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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第二卷 傭兵から商人へ② ――戦場の裏側で金を動かす

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第53章 開拓法案の衝撃

ケビンが頷きながら報告を始めた。

「はい、後で労働時間を割り当てに行きます。それから……団長様が不在の間に、実は3組の人間がやってきました」

「三組?」

フィルードは眉をひそめる。

「ええ。彼らは私を試すようにして、団長様の情報を引き出そうとしたんです。それだけじゃありません……この峡谷を金で買い取ろうとまでしてきました。最高で金貨60枚の提示がありましたが、もちろんすべて断りました」

その言葉に、フィルードの表情が一瞬で引き締まる。

心臓がどくりと高鳴った。

(俺はただ真面目に商売をしていただけだ。それなのに、もう本拠地に目を付けられているのか……!)

「ケビン、お前の判断は正しかった。これからどんな連中が来ても、必ず断れ」

「承知しました」

「数日のうちに俺がデビー城へ行き、開拓証明書が手に入るかどうか確かめてくる。……よし、労働者の手配をしてくれ」

「かしこまりました」

ケビンが去った直後、今度はゾーンが慌ただしく駆け寄ってきた。

「団長様! 療養していた兵士たちを連れ戻しました」

「ほう……」

「ですが……3人の負傷兵は耐えられず……亡くなりました。戻れたのは15人のみです」

ゾーンの声は沈んでいた。

「その中の1人は片腕を失い、2人は足の腱を切られ、さらに1人は胸を長槍で貫かれていて……ずっと息苦しそうにしており、激しい活動は無理です。……この4人をどう処遇なさいますか?」

フィルードは一切ためらわなかった。

「彼らに聞いてみろ。家に帰りたいか、それともここに残りたいか。もし家に帰りたいなら――傭兵団が存続する限り、毎月銀貨1枚を支給する。ここに残るなら、毎日2ポンドのパンと毎月銀貨1枚、それに数日おきに肉も食わせる。もちろん、労働者の管理や兵士の訓練など、領地のための任務は果たしてもらう」

フィルードは続けた。

「もし家族がいるなら、連れてきても構わん。領地として家族に毎日黒パン1ポンドを支給する。……ケビンに伝えておけ。今後の負傷兵も同じ規則を適用するとな」

「はっ!」

ゾーンはすぐに数人の古参兵のもとへ戻り、この方針を伝えた。

だが――最終的に、誰一人として去ることを選ばなかった。


(……一気にこれほど食い扶持が増えるとはな)

フィルードは思わず頭をかきむしった。

現在の領地の総人口は――驚愕の411人。

その内訳は、奴隷9人、正式傭兵が自分を含めて119人。

見習い傭兵は18人(体質の弱い者たちだ)。

さらに訓練中の調査員が120人。あと1ヶ月訓練すれば、まともにこなせる者は見習い傭兵に加わるだろう。

労働者は144人。基本的には体質の弱い者ばかりで、少なくとも半月の療養が必要。

(……数だけ見れば立派な集団だ。だが、養うのは地獄のように大変だな)

フィルードはため息を吐きつつ、労働者たちの食事を見直すことにした。

基準は傭兵と同じ。

つまり毎日1.5ポンドの特製軍糧と肉3分の1ポンド。

「体力を回復させるには、どうしても栄養が必要だ」

しかしその費用は――天文学的な数字だった。

(毎月80枚以上の金貨……! 干し肉が比較的安価だからまだこの程度で済んでいるが……)

