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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第405章 戦場の格差

伝令兵が力強く頷き、即座に駆け出した。

その背中を見送りながら、俺は静かに息を吐く。

——ついに、決戦か。

今、レーガンとクルミの花も連合軍の中に混じっていた。

二人は周囲を見渡し、同時に眉をひそめる。

まるで市場だ。

怒号、混乱、統一されていない装備、バラバラの隊列。

整然とした軍などどこにもない。

(……ひどいな)

レーガンは内心で冷静に評価する。

守備連合軍は完全な玉石混交。

特に部族戦士の質の差があまりにも激しい。

血気盛んな者もいれば、今にも倒れそうな者もいる。

これは訓練でも勇気でもない——単純に統治能力の差だ。

領主の質が、そのまま兵の質に反映されている。

(これで軍と呼ぶのは無理があるな)

二万人以上が集まっている。

だが——

実際に「戦える」のは一万少し。

残りは数合わせ。いや、足を引っ張る可能性すらある。

走れない兵が混ざる軍など、戦場ではただの重りだ。

その時。

攻撃命令が下った。

一瞬で、場の空気が変わる。

守備連合軍が一斉に動き出した。

その中核——約一万の正規守備兵が前に出る。

密集陣形を組み、長槍を揃え、ゆっくりと前進。

ようやく「軍」と呼べる動きだった。

部族戦士は両翼へ回された。

正しい判断だ、とレーガンは思う。

(中央に置けば、確実に崩壊の起点になる)

あいつらは戦うというより、暴れる。

味方を巻き込む危険の方が高い。

敵も動きを察した。

数日間睨み合っていた連合軍がついに動いた。

——つまり、決戦。

敵軍も即座に態勢を整える。

(ここが分岐点だな)

マイクが決戦を急いだ理由も明白だ。

時間をかければ、敵援軍が来る。

そうなれば——泥沼。

勝てる戦も、引き分けに落ちる。

数十メートル。

距離が詰まった瞬間、大城守備官が怒鳴った。

「投槍準備! 部族戦士、突撃!」

命令が伝播する。

次の瞬間——

戦場が爆発した。

両翼の部族戦士が狂ったように突進。

(……制御不能だな)

だが、それでいい。

今は「数」で押す局面だ。

中央では守備兵が投槍を構え、一斉に投擲。

空が黒く染まる。

雨のように降り注ぐ槍。

敵陣に突き刺さり、豚頭族が次々と倒れる。

最前列では鉄甲兵が盾を構え、突進の起点となる。

敵の刀斧兵がそれを見て即座に判断。

——迎撃ではない、突撃。

ぶつかった。

長槍と斧が激突する。

守備軍団は若い兵が多い。

強烈なボアマンの突進に、前列が崩れる。

だが——

すぐに補充。

躊躇がない。

(士気は高いな)

レーガンは小さく頷いた。

一方、両翼。

ここは地獄だった。

装備の劣る部族戦士が、肉の壁となって時間を稼ぐ。

死ぬ前提の突撃。

だが、それが戦場を支えている。

マイクは馬上から全体を見ていた。

(長引けば崩れる)

即座に結論を出す。

敵は疲弊している。

数日間の消耗。

戦闘力は一割以下。

——ならば、今で決める。

クルミの花は外周を遊弋していた。

両手剣を振るい、盾兵を叩き斬る。

「その盾、拾え!」

即座に指示。

資源はその場で補充。

無駄がない。

時間が経つにつれ——

戦場は崩れた。

陣形は消え、ただの乱戦へ。

敵は騎兵に分断され、細切れになる。

味方の部族戦士も深く突っ込み、絞殺戦へ。

守備軍団の中央も突破されかけていた。

完全な混沌。

(……まずいな)

マイクの背筋に冷たいものが走る。

乱戦は不利だ。

騎兵が使えない。

誤射の危険。

統制も効かない。

——判断は一瞬。

「全騎兵、下馬! 三人一組で歩兵戦!」

即断。

騎兵たちは外周へ移動し、一斉に下馬。

武器を持ち替え、戦場へ再突入。

この連中は——化け物だ。

幾多の戦場を潜り抜けた老兵。

技は極限。

無駄がない。

彼らが加わった瞬間——

戦局が変わった。

敵が押され始める。

叫び、血、肉。

地獄そのもの。

だが、その中で——

老兵たちは冷静だった。

三人一組。

連携。

体力管理。

すべて計算済み。

(これが“差”だ)

レーガンは確信する。

数でも装備でもない。

経験。

三十分後。

限界が来た。

最初に崩れたのは豚頭族。

逃げる。

連鎖。

弱いボアマンも続く。

——崩壊。

マイクは即座に追撃命令。

「騎兵、再騎乗! 追え!」

広大な平原。

逃げ切れるはずがない。

騎兵が再び牙を剥く。

静かに、無言で。

ただ殺す。

敵は恐怖に崩れ、地に伏し、命乞いを始める。

だが騎兵は止まらない。

通り過ぎる。

狙うのは逃げる者。

後方では——

部族戦士が降伏兵を虐殺していた。

マイクは眉をひそめる。

(無意味だ)

「降伏兵は殺すな。利益がない」

命令が飛ぶ。

ようやく制止。

暴力で暴力を抑える。

戦場が落ち着くまで、一時間。

結果は明白だった。

敵損害——七千以上。

捕虜——一万超。

壊滅。

こちらも損害はある。

だが——

勝敗は決した。

(これで流れは完全にこっちだ)

マイクは静かに戦場を見渡した。

三流は淘汰された。

残るのは——一流だけだ。

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