表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第一卷 傭兵から商人へ① ――異世界サバイバルと最初の血

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/288

第28章 商隊始動、そして迫る影

荷馬車に貨物を積んでいなかったため、フィルードたちは人間の町を経由する比較的安全なルートを選んだ。

そして町に着くたび、彼は地元の傭兵を募り、選抜を始めた。

「体が丈夫で、素直で誠実な者……欲を言えば朴訥で、裏切らない人間がいいな」

面接のように一人一人を観察し、条件に合わない者は断った。

最初は不満を漏らす者もいたが、フィルードが笑顔で「団の規則は厳しい」と告げると、誰も逆らわなくなった。

やがて故郷ルビンを通り過ぎる頃には、傭兵団はいつの間にか総勢四十七人。

商隊の従業員三人も「傭兵」として数えられた。

――そして隣町。

「おおっ!? フィルード兄弟!」

迎えてくれたのは、旧友ユーリオンだった。目を丸くし、再会を喜んで駆け寄ってくる。

「数日ぶりかと思ったら……え、傭兵団、もうこんなに大きくなってるのか!?」

フィルードは満面の笑みで頷いた。

「隠すつもりはないんだ。最近ちょっとした財を成したからね。そのおかげで団を拡大できたんだ。

実は今回、ユーリオン兄弟を仲間に迎えに来たんだよ。規則も改定したんだ。食事だけじゃなく、ちゃんと給料も払う。資本がもっと増えれば、リーダー格にはさらに報酬を引き上げるつもりさ」

「な、なんだって!? 飯付きで給料まで……!」

ユーリオンの目は輝き、即座に頷いた。

「聞くまでもないさ! 今すぐ家に戻って荷物を――」

「ま、待った待った!」

慌ててフィルードが袖を掴む。

「兄弟自身はもちろん大歓迎だ。でも、できれば知り合いの傭兵にも声をかけてみてくれ。今回、団を六十人規模まで拡大するつもりなんだ」

「六十人!? 本気か!?」

ユーリオンは口をあんぐりと開け、次の瞬間には興奮を隠せず大声で答えた。

「もちろんやる! 土地を持たず、行き場のない平民なんて山ほどいる。毎年何人も餓死してるんだ。声をかければ、腕っぷしの強い奴らもきっと集まるさ!」

フィルードは真剣な表情で念を押した。

「体が丈夫で、まじめで、言うことを聞く者を優先してくれ。暴れ者や酒癖の悪い奴はいらない」

「了解だ!」

数刻後。

ユーリオンは八人の屈強な若者を連れて戻ってきた。彼らの顔つきや体格を見て、フィルードは満足げに頷く。

こうして一行はさらに進み、数日後にはついに六十名の傭兵団へと成長した。


やがて最初の目的地――ダービー城に到着する。

ここで、同行していたブライアンとも別れの時が訪れた。

「ここで俺は下りる。家族もいるし、財産もあるからな」

ブライアンは信頼できる穀物商人を紹介し、穏やかに助言を残す。

「小麦と大豆は一ポンド三フェニー、ライ麦は一・五フェニー、馬の飼料用カラス麦は一フェニーだ」

その価格は確かに破格だった。

「……じゃあ、三千三百ポンドの大豆を」

フィルードは即断し、金貨十一枚を支払う。運べば三枚以上の純利益が出る計算だった。

さらに千二百ポンドのライ麦を黒パンに加工させた。焼きたてのパンが並んだ瞬間、傭兵たちの目は輝いた。

「これが……俺たちの十日分の食料か」

黒パンを抱え、皆どこか誇らしげだった。


だが、喜んでばかりはいられない。

馬の飼料代が重くのしかかる。五頭の馬を維持するだけで、兵士二十二人分の食費に匹敵した。

「……贅沢はできないな。駄馬は一頭だけ残す」

ため息をつきながらも、冷静に計算を重ねる。残る資金は金貨八枚余り――決して余裕はなかった。

翌朝、ブライアンは城外まで見送りに来てくれた。

「フィルード弟よ。君には大志がある。だが今は焦るな。初期の蓄積が最も大切だ」

「ええ、分かっています。来月また戻ってきたとき、兄貴と心ゆくまで飲みましょう」

笑顔で敬礼し、仲間たちを促して商隊を北へと進ませた。


やがて国境地帯。

人間の集落はほとんどなく、緊張が漂い始める。

フィルードは慎重に命じた。

「マイク、偵察を頼む。周囲を注意深く探ってくれ」

昼前に一度休憩を取り、進軍を再開して二時間ほど。マイクが馬を走らせて戻ってきた。

「頭! 前方に小さなジャッカルマンの部族がいる! およそ二百、戦士は七十ほど!」

「……避ける。今の俺たちは新兵ばかりだ。まともにぶつかれば壊滅する」

フィルードはきっぱりと指示を下した。

「戦うのは後だ。まずは鍛え上げて、兵士として形にしてから――」

マイクは渋い顔をしつつも、理解して頷く。

商隊は危険を避けつつ進軍した。だが別の部族にも遭遇し、しかも移住してきた形跡があった。

「……豚頭族たちが南下している」

その確信が、フィルードの胸に重くのしかかる。

「このままじゃ、大規模な戦争は避けられない……」

だからこそ、彼は心に誓った。

――戦争が始まる前に、この六十人を鍛え上げる。必ず。

しかし数日後。

ついに商隊は、一つの部族に発見されてしまうのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