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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第384章武器と花嫁――老兵の価値は鋼で量られる

レーガンはしばらく黙って考えた。

(食糧では動かない……か)

クルミの花領主の態度を見れば分かる。

すでに根薯は余っている。

つまり――

食料では交渉材料にならない。

レーガンはゆっくり口を開いた。

「なるほど。

食糧はいらないということですね」

そして少し声を落とした。

「それなら――武器を提供しましょう」

クルミの花の耳がぴくりと動いた。

「守備団では定期的に武器の損耗が出ます」

レーガンは淡々と続ける。

「その損耗品が倉庫にかなり溜まっている」

「そこから選んでお渡しできます」

その瞬間。

クルミの花領主の目がぱっと輝いた。

(来たな)

レーガンは内心で小さく笑う。

今の部落では根薯は不足していない。

むしろ余裕がある。

さきほど提示した

一人二百ポンドの干し根薯。

あれはかなりの誠意だ。

二ポンドの根薯から一ポンドの干し物。

つまり実質四百ポンド相当。

秋収前なら――

百ポンドでも飛びついただろう。

だが今は違う。

しかし。

武器となれば話は別。

クルミの花の目に、明らかな欲が浮かんだ。

やがて彼は大きく笑った。

「うーん……」

わざと考える仕草をする。

「原則としては人口は取引できないんだがな」

肩をすくめる。

「だが……」

ニヤリと笑う。

「王国のために戦った老兵のためだ」

「今回だけ特別に破例してやる」

そして身を乗り出した。

「条件は?」

胸を叩く。

「うちの部落の雌性はな、

媚び目が花のように美しい」

「誰が見ても足が止まるぞ」

レーガンは心の中で思った。

(……こいつ、恥知らずだな)

さっき部落に入った時の光景。

あの獣人たちは――

正直言ってかなり汚かった。

泥と血と脂。

まるで糞溜めから這い出たようだ。

それが「花のように美しい」?

(まあいい)

レーガンは表情を崩さない。

頭の中で鉄器の価格を計算する。

守備軍団の武器はすべて精鉄製。

人間世界でも安くない。

少し考え、言った。

「精鉄の槍頭一本で雌性一人」

「二十人なら――」

指を立てる。

「長槍二十本」

「もちろん槍柄付きです」

「どうでしょう?」

だが。

クルミの花は即座に首を振った。

「少なすぎる」

机を指で叩く。

「うちの美人雌性がそんな値段か?」

ニヤリと笑う。

「こうしよう」

指を二本立てた。

「一人につき鎧一着」

「豪華な甲冑じゃなくていい」

「質の良いレザーアーマーでいい」

そして言った。

「レザーアーマー二十着」

「それに精鉄長槍二十本」

「これで成立だ」

レーガンは黙った。

(……強気だな)

だが頭の中では別の計算をしている。

フィルードはこの数年、

数多くの獣人部族を滅ぼしてきた。

その結果――

大量のレザーアーマーを鹵獲。

使えない物は切り刻み、油を絞る。

石鹸の材料だ。

状態の良いものは回収され、

品質別に分類されている。

最高品質は――

鉄張りレザーアーマーに改造。

やや劣るものは再加工。

守備軍団は全員が上質レザー装備。

しかも月の損耗は

わずか十着程度。

かなり贅沢な待遇だ。

精鋭部隊の一部には

すでに鉄張り装備が配備されている。

フィルードの本来の構想は――

守備軍団全員に鉄張りレザーアーマー。

ただし人数が多すぎる。

費用も時間も足りない。

だがレーガンは知っている。

(もうすぐ実現する)

王国は今、大量のドワーフを捕らえている。

鉄器生産は急上昇。

いずれ実現する。

(そうなれば)

(このレザーアーマーは旧式だ)

つまり。

惜しくはない。

だが――

値切りは必要だ。

そうしないと相手は満足しない。

レーガンは大げさに驚いた顔をした。

「多すぎます!」

手を振る。

「こちらのレザーアーマーは

あなた方の物より遥かに高品質です」

「価格は一律にはできません」

少し考えるふりをした。

「こうしましょう」

指を折る。

「精鉄長槍二十本」

「それに――」

「上質レザーアーマー十着」

そして続ける。

「ただし」

「老兵本人に選ばせます」

「それでどうです?」

クルミの花はすぐ理解した。

(これが本気価格か)

これ以上は無理だ。

すぐに笑った。

「よし」

「成立だ」

レーガンも頷いた。

「今回は一名だけ連れてきています」

「他の老兵はまだ説得できていません」

「まず彼に選ばせる」

「後日、順次連れてきます」

クルミの花は頷いた。

そして釘を刺す。

「人を選んだ後で

俺の悪口を言うなよ」

腕を組む。

「俺がこの提案を飲んだのは

王国の功臣だからだ」

鼻で笑う。

「武器なんて

俺から見ればクソ同然だ」

レーガンは少し苦笑した。

(……この男)

(無恥だが、頭は回る)

そして言う。

「安心してください」

「どう伝えるべきか分かっています」

話が終わると――

クルミの花は再び半生の羊肉を食べ始めた。

レーガンはテーブルのナッツを摘みながら待つ。

しばらくして食事が終わった。

二人は天幕を出る。

外には多くのジャッカルマンが集まっていた。

近づくと――

大黒石が中心にいた。

今の彼は意気揚々としている。

「その戦いはな!」

大声で語っていた。

「空も地面も暗くなるほど激しかった!」

「山の石が雨のように降った!」

「敵軍の馬が次々転んだ!」

拳を振る。

「その日、俺は五人斬った!」

「相手はお前たちみたいな部族戦士だった!」

周囲の若い戦士たちが息を呑む。

「その戦いで俺は正式軍団に昇格したんだ!」

その時。

レーガンが近づくのを見た。

大黒石は話を切り上げる。

「続きはまた今度だ」

戦士たちは名残惜しそうに散った。

レーガンは笑顔で言った。

「大黒石爵士」

「話はつきました」

「気に入った相手はいましたか?」

肩を叩く。

「決まっているなら言ってください」

「すぐ連れて帰ります」

そして付け加える。

「クルミの花領主は

あなたのような王国の功臣を非常に尊敬しています」

「きちんと感謝してくださいね」

大黒石は顔を上げた。

クルミの花を見る。

体格は自分より大きい。

そして――

強者の気配。

超凡者特有の圧力だ。

クルミの花は軽く頷いた。

「勇士よ」

静かに言う。

「王国のために傷を負ったと聞いた」

「敬服する」

「望みはできる限り叶えよう」

その言葉を聞き。

大黒石は杖を握り立ち上がった。

そして――

標準軍礼。

「男爵閣下」

「ご挨拶申し上げます」

名目上、勲爵たちは別体系。

だが貴族階級では

クルミの花は二段以上上。

傲慢にはできない。

クルミの花は一瞬固まった。

(……敬礼?)

見たことがない。

だが不思議な感覚が胸に広がる。

満たされた感覚。

どこか神聖なもの。

慌てて手を振った。

「いやいや!」

「そんな堅苦しいことはいらない!」

笑う。

「大黒石兄弟」

「好きに選べ!」

「あとで未婚の雌性を全員集める」

そして豪快に言った。

「レーガンは二人と言っていたが――」

指を三本立てる。

「特別だ」

「お前は英雄だ」

「英雄には英雄の待遇が必要だ」

牙を見せて笑う。

「三人選んでもいいぞ」

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