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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第二卷 傭兵から商人へ② ――戦場の裏側で金を動かす

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第38章 奴隷の購入

「値段は幅広いですよ。力仕事しかできない連中なら、だいたい二~十枚の金貨ってところですな。体格や体力次第です」

奴隷商人は慣れた調子で答えた。

「では、技術を持つ奴隷は? 木工職人とか、石工や鍛冶屋のような」

フィルードが問いかけると、商人の目がわずかに光る。

「お目が高い。ですがその分お高いですよ。木工職人なら二十~百枚、鍛冶屋は四十~二百枚が相場です。石工はやや安く、十~五十枚。もっとも、私が持っているのは見習いばかりですがね」

商人は胸を張って言い、指を折って数える。

「石工見習いが八枚、木工見習いが十五枚。そして鍛冶屋見習いは最低でも四十枚。これ以上は勘弁してください」

フィルードは腕を組み、短くうなずいた。値は張るが、領地を築くなら技術者は必須だ。

「獣人語を話せる奴隷は?」

「……いますとも。コボルト語、ハイエナ語、ピッグマン語。それぞれ十~二十枚。ただし、畑仕事なんてまるで知りませんし、反抗的です。安く済ませたいなら、ただの少年なら四枚で出しますが?」

商人は半笑いを浮かべ、フィルードを値切り狙いの田舎者と決めつけたようだった。

だがフィルードは気にせず、淡々と答える。

「木工と石工の見習いをひとりずつ。あとは、醜い女中を四人と、ハイエナ語ができる通訳を一人だ。見積もりを出してくれ」

商人は舌打ちし、歯ぎしりしながら提示する。

「……女中は十八枚の銀貨。ほとんど原価です。獣人語の少年は三枚の金貨。職人見習いは、それぞれ二枚ずつ値引きしましょう。ただし、まだ半人前だとご理解を」

「分かった。この条件を覚えておこう。他も見て回ってから、戻ってくる」

フィルードは短く返し、一行を連れて市場を見て回った。

――結論から言えば、最初の商人が一番誠実だった。

他の店は値段をふっかけるばかりで、質も大差ない。最終的にフィルードは彼のもとに戻り、取引を成立させた。

総額二十三枚の金貨。残りの所持金は三十八枚にまで減ったが、技術者と女中、通訳を手に入れたのは大きい。

さらに道具や百ポンドの塩を追加購入し、一行は城下を離れた。今回は峡谷へ戻り、拠点の整備に腰を据えるつもりだ。

道中、フィルードは新しい奴隷たちと簡単な会話を重ねる。

石工の見習いはフランク。十六歳。まだ不慣れだが、石臼くらいなら作れるらしい。

木工の見習いは十四歳のスティーブン。基礎は身についているが、技術は凡庸。

四人の女中は力仕事担当で、料理の腕は……期待しない方がいい。

そして最後に、獣人語を理解する少年。

「俺の名はリトル・ロバート。……元は商家の息子でした」

彼は淡々と語った。幼少期に家にいたハイエナ奴隷から言葉を学び、今では流暢に話せる。だが盗賊に両親を殺され、親戚の借金のために売られてきたのだという。

「……災難だったな」

フィルードは短く言葉をかけるにとどめた。

そのロバートの通訳で、フィルードはハイエナの首領と対話できた。

「名はローセイ。雪狼部族の生まれで、父が現首領だそうです」

フィルードは頷き、低く告げる。

「伝えてくれ。遠からず人間と獣人の戦が起きる。この荒野で独立を保つのは難しい。だからこそ……私は峡谷に領地を築き、同盟を結びたいと考えている。互いに危機を乗り越えるためにな」

ローセイはしばし黙し、やがて鋭い眼光を返してきた。

その目に宿るのは、反抗ではなく、わずかな希望の光だった。

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