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双星の継承者  作者: まさな
■第四章 昇格試験 ― Trial of the Dawn ―
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●第五話 罠

「ちょっと、ハルト、何してるの」


「ああ、急ぐ必要は無いよ、クローディア。ヒューム、時間制限は?」


「そうだな。オレもあまりのんびりやりたくはない。二時間。昼飯の時間が来たら終わりだ。ここに砂時計を置いておく。この砂が下に落ちきったら、試験はその時点で終了だ」


 俺に言われてから砂時計を取り出したヒュームは、あまり時間は気にしていないようだ。おそらく、一時間もあれば全員の見極めが終わると踏んでいるのだろう。


 クローディアもそれを聞いて、少し落ち着いた。


「じゃ、クローディア、そろそろ俺たちも行こうか。別にこの試験は一番乗りを取る必要は無いぞ」


「どうして? そのほうが確実でしょ」


「だが、一番乗りしか合格しないやり方では、その試験の時々で合格する冒険者の能力に差がつきすぎてしまう」


「そっか、受験生が全員実力者ぞろいの時だと、不合格者がもったいないし、その逆、全員実力不足の時もありえるのね」


「ああ。だから、おそらく試験官ヒュームの考える基準に実力が達しなければ、最初に石像を持ち帰ったとしても不合格、場合によっては全員不合格もあり得るだろう」


 ”一体ここまで持ち帰ってくれば、基本的に合格”であって、絶対合格するというわけではないのだ。


「なるほど。ええ、それなら、一番乗りでなくても大丈夫そう」


「いやっ、そんなのわかんねえだろ、くそっ、前が見えねえ。いてっ!」


「リック、無理に進もうとするな。時間が経てば、視界も回復する」


「その時間がもったいねえって」


「いいや、怪我をして石像を持ち帰れなくなったら、その時点で不合格が確定だぞ。早いも遅いも関係ない」


「ああ、そうだな。わかったよ、ハルト」


 情報が不確定な中ではどうしても焦りがちだ。


「ほほう、ハルト、お前は随分と落ち着いているな。Fランクの初心者とはとても思えん」


 階段からこちらを見下ろしているヒュームが言う。

 こちとらVRシミュレーションとゲームで鍛えまくっているからな。


「それに、リック。この試験は後発組が有利だ。初見殺しの罠を見抜ける」


「初見殺し? なんだそりゃあ」


「それは――」


 俺が説明してやろうとしたとき、右の通路の先から、男の悲鳴が上がった。

 

「ひいい、なんだこいつはッ! 石像が動くぞ!」


 その場にいた全員が警戒態勢を取る。次の瞬間、通路に動く石像が現れた。


 だが、それはさっき見た『赤子石』などではない。背中にコウモリのような翼の生えた灰色の魔物だった。


「ガーゴイルか!」


 ゲームなどでよく見かける動く石像のモンスターだ。


「クロ、材質を解析しろ」


「石灰岩と石英が主成分だけど、未知の成分がある。たぶん、硬いね」


「だろうな。おい、剣では無理だ、下がって逃げろ」


「くそっ」


 さきほどから冒険者は剣を振り下ろして果敢に攻撃していたが、ポッキリと剣が折れてしまった。


「ハルト、あいつの弱点は?」


「さぁな。だが、石が主成分なら、衝撃には弱い」


「わかった」


 クローディアが入れ替わりに駆け込む。それを見てフィーナが警告した。


「クローディアさん! 危険です。ガーゴイルはギルド推奨でBランクの魔物ですよ!」


「なら余裕ね。この戦闘スーツさえあれば、『凶狼のヴォルク』程度のヤツなら!」


 ガーゴイルの爪を素早く躱して懐に飛び込んだ彼女が、体をくるりと反転させ、背負い投げ(ショルダースロー)で投げようとした。

 タイミングは完璧。だが、動かない?


「くっ、重い!」


 クローディアの動きが完全に止まり、ガーゴイルの爪がそこにゆっくりと延びる。こうなると彼女は囚われも同然、危険な状況に陥っていた。まったく……ちょっとクローディアさん、君、異世界を舐めすぎじゃないですかね。

 俺は仕方なくホルスターからパルスレーザーガンを抜き、照準は戦闘スーツに任せてオートで撃つ。


 青白い光線がガーゴイルの頭を貫くと、そこがオレンジ色に溶解し、次の瞬間、ガーゴイルの頭が砕け散った。


「ええ? す、凄い。倒せるなんて……」

「な、なんだ今のは」

「おいおい、ガーゴイルが出るのかよ。聞いてねえぞ……しかもハルトのヤツ、倒せるのかよ」


 フィーナや現地冒険者達が驚いているが、ま、見られても仕方ないな。


「大丈夫か、クローディア」


 倒れたままの彼女に手を出し出す。


「ええ、ありがとう。もう少し、戦わせて欲しかったけれど……少し油断した」


 床に落ちたガーゴイルの胴体の部分はもう動かない。なるほど、弱点は頭かな。


「じゃ、俺たちはスタート地点から一番遠い『赤子石』を狙うぞ。そのほうが被らなくて確実だ。ガーゴイルは避ける。おそらく近づかない限り、動いてこないはずだ」


「了解。でも、動かないって、なぜそんなことがわかるの、ハルト」


「んー、ゲームでありがちなパターンだから?」


「まるで根拠がないわね……」


 まったくその通りだが、このガーゴイルという魔法生物は、あるいは銀河同盟の文明の産物かもしれない。そんな気がしてきた。


「だとすれば、俺のゲーム知識が活かせるか?」


「非推奨だよ、ハルト。思い込みで決めつけると、さっきのクローディアみたいな致命的な失敗になりかねない」


「そうだな。引き続き、現地の情報を集めよう」


 試験が終わるまでに、どこまで通用するか確かめてやる。

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