第77章 旧知との再会――雑魚どもよ、俺の矢で散れ
その他にも、大量の斧、鋸、鉄鍋、鉄スコップ、衣服などの雑多な物が、丸々二台の馬車に満載されていた。残りの六台の馬車には食糧が積まれており、
フィルードが驚いたのは、彼がさらに豚頭族の首領から二百枚以上の金貨を見つけ出したことだった。
――ふむ、やはり金は血の匂いと一緒に転がってくるものだ。
その金貨は、あの不運な五人の開拓者たちのものに違いない。光るものを好むのは、知恵ある生物なら当然の性。
さらに十三着の半身鉄甲も押収された。どうやらそれも、彼ら五人と護衛たちの遺品らしい。
――悪いな、だがこれは俺の領地発展の糧になる。
財の山を前にして、フィルードは小さく笑った。まるで未来の繁栄を見通したかのように。
この戦いを経て、
彼は略奪を行う獣人たちの戦闘力を完全に把握していた。緊張していた表情はかなり和らぎ、今では目の奥に冷静な光すら宿している。
――なるほど、これがこの地域の“強者”の水準か。ならば、俺の敵ではないな。
もはや恐れるものなどない。そう確信し、彼の歩調は自然と大きくなっていた。
隊列が前進するにつれ、密林からは時折、人間の奴隷が現れて保護を求めてきた。
彼らは皆、開拓領から逃げ出してきた者たちで、道中で拾い集めていくうちに、鉄鉱石の野営地に到着した時には奴隷の数が百十六人に達していた。
斥候隊はその間に二度、獣人の略奪隊を発見したが、いずれも遠方におり、こちらへ向かう気配はなかった。
フィルードは刺激することなく、鉄鉱野営地で一晩休息した後、再び北へと進軍を開始した。
――次の獲物は、どんな奴らだ?
ダービー城の北部荒野まで来た時、予期せぬ光景が広がっていた。
獣人の一団が、人間の部隊を包囲攻撃している。
「……ほう、何やら楽しそうなことをしているじゃないか」
フィルードが覗き込むと、そこにいたのはかつての旧知――「血腥クリス」だった。
かつて自分を狙った男が、今やジャッカルの獣人に追い詰められ、山頂で逃げ場を失っている。
――運命というやつは、時に滑稽だな。
百人いたはずの部下は七、八十人にまで減っていた。地形を利用して辛うじて持ちこたえているが、長くはもたない。
フィルードは即座に判断を下した。
「……まだだ。焦るな。奴らが限界まで消耗するのを待て。」
兵士たちに密林へ潜むよう指示し、1〜2時間の間、彼は静かに待ち続けた。
やがてジャッカルの獣人たちは食事を終え、再び攻撃を開始。夕暮れの光の中、戦場は血の匂いで満ちていく。
――いいタイミングだ。そろそろ、狩りの時間だな。
ジャッカルの首領が勝ち誇ったように笑いながら前を歩いている。
その瞬間、フィルードは静かに弓を引いた。
「――眠れ」
ヒュッ、と風を切る音。次の瞬間、矢は首領の喉を貫き、鮮血が噴き上がった。
首領は驚愕の表情のまま地に崩れ落ちる。
「首領がやられたぞ!」
混乱が広がる。
フィルードは口元に笑みを浮かべた。
「首を落とせば、群れは崩れる。……獣も、人も、同じだ。」
矢が再び放たれ、林の中から次々とジャッカルの獣人が倒れていく。
その正確さはもはや神業。弓兵というよりも、死を告げる執行者だった。
さらに二人の小頭領を射抜いたところで、残った獣人たちはついに恐慌に陥った。
突撃を試みた者たちは、森の端で投槍に貫かれ、わずかに突破した者も、森の奥で悲鳴を上げて消えていった。
――俺の森に踏み込むな。命が惜しければな。
やがて獣人たちは完全に崩壊した。
フィルードはゆっくりと立ち上がり、冷ややかに命じる。
「追撃開始――逃がすな。」
短い戦闘ののち、敵は壊滅。押収した物資は六台分の馬車と百二十枚の金貨だった。
その時、山から「血腥クリス」が降りてきた。
彼は地面に膝をつき、言った。
「勇士殿、命を救っていただき感謝します。我々は傭兵団で――」
フィルードは鼻で笑った。
「傭兵団、ねぇ。お前、いつから転職した?」
クリスはその声に顔を上げ、日暮れの中でようやくフィルードの顔を確認した。
「お前……フィルードか!?」
次の瞬間、彼は背を向けて逃げ出した。だが両手剣を構えた弓兵たちに囲まれ、逃げ場を失う。
フィルードは冷たく言い放った。
「全員縛り上げろ。ここを離れる。」
数十里進んだ場所でようやく隊は停止した。
フィルードはクリスを呼び寄せ、淡々と告げた。
「お前の首はダービー城で五十金貨の価値がある。
俺が命を救ったんだ、合わせて百金貨だ。それに見合うものを差し出せ。」
クリスは青ざめて叫ぶ。
「お前、俺の八十枚の金貨を奪っただろ!? もう何もない!」
「戦利品は戦利品だ。お前の命とは別勘定だ。」
「……っ、もう金貨は一銭もねぇ!」
フィルードは少し残念そうに肩をすくめた。
「なら、賞金首として売るまでだ。」
兵士たちが動こうとしたその時、クリスは叫んだ。
「待て! 俺は重要な情報を知ってる! それを話せば、命を見逃してくれるんだな!?」
フィルードは片眉を上げ、薄く笑った。
「ほう……その“重要な情報”、命の値段に届くかどうか、聞いてやる。」
――取引の主導権は、常に俺の手の中だ。
彼の眼は夜の闇よりも鋭く輝いていた。




