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双星の継承者  作者: まさな
■第四章 昇格試験 ― Trial of the Dawn ―
37/38

●第七話 終わりの先にあるもの

 『赤子石』は小さいので戦闘スーツのパワーがあれば、さほど運ぶのは難しくない。だが、片手がどうしても塞がるし、万一これを落っことせば即失格だ。


 もっとも気をつけるべきところは、そこだ。


 それ以外はもう気にしない。

 

 運ぶ時間、運ぶ手間、運ぶ距離、運ぶ体力――もちろんそれは少ないに越したことはない。だが、それらをすべて同時にやろうとすると難易度が跳ね上がってしまう。人間、あれもこれも注意しようとすると注意散漫になるからな。


「よう、ハルト、お前も『赤子石』を見つけたようだな」


 左腕に石を抱きかかえ、右手に剣を持ったリックがちょうど通りかかった。だが、片手だと危なっかしいな。俺は両手でしっかり抱え込んでいる。


「なんだぁ? ハルト、お前らのパーティー、一人分ずつ運ぶつもりなのか? そんなまどろっこしいことしないで、三人で別れて探した方が早いだろうに」


「確かにな。だが、俺たちは慎重なんだ」


「はっ、そうかい。じゃ、お先! 一番乗りでオレの実力をみんなに見せつけてやるぜ!」


 ウインクまでして、さらに加速して走り出したリックだったが――突如、横の通路から別の冒険者が転がり出てきた。


「うおっ、アブねっ!」


「た、助けてくれ!」


 しかもそいつはガーゴイルまで連れてきていた。あー、あるあるだなぁ、ネトゲで強敵をトレインしてくる迷惑プレイヤー。


「うおおお!?」


 リックにガーゴイルが飛びかかってきたので、慌てて彼は剣で爪を防いだ。が、その拍子に『赤子石』が手からすり抜けて落ちる。


「しまっ」


「クローディア!」


「任せて!」


 彼女が全速力で俺の横を駆け抜けると、床すれすれのところでスライディングキャッチ成功。惚れ惚れするほどの運動能力の高さだ。

 俺は慎重に狙いを付けガーゴイルの頭をパルスレーザーガンで撃ち抜いた。


「はい、リック。一つ貸しよ」


「おお、返してくれるのかよ! ありがとな、クローディア。ハルトも」


「おい! ハルト、それじゃ試験になんねえだろが」


 頭上からヒュームの怒声が響く。


「いや、問題ない。今のリックはなかなか際どかったが、俺とクローディアが邪魔しただけで”失格”になったわけじゃない。冒険者同士の協力も有りだといったのは、試験官のアンタだ、ヒューム」


「そうだが、この試験は一人一人の実力を見るもので――」


「それも問題ないさ。今のでリックは自分の不注意な行動が何を招くかを知った。だから、冒険者としてもう同じ失敗はしない、そうだな、リック?」


「お、おうっ! 二度と同じミスはしねえぜ!」


「ヒューム、アンタなら、昔の実力より、今の実力を――いや、将来の実力まで見据えられるはずだ」


「馬鹿言え、お前らがどこまで伸びるかなんてオレにわかるわけないだろうが。まあいい、今のはノーカンにしておいてやる、命拾いしたな、リック」


「おう!」


 肩をすくめた試験官二人が顔を見合わせて笑うが、悪くない雰囲気だ。あれで不合格ってことはないだろう。


 無事、階段の踊り場にたどり着いた。ここでヒュームの足もとに俺とリックが『赤子石』を慎重に置く。もう一人、自慢げにニヤついている小柄な受験者が一番乗りを果たしたようだが、たった、一人だけか。


「よし、戻ろう」


「ハルト、オレも手伝うぜ」


「ああ、助かる」


 ガーゴイルの破壊は怒られなかったので、見つけ次第、俺はパルスレーザーガンで撃ち抜いた。


「『赤子石』を見つけました!」


「よし、じゃ、フィーナの分を持って帰ろう」


 それから――俺たちは合計十二個、地図になかった隠し石像も見つけて、全員分を協力して持ち帰った。砂時計はまだ半分以上が残っていた。


「よーし、試験はそれまでだ。いいだろう。全員、合格とする」


「「「やったー!」」」


 ガッツポーズで喜ぶ者、ハイタッチでお互いの健闘をたたえ合う者、嬉し泣きで顔を押さえる者――確かに皆は自分の実力を証明してみせたのだ。


 だが、俺は少し離れた場所でその光景を眺めていた。

 協力すれば、こんなにも早く終わる。だが、次はそうはいかないだろう。冒険者の仕事に“全員合格”なんてものはない。


「なあ、ハルト。どうした、浮かない顔して」

「いや、ちょっとな……次からが本番だと思ってさ」

「ふふ、そうね。Cランクなんて、ただの通過点よ」


 そう言ってクローディアが笑う。その横に転がっている動かないままの不気味な石像。俺はその呪いの秘密が、ずっと気になっていた。あの異常な重さの変化……それは重力制御なのでは?


 この未開惑星には、きっと”何か”がまだ眠っている――。

 そんな予感がするのだった。

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