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2話 父親の武勇伝

ネストは元々公爵家の分家、エリース伯爵家の五男だった。


しかし礼儀作法だとか貴族のドロドロとした関係だとかはどうも性に合わず苦手だった。

五男だったからか家督を継ぐ可能性も低く、礼儀作法のなっていないネストを、両親はそこまで厳しく叱りつけることはなく、放任していた。



19歳になると彼はトミノ教騎士団の騎士になった。

騎士と言っても治安を守ったり、地方の魔物を狩ったりする程度のものだ。

幸いにも彼は剣の才能があった。

かっちりとしたのは苦手だったが真面目ではあった。


彼が21になる頃、彼騎士団の中でもトップを争う実力になった。

もっとも礼儀がなっていないとの理由であまり昇進はできず隊長止まりであった。

ある時、騎士団本部から遠く離れた村でドラゴンが現れた。

ドラゴンは村人を焼き尽くし、蹂躙した。

住人367名中生き残ったのはたった12人だった。


彼は件のドラゴン討伐の遠征に駆り出された。

総勢1500名以上の大規模遠征だ。


ドラゴンはこの世界で最強の生物の一角だ。

強力なブレス、硬い鱗、鋭い爪、強い再生力


彼は死を覚悟した



遠征出発の当日彼は遺書といつも身につけていた金属製のネックレスを騎士団寮の自室の棚の中へ入れた。



村に向かう途中彼は部隊の皆と語り合った

帰ったらプロポーズするだの、飯が不味いだの、ボーナスが出たら何を買おうだの。

彼らは精一杯の虚勢を張って笑い合った。


笑っていないと恐怖で泣き出してしまいそうだったからだ。

彼は、士気が下がるかもしれないと思い、絶対に泣く姿は見せなかった。

しかしそれが無理をしているだけであるのは誰の目から見ても明らかであった。


部隊には俺は死ぬのが怖くないと言う者もいた。

途中で泣き出す者もいた。

遠征が決まってすぐ騎士団を辞めた者もいた。

彼らを責める気にはなれなかった。

自分も逃げ出してしまいたかった。


到着予定日の前日、豪勢な食事が振る舞われた。

豪勢と言ってもバゲット、魔法で凍らせた野菜を使ったポトフ、牛乳を使えないため甘くないクッキーなどだった。

遠征中ならこれでもかなり豪華な食事なのだ。


翌日、騎士団長が作戦を告げる。


矢印型に隊列を組み約1100人の騎士が盾となりつつ攻撃を加える。後方で300名の魔法部隊が騎士達に強化魔法を使い、より後方で100名の魔法使いが大規模攻撃魔法を使う。

というごく単純なものだった。


この作戦を聞いた時ネストは絶望した。

彼の部隊は隊列の先頭だった。

実力を考えると妥当かもしれないが自分は確実に死ぬと思った。



村に到着するとドラゴンは我が物顔で崩壊した民家の瓦礫の上に座っていた。

ドラゴンは体長15メートル程で首は自分の剣の刀身の二倍はあった。


ドラゴンはこちらに気づきすぐさま炎のブレスを放つ。

ネストはかろうじて避けたが自分の部隊の半数以上がこのブレスで死んだ。


ネストは魔法部隊からの強化魔法を受けドラゴンとの距離を一気に詰める。

それに続き後ろの部隊も突撃する。


最優先で狙うべきは翼だ。

ドラゴンは飛ぶことができるため逃さないためにすぐに切る必要がある。


ドラゴンの尻尾がしなり、ビュンと音を立ててネスト達に振るわれる。


「がっ...!」


剣で防ぐが質量の前では無意味でネストは吹き飛ばされるがすぐに復帰し再び攻撃を仕掛ける。



攻撃を開始してから五分程経っただろうか。

ドラゴンは騎士達を蹴散らし続ける。


「総員!、下がれ!」

拡声魔法により辺りに団長の声が響く。

ドラゴンの上空に巨大な魔法陣が展開され、騎士達は腰の袋から煙幕爆弾を取り出し地面に投げつけ、一度後ろに下がる。


「「「エ・ドガリ・ギダムドラウ・ラガウ」」」


上空の魔法陣から巨大な稲妻がドラゴンへ降り落ちた。


ドラゴンの体からは煙が出て、翼は穴が開きとても飛べる状態ではなかった。


これを好機と見たネストはいち早く攻撃を仕掛ける。

ドラゴンの首を目掛けネストは飛び掛かり、空中で剣を振るう。


しかし剣は首の半分で止まってしまった。


首を落とさなければ再生してしまう。


落下しながらネストは失敗したと思った。


しかしどこからか出てきた氷の手がドラゴンの首に刺さったままのネストの剣を掴む。


氷の手が剣に力を込めドラゴンの首を切り落とさんとする。


「グアァァァァァ!!」


ドラゴンの断末魔が響き、切り落とされたドラゴンの首が地面に落下する。


「ウオオオオオ!!」


辺りに歓喜の声が響く。


地面に叩きつけられたネストは起き上がり、先程の氷の手を使ったのは誰か探し始める。

「おい!さっきの手は誰がやったんだ!」

「は、はい!」

一人の女がネストの元へ近づいてくる。


「あ...ありがとう、助かった。」

「い...いえ...えへへ」

女は照れくさそうに笑う

「その...よければ名前を教えてくれ。」


「エ...エイラです。」



---




それから時が経ち俺とエイラの間に子供が生まれた。

名前はアラス


苗字も結婚する時にエリースから変えた。

リオラルク、かっこいいだろ?


リオラルク・アラス

いい名前だ。

正直上手く父親をやれるかはわからない。

実家も飛び出してきたから頼れないしな。

まあ...頑張るとしよう。



---



生まれてすぐアラスは居間のドラゴンを討ち取った剣に興味を示した。その度に俺は

「アラス、あの剣が気になるのか?あれは...」

と武勇伝とエイラの出会いについて語る。


正直育児ってのはもっと大変だと思っていた。

アラスは全く泣かない。

近所の人達には夜泣きで寝られなくなると聞いていたが全く夜泣きなんてしない。


最初のうちは心配だったが成長するにつれてだんだん普通の子になっていった。

他の子と違うのは、子供にしては賢いし達観している。そして同年代の友達を作ろうとしない。


まあ...それも個性か...

心配だが...そこに口は出すべきじゃないだろうな。
















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