●第六話 情報屋
「じゃ、まずは情報屋を探してみるか」
王都や領主についての情報が欲しい。『凶狼のヴォルク』の言いなりになっているようで少し癪だが、この街で一目置かれるトップランクの冒険者の言ったことは、無視できない。良い情報が手に入らなければ、他を当たるまでだ。
「でも、そんな看板があるの?」
クローディアがフィーナを見るが。
「いいえ、私も情報屋の看板は知りません」
「何言ってる、情報屋はああやってむしろの上に座っているのがB級映画の鉄板じゃないか。彼に聞いていよう」
先ほどから男はチラリチラリとこちらを見て、接触を待っている雰囲気だしな。
「へへ、旦那、何の情報が聞きたいんで?」
ほらほら。さっそく当たりを引いたぞ。
「王都とここの領主についてだ」
「ああうん、それなら銅貨一枚でさあ」
「安いな」
「これでいいですね」
フィーナが欠けた茶碗に一枚入れる。
「ありがたや、ありがたや。じゃ、この先の通りに座っているヤツに聞いてくだせえ。そいつなら知ってるはずだ」
「わかった」
通りの先に行くと、やはり同じようにむしろを敷いてヒマそうにしているヤツがいた。
「お前が王都や領主についてくわしい情報屋だな?」
「んっ? 誰だアンタ」
「俺はハルト、旅の冒険者だ。それより、王都についての情報が知りたい。金は出すぞ?」
「王都だと……? なぜオレに?」
「通りの向こうの情報屋にお前のことを聞いたんだ」
「おお、おお、そういうことなら、へへ、銅貨三枚でとびきりの情報を教えてやるぜ、兄ちゃん」
「……ねえ、ハルト、これ、後払いにしてもらったほうがよくない?」
「そうだな……」
さっきみたいに丸投げだと微妙だ。
「いやいや、情報を後払いなんてできっかよ。そっちが聞いて金を払わなきゃどうすんだって話だ」
「いや、俺たちは約束は守るぞ」
「はっ、信用できねえな」
「仕方ありません。これで喋ってもらえますね?」
フィーナが銅貨三枚を茶碗に入れた。
「おお、ありがたや、ありがたや。じゃ、この先の裏通りに行くと――」
「おいっ! それじゃグルグルグルグル、情報のたらい回しじゃないか!」
「いやいや、兄ちゃん、落ち着け、今度こそは本当だ。この先に真っ直ぐ行った裏通りに本物の情報屋がいる。名前は『暗渡のフェレット』。嘘だと思うなら、他のヤツにも聞いてみな。この街で一番腕の良い情報屋だ」
「嘘だったら、その銅貨をキッチリ返してもらうぞ」
「いいとも」
「ハルト、あなた怪しげな通販の被害に何度も引っかかってない?」
「いや、一回だけあるけど、ここまで来てアイツが嘘をついているかどうかを曖昧のままにしたくはないだろ」
「引っかかったことあるんだ……。まぁいいわ。今は階級もあなたが上みたいだし。ただし、クロちゃん、報告書には私が警告したとちゃんと書いてね」
「アイマム。ハルトの今回の指揮評価はDマイナスだね」
「これでダメなら、次は情報屋をあきらめて商人に聞いてみましょう」
フィーナが小声でクローディアと目配せしてうなずいているが、くそう、みんなの評価がダダ下がりじゃないか。頼むぞフェレット。
裏通りにやってきた。塀と塀に囲まれている狭い路地のせいか、昼間なのにここは薄暗い。足元の土は黒く湿っていて、踏みしだかれた靴跡が幾重にも重なっていた。
「誰もいないじゃない」
「くそっ。おい、フェレット、いないのか!」
「馬鹿野郎、そんなデカい声でオレの名を呼ぶんじゃねえ。で、何が知りたいんだ、無詠唱のルーキー」
塀の向こうから声がした。コイツ、間違いなく本物だな。俺たちが冒険者ギルドで登録したときにその場にいたのかもしれないが。
「王都と、ここの領主についてだ。特に王女を取り巻く今の状況が知りたい」
「報酬は、充分な額を用意します」
「チッ、この情勢で。厄介すぎるだろうが。悪いがこの話は無しだ。ポッと出のどこの馬の骨とも知れねえFランクとは取引できん。じゃあな」
「待て、じゃあ、冒険者ランクが上がれば応じるんだな?」
「ああ、まぁCランクになったら、一人前と認めてやるよ」
――いいだろう。なら、ランクを上げてからもう一度来てやろうじゃないか。




