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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第三巻 商人から支配者へ① ――守るための取引と暴力

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第79章 「天賦の才――一つの魔石で学徒へ!?」

フィルードは相場を理解しておらず、すぐに首を横に振った。

「多く売ろうが少なく売ろうが、兄貴おやじの実力ですよ。俺から見れば、兄貴おやじの能力は底知れず、一つ100金貨で売っても驚きませんよ!」

ブライアンはフィルードにずる賢そうな目つきを向け、ニヤリと笑った。

「お前は本当に褒め上手だな! 勿体ぶるのはやめよう。」

周囲をぐるりと見渡し、ブライアンはフィルードの耳元に身を寄せ、囁くように言った。

「……なんと一つ、3枚の金貨だ! あの石鹸は全部で800枚以上の金貨になったんだよ。今じゃ夜も眠れないほどさ。誰かに奪われるんじゃないかと、毎日ビクビクしてる。」

「……は?」

手にしていたグラスがフィルードの手から滑り落ち、乾いた音を立てて床に転がった。

彼は一瞬呆然とし、口をパクパクさせた後、慌てて声を上げた。

兄貴おやじ、そんなことをしたら今後、街から出られなくなりますよ!? 一体誰に売ったんですか? どうしてそんな高値がついたんです!?」

ブライアンはその反応を楽しむように、神秘的な笑みを浮かべた。

「もちろん俺なりのやり方があるさ。ダービー城は北方最大の穀物卸売都市。貴族どもがわんさか店を構え、裏で動く商社も無数にある。

美貌の少女、希少な香辛料――そういった“貴族専用の贅沢品”を扱う連中だ。あいつらが価値を認めりゃ、いくらでも金を出す。」

フィルードは息をのんだ。金貨三枚の石鹸……いや、八百枚以上の金貨。

(兄貴……やっぱり只者じゃない……!)

ブライアンは続けた。

「俺が300個ほど出したとき、相手は明らかに後悔していたよ。

だが俺は言ってやったさ。“今後は毎月100個しか作らない。これは希少品だ”ってな。

それに加えて、これまでに存在しなかった新しい品物――それが高値のもう一つの理由だ。

数年もすれば値は下がるだろうがな。」

フィルードは真剣な表情で頷いた。

(……これで金の悩みは、当面なさそうだな。)

ブライアンに50枚の金貨をコミッションとして支払ったとしても、彼の手元には760枚の金貨が残る。

加えて、マッドブルの皮18台分の荷はまだ売っていない。

――もはや、男爵ですら自分より貧しいかもしれない。

話が一段落すると、フィルードは少し声を落として尋ねた。

「兄貴、ダービー城で“地下組織”について聞いたことはありませんか?

つまり、貴重品を専門に取引するような場所です。」

「ほう……」ブライアンの目が細くなった。

フィルードは小声で続けた。

「実は、兄貴おやじには黙ってましたが……以前偶然、魔晶を手に入れたんです。

それで、俺は――すでに“魔法学徒”に突破しました。」

「……っ!?」

ブライアンの手からグラスが滑り落ち、床に派手な音を立てた。

彼は目を見開き、しばらくの間、言葉を失っていた。

「お、お前……それは本当か!? 本当に、魔石一つで魔法学徒に!?」

(しまった、言いすぎたか……?)

フィルードは少しだけ視線を逸らした。嘘ではない。だが――自分が魔石すら使っていないとは、さすがに言えない。

「……はい。本当です。魔石を一つ、使って突破しました。」

「……化け物め。」ブライアンはしばらく呆然とした後、ため息を漏らした。

「お前の才能の十分の一でもあれば、俺は今ごろ違う人生を歩んでただろうな。いいか、今日のことは絶対に誰にも言うな。

“魔石4個で突破した”って言え。いや、8個でもいい。そっちのほうが安全だ。」

「……どうしてです?」

「世の中にはな、才能そのものを“奪おうとする”連中がいるんだ。」

ブライアンの声は低く、真剣だった。

「王家、貴族、そして魔導士団……やつらは“操るための手段”をいくらでも持ってる。

聞いた話だがな、今の時代、魔石2個で魔法学徒に突破できれば天才。

4個なら上位貴族に招かれるレベルだ。

8個でも普通。10個以上が一般だ。

魔力が薄いこの時代じゃ、外の空気そのものが“魔力欠乏空間”みたいなもんだからな。」

(……一個どころか、俺は素で突破したんだが……)

フィルードは内心で冷や汗を流した。

――つまり、自分は“規格外の怪物”ということか。

フィルードは軽く頭を下げた。

兄貴おやじ、ありがとうございます。この件は誰にも言いません。」

「それがいい。」ブライアンは安堵したように息をついた。

「で、さっきの“取引集会”だが……確かに存在する。

大都市では月に一度、秘密オークションが開催されている。

参加資格は最低でも400金貨を所持していること。

それに、入場券代として金貨5枚。買わなくても返ってこないぞ。

ダービー城は北方でも有数の都市だから、毎月二回開かれる。見に行って損はない。」

「……なるほど。行ってみたいですね。」

二人はそのまま夜まで飲み明かし、深夜、ブライアンに案内されて街外れの小さな雑貨店にたどり着いた。

中に入ると、白髪の老人がカウンターで居眠りしていた。

フィルードが遠慮がちに声をかける。

「すみません、ここはオークションの入り口ですか?」

老人はピクリと動き、ゆっくりと顔を上げた。

「お前……初参加か? どうしてそんなに作法を知らんのだ。直接聞くとは無礼なやつだ。」

「す、すみません!」

フィルードは慌てて頭を下げた。ブライアンが苦笑しながら目配せをする。

フィルードは悟り、ポケットから数枚の金貨を取り出して差し出した。

老人は受け取ると、ようやく満足そうに頷いた。

「うむ……まあ、悪くない若者だ。いいか、次からは直接聞くな。

カウンターを三回叩け。それが合図だ。オークションは五日後に始まる。」

そう言って、木の札を渡す。

「これが入場証だ。価値は金貨五枚だ。」

フィルードは快く支払い、二人はそのままブライアンの店に戻った。

ブライアンは裏庭に入り、何やら物を探し回ったあと、黒い布袋を取り出して手渡した。

「弟よ、金はここにある。俺は思うに――お前はこの金で街に不動産を買うべきだ。

そうすりゃ、最悪の結末になっても逃げ道がある。」

フィルードはその言葉を静かに受け止め、ゆっくりと頷いた。

(兄貴……やっぱりあんた、只者じゃない。だが――俺も負けない。)

その瞳には、確かな決意の光が宿っていた。

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― 新着の感想 ―
魔法学徒…いきなり新しい設定が生えてきたな 主人公はいつその設定を知ることができたんだ?
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