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双星の継承者  作者: まさな
■第四章 昇格試験 ― Trial of the Dawn ―
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●幕間 蒼滅の魔導師

 階段の踊り場から、ヒュームは受験者たちの様子を見下ろしていた。


「なあ、ヒューム。さすがにガーゴイルについて、あいつらに何も教えないってのはマズいんじゃないか?」


 試験官の相方が心配そうに問う。

 

 ガーゴイルは厄介だ。石像の魔物だが、非常に高い防御力を誇り、魔法もごく限られたものしか効かない。Bランク冒険者でも手こずるのだから、Cランク以下の冒険者にとっては、逃げるか、やり過ごすしか手段はないだろう。


「いや、この街周辺の情報を集めた者なら知っているだろうし、むしろ知らない方が試験になる。強敵が出てきたとき、どう対応するか、それは生存率にも直結するからな」


「まあ、言いたいことはわかるぜ。だが、ヒューム、オレらだってDランクの駆け出しの頃は、そう上手くは対応できなかっただろうが。オレはちょっくら下に降りて様子を見てくる」


「好きにしろ」


 もちろん、ヒュームも危険な状況になればすぐに駆けつけて助けるつもりではいた。


 ――だが、予想もしていない事態が起きた。


 ハルトがガーゴイルに向けて黒い”何か”を向けた次の瞬間、轟音が響き渡った。石の頭部が崩れ落ち、空気が一瞬、凍りついた。


「なにっ!?」


 今、何をやった?

 ヒュームは戦慄した。矢ではないだろう。ハルトは弓も持っていない。だが、離れた場所から攻撃したのは明白だった。


 戻ってきた相方も、慌てふためきながら身振り手振りでさっきのことを伝えにきたのがわかったが、言葉がすぐには出てこない様子。


「落ち着け。飛び道具か?」


「違うと思う。いや、青い光が、ハルトの持っていた何かから出たのは見たんだ」


「ボウガンじゃないのか」


「はっ、ボウガンでガーゴイルの頭が()()()()するもんか」


「溶けた?」


「おい、なんだよ、ヒューム、お前、ちゃんと見てなかったのか? ガーゴイルの頭は最初に真ん中が溶岩みたいに溶けて、それから爆発したんだ。そう、爆裂だ。ありゃあ、きっと魔法だな」


 詠唱なしで? そんな馬鹿な。ヒュームも魔法使いではないから詳しくはないが、あれだけ強力な呪文がすぐに完成するとはとても思えなかった。


 その後、ハルトの動きにヒュームは注目した。


「枝分かれした道で迷いがない。道を覚えていて、歩数も数えている感じだな。やけに慎重だが、仲間への指示は的確だ」


「あれで昨日登録のルーキーだって? そりゃ何かの間違いだぜ、ヒューム。あいつはきちんとした指導を受けてる。それもベテランの指導をな」


「ああ、それは間違いないだろう。動きに無駄が一切無い。顔は甘ちゃんそのものなんだが、妙なヤツだぜ」


「それにしても……あの青い光はなんなんだ? ヒューム、お前はあんなの見たことあるか? ガーゴイルを魔法で一撃だなんて、Aランクでもそうそういねえだろ」


「ああ、ないな。あれは魔導具かもしれんが……いや、Fランクがあんな凄い魔導具を持っているはずもないか。しかも完璧に使いこなしてやがる。さしずめ、蒼滅の射手――いや、『蒼滅の魔導師』ってところだな」


「”滅”かよ、物騒な二つ名だ。今まで実力のあるヤツは掃いて捨てるほど見てきたが、”勝てない”じゃなくて、”生き残れない”なんて思わせたのはあの青い光が初めてだぜ」


「同感だ」


 ヒュームは短くうなずき、再び階下を見やった。


 赤子石の四つ目を回収しに行くハルト達を見て、ヒュームはハルトが事前説明を良く聞いていなかったのかと勘違いした。


「ハルト、一つで充分だぞ。それに、お前はもう実力を見せた。充分合格だ」


「いや、もう少しモンスターやダンジョンの感覚をつかんでおきたいんだ。これは良い訓練になる」


 訓練と来たか。これにはベテランのヒュームも絶句せざるを得ない。


「はっ、驚いたな。ランク試験を練習台代わりたぁ、とんだ大物だぜ」


 相方の試験官が肩をすくめ笑ってみせる。


「ああ、あいつはとっくにランクBレベルの勘を持っているな。いやそれ以上か。オレは受験者を選別することだけを考えていた。だが、ヤツは実力を引き上げ、成長させることも考えていた。なんだよ、そりゃあ。そんなのはギルマスやもっと上の役職が考えるようなことだぜ」


 久々に味わう、この鮮烈で燃え上がる感覚の正体は何だ? ヒュームはいぶかった。それは、まるで胸の奥で燻っていた火種に、新鮮な空気が吹き込まれたかのようだった。

 あるいは――Bランクの“壁”にぶつかって立ち止まっていた自分が、ようやく思い出したのかもしれない。

 強さを求める飽くなき渇きと、未知に挑む喜び。

 そうか、オレはまだ、上の生き様を目指していたんだ。

 ハルトが見せたのは力だけじゃない。あれは、生き様そのものの輝きだった。

 この年になって、憧れるなんてな――ヒュームは苦笑しながらも、不敵に口元をつり上げた。

 それは、もう一度“冒険者”に戻る男の顔だった。

作者のやる気さんが、一時期あれだけ熱意があったのに、消えてしまいました。すまぬ。

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