした




「あああああんた!!いきなり何すんの!!!」


ネフフルは心底恥ずかしそうに口から煙でも吹かんばかりに照れてる




「こりゃしたことないね」




「うるさい!!!!!」




「ネフフルとならきもちわるくないかも?かもうまそう。だから初めては........」




「ああああ!もういい!!!はやくいくわよ」


リュカをグイッと掴み進もうとするネフフル




「ねふふるかわいい」




「もう、ホントこの子ったら」




リュカはネフフルの大きな胸を見て言う


「なんか豚足食べたい」




「私の胸見ていうな!どういう思考回路!」




「ふふ」




二人でコントを続けているうちに路地に入る。




路地に入ると、空気が一段だけ“生活”に近づいた。




ネオンは派手なのに、道は妙に現実的で、ゴミはちゃんと分別されてる。


ただし分別の種類が多い。




「可燃」


「不燃」


「呪物」


「原因不明」




ネフフルが指差す。




「最後こわ!!!!」




リュカは無表情で言う。


「前に私も出したよ、第三水曜日があれを出す日」




「うちらの家に原因不明あってたまるか!!!」




二人が歩く道の向こうから、“異形”が来た。


見た目は、スーツ姿のサラリーマン。


ただし首が無い。代わりに胸に顔がある。


しかも目が四つ。まばたきが忙しい。




胸顔サラリーマンは普通にスマホを見ながら歩いてて、すれ違いざまに会釈した。


「おつかれさまでーす」




ネフフルも反射で会釈し返す。


「おつかれさまで……って、今の何!?」




リュカは淡々と言う


「たぶん、営業マン」




「営業って何の!?胸で!?」




「胸で」




「胸で営業するな!!!私の領域に踏み込むな!!」




さらに先では、信号待ちの列に“透明な犬”がいた。


犬の形なのに、輪郭だけが薄く発光していて、中身は空洞。


首輪のタグに書いてある。




《迷子:返却先 “異界”》




リュカがしゃがんで覗き込む。


「かわいい……」


「触ったら、冷たい」




「なんでも触るなっ!!後でちゃんと手を洗えよ!」




その瞬間、透明犬がふいっと消えて、次の瞬間――


ネフフルの背後に出た。




「わっ!?」


耳元で「セクシーでんな…」みたいな声がして、ネフフルは飛び上がる。


「ちょっと!!!喋った!!今の聞いた?今の無理!!!可愛さの皮かぶったオッサン犬よ!オッサン」




リュカは無表情で頷く。


「知ってた」




「教えろ!」




ネフフルは生理的に無理みたいな顔して言う


「異界犬、距離感がバグってるわー」




リュカはケタケタと笑い異界犬と戯れてる




「あんたのなんとでも仲良くする精神、尊敬するよまじで」




「ゲボは嫌い」




「当たり前だ」




路地の出口に近づくと、遠くに“ハイパーマーケット”の看板が見えた。




巨大な建物。


巨大な駐車場。


巨大な広告。




《本日特売:野菜 “現世産”が安い》


《異界産野菜は別館へ》




ネフフルが泣きそうな顔になる。


「現世産ってなに!?」




リュカが言う。


「異界産は、たまに喋ったりする」




「喋る野菜は嫌!!!!!」




「でも栄養はあるよ、歯ごたえもいい」




「栄養より平穏が欲しい!!」




そのとき、前方の歩道を“異形の家族連れ”が横切った。


お父さん:上半身が蜂、下半身が人間。


お母さん:顔が二つ(左右に仲良く並んでる)。


子ども:手がやたら長い。風船を持ってるが、その風船がなぜか泣いてる。




ネフフルが固まる。




「……もう突っ込みつかれた、電脳タウンの夜はなかなか強烈だな。夜の異形市街は近寄るなって聞いてたけど、なんかわかったわ」




リュカが一瞬だけ目を細める。


「あの風船、かわいい」




「まじでか」




子どもが風船を引っ張るたびに、風船が「やだぁ…」って泣く。


あまりに悲壮に泣くから、ネフフルは耐えきれず叫ぶ。


「ねえ!!!その風船、ちゃんと大事にしてあげて!!!」




家族連れの母(顔A)が答える。


「大丈夫です、これ、月額です」




母(顔B)が続ける。


「泣くほど、ポイントが貯まります」




ネフフルが震える。


「電脳タウン、倫理が終わってる!!!!」




リュカは小声で言う。


「うける」




「うけるな!!!!」




二人がハイパーマーケットに向かって歩いていると、背後から「ピロリン♪」という音がした。




ネフフルのデバイスに異形市街から通知。


《あなたの歩数、今日すでに 9,999歩》


《今なら“健康税”が発生します》


《回避するには:走ってください》




ネフフルが叫ぶ。




「はぁ!?健康税!?健康で税取るの!?」




リュカが無表情で言う。


「電脳タウンは、健康を許さない」




「病んでる街か!!!!」




「走る?」


リュカが言う




「走らない!!!!!」




通知がさらに来る。




《回避できません》


《代替案:サプリ購入》




「知らんわ!!!詐欺通知か!!!」






ようやくハイパーマーケットの入口へ。


