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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第二卷 傭兵から商人へ② ――戦場の裏側で金を動かす

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第47章 生死の危機 戦前の鼓舞

フィルードは、ぐっと前へと馬を進めた。

砂塵の向こうから迫る騎影。その中心には、いかにも粗暴そうな男たちが笑いながらこちらを見下ろしている。

「私がこの商隊の責任者だ!」

声を張り上げ、フィルードは睨み据える。「お前たちは何者だ? なぜ我々を追う!」

数人の騎手が声を揃えて嘲笑った。

「ははっ、見てわからんか? 俺たちの狙いは一つ――財産だ。大人しく差し出せば、命までは奪わんさ」

兵士たちの間に緊張が走る。フィルードは一瞬、視線を伏せ、深く息を吐いた。

そして声を張り上げる。

「頭に伝えろ! 皆に酒を奢るための金貨十八枚――これが全てだ! 誓って隠し立てはない!」

騎手は一度引き返し、やがて戻ってくる。

「少なすぎる。頭の言葉だ――百枚の金貨と貨物の半分を差し出せ。拒めば皆殺しだ!」

到底呑めぬ条件。フィルードの瞳に怒りが宿る。

「ならば駄馬を五頭、追加しよう! これ以上は譲れん! それでも不満なら仕方ない……たとえ俺が滅びようと、そちらも無事には済まんぞ! ここはドヴァー市も近い。軽々しく命を投げ出すな!」

だが返答はなく、山賊の歩兵が続々と姿を現す。攻撃は避けられぬ――。

フィルードは腰の剣を握り直し、振り返った。

「ブラックスウォーター傭兵団の兄弟たち!」

声は大地を震わせるほどの気迫に満ちていた。

「これが我々が結成して以来、最も手強い敵だ! 敗北すれば、俺はここで戦死する。だが、それこそが俺の誇りだ!」

兵たちの視線が、一斉に団長へと注がれる。フィルードはさらに叫んだ。

「俺もかつては飢えに苦しみ、農奴として生き延びるか迷ったことがある。だが、誇りがそれを許さなかった! 尊厳なき生を送るくらいなら、武器を取り命を懸ける――そう決めたんだ! そして幸運にも、今日まで生き延びてきた。お前たちも同じだろう!」

声に力が宿り、兵士たちの胸に響く。

「我らの団は他の傭兵団とは違う! 血筋も技術も関係ない、努力すれば報酬が得られる。だから頼む。ここまで築き上げた基盤を守り抜いてくれ! 一度失えば、また一からやり直すのは困難だ!」

そして、わずかに声を落とす。

「だが敵の狙いは貨物ではない。我ら一九〇の命だ。もし最悪の結末となれば……故郷に帰り、傭兵団を忘れろ。我々は運命に敗れたのだ」

その言葉は、死を覚悟する決意の吐露だった。

「だが俺は最後まで諦めん! 今回の敵は強大だ。敵兵を一人倒せば銀貨二枚! 戦死者には銀貨十枚を支払う! 家族のある者は峡谷で団が保護する!――準備せよ!」

静まり返った空気を切り裂くように、マイクが叫んだ。

「団長様! 俺たちは敗北しません! 最悪でも、傭兵団と運命を共にします!」

涙声だった。ブルースも続く。

「隊長、悲観することはありません! 俺たちがいます!」

「おおおおおっ!」

兵たちは一斉に雄叫びを上げた。その声は恐怖を押し潰し、士気を炎のように燃え上がらせた。

その時、山賊の歩兵が百メートル先に迫る。

「弓兵、構え!」

フィルードは命じ、自らは迫る騎兵を睨み据える。歩兵に矢を浪費する余裕はない。

矢が放たれ、敵兵三人に命中する。だが倒れたのは一人だけ。すぐさま敵の弓兵も反撃。二十本近い矢が雨のように降り注ぎ、七人が倒れ、さらに数人が負傷した。

フィルードは驚愕する。敵はただの山賊ではない。まるで訓練された貴族の軍勢。弓兵は二十張、騎兵は二十騎以上。鉄鎧や鉄板入りの革鎧を纏った兵士までいる。――だが退路はない。

矢の応酬は続き、敵が五十メートルに迫る頃には、すでに十人が倒れていた。やがて刀盾兵と槍兵が鬨の声を上げ突撃を開始する。

「投げ槍、用意!」

フィルードは距離を測り、数える。

三十五、三十、二十、十――

「放て!」

百本を超える投げ槍が一斉に空を裂き、敵陣中央へと突き刺さる。悲鳴が上がり、盾兵ですら呆然と立ち尽くした。突撃の勢いが止まる。

「次、投げろ!」

ユリアンが叫び、交代の兵が次々に槍を投擲。再び敵兵が倒れ、血と砂塵が戦場を覆った。

だが、それでも二十人ほどの刀盾兵が突撃し、こちらの槍兵と激突。金属音が響き渡り、血飛沫が舞う。

訓練の成果もあり、味方は敵の脚を突き崩し、残りは数人がかりで押し戻す。前線は揺れ動き、戦いはさらに激しさを増していった――。

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