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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第一卷 傭兵から商人へ① ――異世界サバイバルと最初の血

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第5章 初めての戦場、初めての血

国境を越えてから、まだ二十分も経っていない。

俺たちの一行はドタバタと駆け足でフェイン騎士の領地へ入り込んだ。

畑で鍬を振るっていた農奴たちが、こちらの四、五十人の軍勢を見た瞬間――

「ひっ!」

と道具を放り捨て、蜘蛛の子を散らすように村の方へ逃げていく。

(まあ、そうなるよな……俺だって、逆の立場なら全力で逃げるわ)

村に着いたときには、すでに大混乱だった。

荘園の塀に登ったフェイン騎士が、こちらを睨みつけている。

敵意むき出しの顔は……まあ想定通り。

だが、問題はこっちだった。

「おい、そっちの鶏、逃がすな!」

「犬だ! 犬捕まえろ!」

「へっへっへ、こいつはまだ幼ぇな……」

――雇われ傭兵どもが、村に入るや否や勝手に暴走。

鶏を追いかけ、犬を捕まえ、挙げ句の果てに――小さな女の子に手をかけようとする奴まで出る始末。

(おいおいおい! 略奪とかは「傭兵あるある」だって頭では分かってるけど……これはあまりにゲスすぎだろ!)

「貴様らぁぁっ!」

ついにウォーカー騎士がブチ切れた。

従者に命じる声が響く。

「農兵を率いて、あのクズどもを引き戻してこい! それと――あのズボンを脱がせている下衆は鞭で叩きのめせ!」

怒鳴り終えると、ウォーカー騎士の鋭い視線がこちらに向いた。

「……おや? お前はなぜ略奪に行かない?」

(やっべ、話振られた!)

「傭兵を始めたばかりだろう? こういう村を攻める機会はそう多くないぞ。普通なら飛びつく戦闘だ。奪った銅貨も上納の必要はない。俺は略奪そのものは否定しない。だが、戦いの最中に統制を失うことだけは許せん」

ウォーカー騎士の問いに、俺は慌てて背筋を伸ばした。

「尊敬する騎士様! あなたに雇われた以上、私は命令を忠実に守るべきです! 任務をいただかない限り、ここで待機いたします!」

(ふぅ……傭兵ロールプレイ、なんとか成功か?)

「うむ、素晴らしい!」

満足げに頷くウォーカー騎士。

「お前は合格だ。名を教えろ」

「光栄です! 私の名はフィルード。まだ傭兵になったばかりでございます」

……よし、これで信用ゲット。

だが次の瞬間。

ガシャァン!

荘園の門が開き、フェイン騎士が兵士を率いて飛び出してきた。

数十人の農兵たちが、一斉に突撃してくる。

「ぐっ……退け! 村の中へ!」

ウォーカー騎士は従者しか連れていない。真正面からぶつかる度胸はなかった。

しかし、退却命令を聞いた傭兵たちはすぐ秩序を立て直す。

さすが、生存本能だけは一流だ。

「勇士たちよ!」

ウォーカー騎士が大声を張り上げる。

「勝敗はここにあり! フェイン騎士を捕らえた者には、銀貨五枚を与える!」

「おおおっ!」

一斉に沸き上がる歓声。

……金の力って、本当に偉大。

だが、距離が縮まるにつれ、俺の背中に冷たい汗が流れる。

なんせこっちは寄せ集めの傭兵隊。やる気も士気も、正規軍には遠く及ばない。

俺は弓を構え、距離を測る。

……このオンボロ弓じゃ、放物線を描いても届かないな。

(やれやれ……弓兵のくせに射程不足ってどうなんだよ俺)

そうこうしているうちに、敵と味方の弓兵たちが矢を放ち始めた。

ヒュンッ!

「うおっ!?」

矢がすぐそばをかすめて飛ぶ。

慌てて背中の「鍋の蓋」盾を掲げる。

ドスッ!

盾を通じて衝撃が腕に走った。

……やっぱり矢は怖い。

すぐ隣の傭兵が腕を射抜かれ、悲鳴を上げて倒れ込む。

その瞬間、周囲の傭兵たちがビビって足を止めた。

「突撃だ! お前ら臆病者! 女々しくするな!」

ウォーカー騎士の怒号が響く。

「もし止まるなら報酬は無しだ!」

……金の威力その2。

傭兵たちは渋々、足を前へ進める。

(まったく、命より銀貨かよ……いや、人のこと言えないか)

俺は盾の隙間から敵を観察する。

フェイン騎士と従者、それに精鋭っぽい農兵十人。

残りは俺たちと同じ、寄せ集めの傭兵。

距離は五十メートルを切る。

俺は矢をつがえ、大男の傭兵を狙った。

(ごめん! でも生きるためだ!)

ヒュン!

矢は太ももに命中。大男は悲鳴を上げて転がった。

(よし! 当たった! 俺、やればできる!)

だがその直後、敵農兵の弓兵二人が俺を狙っていた。

(うわ、目が合った! やばいやばいやばい!)

矢をしまい、しゃがみ込んで盾を構える。

ドンッ! ドンッ!

二本の矢が盾に突き刺さり、腕が痺れる。

(……こいつら容赦ねぇ!)

逆上した俺は、すぐさま矢を番え直し、敵弓兵を狙う。

ヒュッ!

「ぎゃっ!」

悲鳴。命中したようだ。

確認する暇もなく、すぐ弓を投げ捨てて盾を拾い、腰の短剣を抜いた。

(……さぁ、ここからは近接戦だ! 死にたくないなら踏ん張るしかねぇ!)

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