自動ドアの上に、でかいスキャナーがあって、入店者を読み取ってる。




《武器:持ち込みOK》


《呪物:レジ袋に入れてください》


《強すぎる感情:入口で預けてください》




ネフフルが星喰を背負い直す。




「武器OKは優しいのに、感情がダメなの何……」




リュカが無表情で言う。


「店内で感情が暴れると、万引きが増える」




「理屈が現実的!!!!」




入った瞬間、空気が変わった。




冷房。


蛍光ネオン。


商品棚の整然さ。


そして、客層の混沌。




普通の主婦。


普通の学生。


普通の異形。


普通じゃない異形(普通の顔で普通に買い物してる)。




ネフフルはカゴを取って、気合を入れる。


「よし。安い野菜たんまり手に入れるぞリュカ!」




リュカは敬礼の様にして言う


「イエッサ」





野菜コーナーへ行くと、ポップが賑やかだった。




《にんじん:たぶん目にいい(知らんけど)》


《玉ねぎ:バカ泣ける(確定)》


《キャベツ:現世のキャベツ》


《異界キャベツ:別館》




ネフフルがキャベツを手に取って、ため息。


「現世のキャベツって、普通のキャベツじゃん」




リュカが言う。


「電脳タウンでは普通が高級」




「そうなんだよな、ここじゃ普通が難しい。まじで普通の生活したい」




次に玉ねぎを取ろうとしたら、隣の棚に“玉ねぎっぽい球体”が並んでいる。




ラベル。




《涙玉:切らなくても泣けます すごいやつがすぐ目に入ってきますので》




ネフフルが即座に戻す。


「いらん!!!」




リュカがそれを興味深そうに見てる。この子は変なのが物凄く好きなのだ




ネフフルはトマトを掴んでカゴに入れる。


「よし、トマト。あと、もやし。安さの神」





リュカは無表情で、謎の野菜を手に取る。


ベニーと書いてる




ネフフルが見て凍る。




「……それ、何?」




リュカが頷く。


「原因不明」




ネフフルが顔を赤くする。


「でた、それか!!!」




リュカが真顔で言う。


「これホント危ないよ」




「危ないもん売んなよな」




「でも好き」




「……あんたが一番やばい!!!」




レジへ。




レジ担当は、普通の店員――に見えるけど、手が六本ある。


しかもスキャンが速すぎる。バイトリーダーの名札を付けてる




ピッピッピッピッピッピッピッピッ!!!




ネフフルが目を丸くする。


「速っ……!」




店員がにこやかに言った。


「ありがとうございます。袋は現世袋と異界袋、どちらにしますか?」




ネフフルが即答。


「現世袋で!!!」




リュカが無表情で言う。


「腕多いですね」




「いったらあかん!!!!!」


ネフフルはリュカの口をすぐに押さえる




店員はもはや自分の世界に入り込んで聞いてない


「この店よくこれで成り立ってんなー」




支払い画面に合計が出る。




《会計:290D》




ネフフルがガッツポーズ。


「勝った!!!ギリ!!!」




リュカが言う。


「ギリだね」




ネフフルは胸を張って、290Dをピッと払う。




……と思ったら、レジが鳴った。




《手数料:1D》


《合計:290D》




ネフフルが固まる。


「……手数料?」




店員が笑顔で言う。


「チップ代です」




ネフフルが叫ぶ。




「ぬああああああ!!!!!!」




リュカはレジの下をのぞきそこから現金の1Dを拾い店員に渡す


「ありがとうございます、現金のDは久しぶりです」




「いや、お前らこれでいいんか!!!!!」




店員とリュカがネフフルに何を言ってるの?と言うような顔で見る


「もういいわ、疲れた」




外に出ると、ネオンがまたやかましくて、袋の中の野菜だけが妙に現実だった。




ネフフルは袋を抱いて言う。


「……まあなんとか........なんとかだな」




リュカが頷く。


「危機は去った」




「だな」




「あの人前は、新人だった」




「よくリーダーなったな」




「あの人優しい」




「ま、.....そーだな」





帰り道、二人は現世袋をぶら下げて歩いた。




ネオンの外れに入ると、人も異形も減って、街の音が遠のく。


遠くの客引きドローンの歌も、もう聞こえない。





「……眠い」




リュカが言う。




「当たり前よ。今日はなんか色々起こり過ぎだ」




「だね....でも楽しかった」




「まぁな」




しばらく無言で歩く。





ネフフルが小さく言った。




「リュカといると結構たのしいぜ」




「けっこう?」




リュカは、そんなけ?と言わんばかりに聞き返す




「めちゃくちゃ」




「うん♡」




二人は並んだまま、暗い道をそのまま歩いていった。




そして家に到着する。




後は、念願のご飯を沢山食べて、お風呂に入って、ぐっする眠るだけだ




二人の電脳タウンの日常はこんな風に過ぎていくのであった

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