幸い彼は大量の家畜を所有しており、穀物だけを食べさせれば費用を半分に抑えられる。


翌朝。

フィルードは商隊を率いてデビー城へ向かった。

目的は大規模な買い付け。

城に入ると、まず向かったのは――ブライアンの店。

「おお、フィルード! 久しぶりだな。最近は一体何をしていた?」

ブライアンが笑顔で立ち上がる。

フィルードも笑みを返した。

「部下を率いて近くの地形を調べていたんです。ついでに、獣人とちょっとした商売も」

「……お前というやつは、本当にじっとしていられんやつだ」

ブライアンは苦笑し、すぐに店員に声をかけた。

「よし、兄弟、酒場でゆっくり話そう。ちょうどお前に話したいことがあるんだ。――傭兵の春が来るかもしれん」


2人は酒場に移動し、豪華な酒と料理を注文した。

席に着くと、ブライアンはいきなり本題に入った。

「兄弟、お前は本当に金持ちになるかもしれんぞ」

「……は?」

「ここ数日、ほとんどの酒場の店員が俺のところに話を持ち込んできたんだ。お前たちの傭兵団を雇いたい、と。少なくとも20以上だ」

「20……!?」

「提示された価格はさまざまだが、最低でも1人あたり1日5枚の銅ファニー。高いところでは10枚に達する。――彼らは皆、北部の荒野に開拓領地を建設しようとしている」

「開拓、か……」

「もちろんある程度危険はある。だが価格は確かに悪くない」


フィルードは考え込んだ。

(俺が1級傭兵を養うのにかかるコストは……毎日6〜7枚の銅ファニー。つまり利益はほとんど出ないが、それでも軍を維持できる)

下級士官を核とし、正式傭兵を少数補助に回し、さらに数十人の見習い傭兵を加えれば――基本的な戦闘力を持つ護衛団が編成できる。

(……悪くない。これなら軍を拡大できるかもしれん)

フィルードはビールを一口飲み、ブライアンに向き直った。

「兄貴。俺が傭兵を養うコストは知っているだろう? 確かにこの価格は少し低い。だが、俺の大きなプレッシャーを軽減してくれるのは確かだ。……後で人を送って、その酒場の店員たちと連絡を取り、依頼主と会う約束をしよう」

ブライアンは満足げに頷く。

「それと兄貴。……どうして急にこんなに開拓領地が増えたんだ? 彼らはどうやって開拓証明書を?」


ちょうど料理と酒が運ばれてきた。

ブライアンはビールをぐいっと飲み干し、にやりと笑う。

「先日、ディオ伯爵が開拓法案に署名したんだ」

「開拓法案……?」

「ああ。その主な内容は、獣人部落を3つ滅ぼせば、開拓証明書を1枚手に入れられる、というものだ」

「なるほど……」

「だが、これは表向きの話だ。実際にはコネがあれば、金貨を納めるだけで直接証明書がもらえる。だから短期間で領地が一気に増えたのさ」

フィルードは驚きと同時に納得した。

(そういうことか……もし新しい開拓領が全部で3つの小部落を滅ぼすとしたら、北部の獣人は根こそぎ掃討されることになるな)


フィルードはさらに問いかけた。

「兄貴、これはいくらするんだ? 兄貴にコネはあるのか? もし安ければ、俺も1枚欲しい」

ブライアンは特に驚きもせず、淡々と答えた。

「難しい話じゃない。こういう案件を専門に扱う仲介人がいる。荒野のどの辺りかによって値段は変わる。人間族の領土に近いほど高く、遠いほど安い。全体では金貨50〜500枚の範囲だな」

「……意外と幅があるな」

「ただし――勘違いするなよ。奴隷を数人買って放り込み、獣人に殺させただけで貴族の称号がもらえる、なんて甘い話じゃない」

ブライアンの顔が厳しくなる。

「この政令には明確な規定がある。まず開拓領地に1年以上駐在しなければならない。それに50畝以上の土地を開墾する必要がある。さらに、1年守り抜いたとしても領地が落ちた場合、貴族の称号を保持したいなら――その土地から得られる小麦の2割を納めなければならない」

「……なるほど」

「平時なら一般人でも達成できるかもしれんが、今の状況では非常に困難だ。本当に基盤を持つ家族だけが成し遂げられる条件だ」

ブライアンの言葉は重く、酒場の喧噪の中でも鋭く響いた。


PS:今日は週末なので、おまけでもう一章加筆しました!✨

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