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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第二卷 傭兵から商人へ② ――戦場の裏側で金を動かす

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第45章 見習い傭兵

シャーロットは慌てて両手を振りながら、フィルードにいくつもの小さなコツを教えてくれた。

それらは傭兵として最低限知っておくべき常識ばかりで、決して高度な秘訣ではなかったが――彼女なりの「命を救われた恩返し」だった。

二人の会話は思いのほか弾み、つい長くなってしまう。

やがてジェイソン世話役が咳払いし、暗に「そろそろ立ち去ってはどうか」と促すまで続いた。

名残惜しさを胸に抱きつつ、フィルードは軽く手を振って別れを告げる。

その後、部隊を率いてデイビーの街へ戻る。

さらに二日間の行軍を経て、ようやく商隊は街の門をくぐった。

休む間もなくブライアンのもとを訪ね、鹵獲した物資の件を話すと――彼は呆気にとられた表情を浮かべる。

「フィルード、弟よ……やはり君を見間違えてはいなかった!」

ブライアンは興奮を抑えきれず、机を叩いた。

「君の話によると、あの部族はもうすぐ中級部族に昇格するところだったんだろう? そんな相手を討伐できるなんて……すごすぎる! この物資は少なくとも金貨130枚の価値がある。知り合いの商人に声をかければ、もっと高く売れるかもしれん!」

「兄貴、頼みます」フィルードは即答した。

「最近、豚頭族が大規模に南下しています。やがて戦争は避けられないでしょう。その時、多くの豚頭族部族が滅びれば、家畜の価値は暴落します。だから――今のうちに売った方がいいんです」

理路整然とした言葉に、ブライアンも大きく頷く。

彼はすぐに街へ飛び出して行き、数時間後には買い手を連れて戻ってきた。

最終的に物資は金貨130枚で売れ、手元にあった54枚と合わせて、フィルードの総資産は184枚に達する。

「まるで領主だな……」

ブライアンは金貨の袋を見つめ、感慨深げに呟いた。

「貧しい男爵でも、担保なしではここまでの額を一度に出すのは不可能だ」

フィルードはまず、60枚を取り出してブライアンへの借金を清算した。

「こんなに早く返済できるとは……本当に驚かされたよ」

満面の笑みを浮かべるブライアンに、フィルードは軽く笑って返す。

「どう使うも何も、今の規模を維持できれば十分です。そうだ、デイビーに傭兵団の拠点を置きたいんです。兄貴が今後何か商売を始めるなら、ついでに連絡場所として使わせてもらえませんか? もちろん、手数料は払いますよ」

「何を言うんだ、水臭い!」

ブライアンは肩をすくめつつも提案を肯定し、さらにアドバイスを加える。

「街の酒場を回って、店員に少し金を渡し宣伝させるといい。意外な効果があるぞ」

その一言に、フィルードの瞳が輝いた。

彼はすぐに隊長たちを各酒場へ送り込み、宣伝活動を始める。


資金に余裕ができたことで、フィルードは隊長たちの待遇改善に踏み切った。

五人の隊長と管理職には、毎月八枚の銀貨――高給と言って差し支えない額を支給する。

食費を含めれば、一人につき十四枚前後。五人分で二枚以上の金貨になる。

「最初の仲間たち」を繋ぎ止めるためには、これくらいの誠意が必要だった。

さらに傭兵団は、新しい階級制度を導入する。

最下層は「見習い傭兵」。条件は一ヶ月間の従軍で、訓練や商隊護衛を経験させた後、各隊長とフィルード自身の審査を経て正式に認定される。

給与は銀貨一枚、食事は正規兵と同等。

その上は「一級傭兵」。条件はフィルードが指定した敵を一人倒すこと。給与は二枚。

「二級傭兵」は敵二人で三枚、「三級傭兵」は敵四人で四枚。

遠距離戦闘の場合は条件を二倍にする。近接戦闘に比べて優位性が大きいためだ。

加えて、下級将校を務める者には銀貨一枚を上乗せする。

こうして、最古参の仲間たちは三級傭兵+将校待遇で、月給五枚前後を得ることになった。

前回の戦闘後、見習い傭兵十三人が一級に、五人が二級に、さらに一人が三級へと昇格した。

三級まで一気に昇ったのは弓兵で、両手武器を振るいながら猪突猛進し、四人のブタ頭族を倒した猛者だった。

「隊長以上の働き」と称されるその戦果に、仲間たちも舌を巻いた。

これにより、フィルードの傭兵団は計六十五名。

一級十三人、二級三十五人、三級+下級将校十一人、管理職六人。

さらに、ジャッカルマン戦士たちも見習いから順次昇格を果たし、人間と同じ待遇を受ける。

フィルードはまた、団を五階層に整理した。

団長である自分を頂点に、将校、正規傭兵、見習い、そして労働者層。

知的障害や体の弱さを抱える者も受け入れ、生活を保障する。

「養う」という形ではあるが、それは確かな善意でもあった。

狼青には銀貨八枚を与え、小隊長と同じ待遇を保障する。

誠実な対応なくして、種族の壁を越えることはできない。

それはフィルードがよく理解していることだった。

だが同時に、彼は冷静でもあった。

「この商路は利益が大きいが、危険もまた大きい。いずれ豚頭族に奪われる可能性もある。だが――ジャッカルマンを味方にできれば、占領されても商売を続けられる」

そう考え、彼は新兵たちも一律で見習いに昇格させた。

だがその裏で、毎月二十から三十枚の金貨が支出として消えていく計算も成り立つ。

「貧兵黷武」――力を持つがゆえに、財を食いつぶす軍。

フィルードはその現実を噛み締めながら、それでも前を見据えていた。

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