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双星の継承者  作者: まさな
■第三章 流浪の王女 ― The Currency of Trust ―
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●第一話 夜明けの誓い

 朝日がもう少しだけ昇り、朝靄(あさもや)が消えかけた頃、俺たちは村長の家に集まっていた。

 あの祈りが終わってから、誰もが口数が少なかった。

 しかし、フィーナの瞳には、迷いではなく――何かを決めた者の強さが宿っていた。


「私は、この地の領主であるバール男爵に、今回の出来事を報告に行く予定です。そのあとには王都に向かい、現国王ルートヴィッヒに民の暮らしぶりを陳情するつもりです」


「待ってくれ、フィーナ、君のこれまでの様子だと、現国王とは対立してるんじゃないのか?」


 最初にこの村を訪れたとき、ルートヴィッヒの兵がいたら別の村に行くというような話をしていたのだ。


「ええ、その通りです。私の本当の名はセラフィーナ・エル・ヴァレンティ・アルディア。ルートヴィッヒに殺された先王の娘です」


「じゃあ、ダメだ。ルートヴィッヒは君に追っ手を掛けているんだろう? だから少数の護衛だけでここまで落ち延びていた」


「ですが、あなた方も目にしたはずです。この国の惨状は、ルートヴィッヒが軍事を強化するために重税を強いているのが原因なのです。このままでは他国に攻め入られるまでもなく、国が滅びます」


「ううん……」


「状況はわかったけれど、王女様、あなたが王都に行ったところで、状況は変わらないのでは?」


「これまで通りフィーナで構いませんよ、クローディアさん。親しい友人などにはそう呼んでもらっていますから。ええ、変わらない可能性が高いでしょう。ですが、私は自分だけがどこかに落ち延びたまま、この国が滅ぶのを黙って見ているようなことはできません」


 微笑みながら言うフィーナに、俺はある種の尊敬と、同時に居心地の悪さも感じて複雑な気分になった。この星に不時着した後、軍に戻れないなら戻れないで、適当に暮らすのもいいかーと思っていたのだ。


「そう。私たちはこの村にあった『星の欠片』についての情報が欲しいの。村長があなたなら、知っているというような話をしていたわ」


「それほど多くのことは知りませんが、街まで護衛してくださるならば、私が知っていることはお話しします。交換条件ということでどうですか?」


「不成立だ」


 俺はそこはハッキリと断った。


「そうですか……」


 フィーナは落胆し、目を伏せた。


「俺たちは無条件で君を街まで送っていく。それは決定事項だからな」


「そうね」


 クローディアも肩をすくめ、ややあきれた表情を見せつつ、同意してくれた。


「ああ。ありがとうございます! あなた方のような力の持ち主に護衛していただけるなら、これほど心強いものはありません。このご恩はいつか必ず。バール男爵は礼儀正しくお優しい方です。きっと私たちの力になってくれるはずです」


 俺たちはすぐに準備を整え、ヴィント村を出立した。村人達が食料をたくさん持たせてくれようとするので、丁重に断った。村も百年に一度のお祭りだからたくさんの食べ物を出していただけで、決して余裕があるわけではないのだ。隣村の人間をどうするかという問題もある。

 それでも、村人達の顔は明るかった。それだけが救いだ。


「姫様、お気を付けて~」「姫たま~!」


 村人達が手を振り、別れを惜しむ。


「ええ、それでは皆さん、行って参ります」


 フィーナも微笑んで手を振ると、すぐに迷いのない足取りで先を行き始めた。


「ハルト、本当にフィーナを王都に連れて行くつもりなの?」


 クローディアがフィーナに聞こえないよう、小声で聞いてくる。

 

「ボクは非推奨だね。ボクらにとって悪い可能性しかない。フィーナにとってもだよ。合理的な判断とは思えないね」


「王都や王城に行くのは俺も少し待った方が良いと思ってる。だが、まずは情報だ。それを手に入れるためにも、どこかの街には行かないと。フィーナは今、味方が俺たちしかいない。だが、王女ならお付きなり護衛が他にもいるはずなんだ」


「ふむ、……ボクの評価を更新。非推奨から判断保留に変更。データ不足だから、継続観測を推奨するよ」


「そうね。うん、ハルトが考え無しで同意してるのかと思ったけれど、そうじゃなくて安心した。あなたって何も考えてない顔してても、ちゃんと考えてるもの」


「なんか今、ちょっと小馬鹿にされた気がしたんだが」


「ふふ。別にしてないわよ。褒めてるのよ」


 どうだかな。


 俺たちは新たな街を目指して歩み始める。

 高原の風が俺たちの背中を押し、空の高みからは(トビ)の声が響きわたった。

「ピーィーロロロォ……」と長く尾を引くその声が、旅の始まりを告げていた。


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