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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第三巻 商人から支配者へ① ――守るための取引と暴力

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第82章 深山の秘境──覇者が見つけた隠された地

会場のざわめきが、まるで熱気そのものとなって渦巻いていた。

 明らかに多くの人々が彼に興味を示し、その価格はあの少女の時を超え──最終的に1400金貨へと跳ね上がった。

 声がかすれた熟女が最終的に落札したが、その使い道は誰にも分からない。戦士として使うのか、それとも愛人として囲うのか──いや、考えるだけ無駄だな、とフィルードは肩をすくめた。

 こうしてオークションは幕を閉じた。

 フィルードの財布は、680金貨を費やして半分に。

 「……ぐっ、やらかしたな……!」

 彼は手を切り落としたいほどの後悔を覚えたが、すぐに深呼吸をして立ち直った。

 (今さら悔やんでも仕方ない。問題は──これをどう活かすか、だ)

 品物を馬車に積み込み、食料を大量に買い込んで領地へと戻る。

 領地の人口が増えてからというもの、食料の確保は永遠の課題だった。

 いくら運んでも底が見える。

 「……まるで砂漠に水を撒いてるようだな」

 それでもやるしかない。誰も飢えさせたくはなかった。

 食料を二度に分けて運搬。一度につき七十金貨、合計百四十金貨。

 これでようやく領民たちが一ヶ月は食える。

 それでも残りは五百金貨強。金がまるで水のように流れ出ていく。

 (金は天下の回り物って言うが……俺のとこだけ回ってこねぇな)

 幸い、石鹸の商売が月に二百金貨の利益を生んでくれている。

 それが唯一の救いだった。

 領地に戻ると、偵察に出ていたジャッカルマンたちはまだ戻っていなかった。

 フィルードはユーリオンに商隊を任せ、再び食料輸送を続けさせる。

 そして自らはブルース、マイク、クリスの三人を連れ、例の「秘密基地」へと向かった。

 逃亡防止のため、馬には誰も乗らず。

 物資を運ぶための二頭の馬だけを引いて進む。

 クリスが指した場所は領地からそう遠くはなかったが、道は険しい。

 登るか下るかの連続で、山を五つも六つも越える羽目になった。

 一日以上歩き、ようやく一行は足を止めた。

 クリスの案内で辿り着いたのは川辺。

 「……ここが入り口か?」

 クリスは無言のまま川へ飛び込む。

 慌てて他の三人も続いた。

 流れは速く深いが、クリスの泳ぎは迷いがない。

 その先で上陸した場所──そこはまるで異世界のようだった。

 鍾乳洞。

 闇の奥から滴る水音が反響する。

 「……まるで迷宮だな」

 フィルードは思わず呟いた。

 (そういえば、領地の地下にも隠された川があったな。まさか、繋がってたりして?)

 クリスの後を追って左へ右へと曲がり、ようやく洞窟を抜け出す。

 眼前に広がるのは、信じがたい光景だった。

 山奥のさらに奥──そこには、広大な平地が広がっていたのだ。

 「……嘘だろ、こんな場所があるなんて」

 フィルードは手にした土をすくい、指で擦る。黒く柔らかい肥沃な土壌。

 にもかかわらず、木々がほとんど生えていない。

 せいぜい腰丈ほどの低木がぽつぽつとあるだけ。

 (肥沃なのに森が育たない?……おかしいな。誰かが“使っている”のか?)

 さらに進むと、クリスの様子が妙に落ち着かない。

 「おい、どうした。顔色が悪いぞ」

 「……い、いえ、なんでも」

 山頂に着いた瞬間、その理由が分かった。

 「……広いな」

 盆地全体が見渡せた。

 面積は百里を超え、緩やかな丘や斜面が混じる複雑な地形。

 まさに天然の要塞。

 その時、マイクが目を凝らして叫んだ。

 「団長様! あそこ! 煙が上がってます!」

 フィルードが顔を上げると、確かに炊煙が立ち昇っていた。

 表情が一気に険しくなる。

 「……クリス、お前、誰もここを知らないと言ったな?」

 冷たい声。クリスの顔が引きつった。

 「ま、待ってください旦那様! 本当に知らないんです! あそこは……私のもう一つの拠点で……!中には奴隷たちが……!」

 「奴隷、だと?」

 「はい、全員目隠しして連れてきたので、ここへの道は知らないはずです!」

 フィルードは彼の目をじっと覗き込み、わずかに頷いた。

 「……いいだろう。信じてやる。だが次に嘘をついたら、その舌、引っこ抜くぞ」

 「ひ、ひぃっ!」

 「魔獣の群れは?」

 「……あちらの方です。普段はあの辺をうろついてます」

 「こちらには来ないのか?」

「挑発しなければ大丈夫です!」

 フィルードは頷き、マイクとブルースに命じた。

 「煙の方を確かめる。ブルース、こいつを縛れ。口も塞げ。騒がれたら厄介だ」

 クリスは必死に抵抗したが、マイクの一蹴で地面に沈んだ。

 「……悪く思うな、命あっての物種だ」

 縄でぐるぐる巻きにされたクリスを引きずり、三人は慎重に前進した。

 ほどなくして、視界の先に“村”が見えた。

 数十人規模の人々──半数以上が女性。

 中には目を引くほど美しい者もいた。

 残りは十代半ばの少年たちで、彼らは武器を持ち、女たちを監視している。

 山麓には畑があり、家畜もいる。

 どう見ても、これは「ただの隠れ家」ではない。

 「……小さな集落か。クリス、お前、これはただの隠れ家じゃねぇな」

 沈黙のまま縄を引く。

 フィルードたちは装備を整え、集落へと慎重に歩み寄った。

 中の人々が彼らを見つけ、一斉にざわめく。

 一人の少年が怒鳴った。

 「お前ら誰だ!どうやってここに来た!」

 フィルードは穏やかな笑みを浮かべた。

 「俺たちが誰かなんてどうでもいい。聞きたいのは──お前たちとクリスの関係だ」

 「クリス……だと?」

 少年の表情が凍る。

 「彼は……俺の叔父だ。どこにいる!」

 「死んだよ。城防軍に殺された。死ぬ前にこの場所を俺に託した。今日からお前たちは、俺の管理下だ」

 「嘘だ!」

 少年は叫び、武器を構えた。

 「叔父がこんなことを教えるわけがない! 囲め!」

 瞬間、周囲の少年たちが槍を構えて迫る。

 「……まったく、話の通じないガキどもだ」

 フィルードは弓を引き、冷たい声で言った。

 「よく考えろ。お前たちが攻撃すれば──俺は容赦しない」

 それでも彼らは止まらない。

 ため息と共に、弓弦が鳴る。

 次の瞬間、空気を切り裂く鋭い音が響いた。

 矢が一直線に、少年の眉間を貫いた──。


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