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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第一卷 傭兵から商人へ① ――異世界サバイバルと最初の血

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第25章 戦場で出会った名誉男爵カール

フィルードが軍隊を率いて百メートル圏内に入ると、弓矢を取り出し、獣人の兵士たちへと矢を雨のように放った。

瞬く間に六名が倒れ、敵陣に混乱が走る。

矢筒が空になると、彼は片手剣を抜き、大盾を構え、大声で叫んだ。

「この獣人どもを殺せ! 一人倒すごとに銀貨一枚を追加だ!」

報酬の言葉に、傭兵たちは雄叫びを上げて突撃する。人間側の兵士たちもその声に奮い立ち、士気は一気に高まった。

ジャッカルマンの群れも反応し、怒声を上げながら反撃に移る。二十名を超える傭兵たちが素早く敵陣に突入し、フィルードは盾を持ってブルースの傍らにぴたりと寄り添い、彼を狙う攻撃を次々と弾き返した。

ブルースは両手大剣を振るい、その迫力はまるで千斤の鉄槌。疲弊したジャッカルマンたちはまともに対抗できず、次々と切り伏せられていった。

そのとき、一人の大柄なジャッカルマンが吠え声を上げ、ブルースめがけて突進する。フィルードが反応する前に、ブルースは横薙ぎの一閃を繰り出した。恐ろしい速さの一撃に、ジャッカルマンは慌てて大剣を構えて受け止めたものの――

「ドンッ!」

轟音と共に押し負け、数歩後退させられる。

「今だ!」

フィルードは素早く踏み込み、隙だらけの太腿へ片手剣を突き立てた。

「グアアァッ!」

苦痛の叫びを上げたジャッカルマンは血まみれの口を開けて噛みつこうとしたが、フィルードは冷静に盾で突き飛ばす。地面に倒れたジャッカルマンは立ち上がろうと足掻くが、切られた足の動脈から血が止まらず、やがて動かなくなった。

フィルードは彼を放置し、再びブルースの横に戻って盾を掲げる。その間にも傭兵団は連携を見せ、まるで精鋭部隊のように次々と獣人を討ち取っていった。

戦闘は数分で終わり、ジャッカルマンたちは敗走。頭領は悔しそうな咆哮を上げたが、もはや勝ち目はなく、撤退を命じるしかなかった。

しかしフィルードは容赦せず、兵士たちを率いて追撃した。普段なら無駄に追うことはしない。だが、この時のジャッカルマンたちは完全に力尽き、逃げることしか考えていなかったからだ。抵抗できず、ほとんどが討たれ、生き残ったのは騎兵五名のみだった。

結果、傭兵団は三十二名のジャッカルマンを討伐。被害は戦死者二名、重傷者五名という痛手ではあったが、それ以上に戦利品は莫大だった。

最低でも二重革鎧、ほとんどは鉄をはめ込んだ革鎧。そして半身鉄甲が三着――どれも高価な品だ。新品なら金貨五、六枚、中古でも金貨四枚は下らない。

「これは……すごいな」

鎧を撫でながら、フィルードの頬が緩む。

その時、大柄な中年の軍人が近づいてきた。

「勇士よ! 名を聞かせてもらえないか」

彼は堂々と胸を張って名乗った。

「私はカール。王国第二軍団の中堅将校であり、名誉男爵の爵位を持つ者だ。今回の援助に心から感謝する。この件は必ず軍へ報告し、あなたに褒美を申請しよう」

「はっ! 私はフィルードという名の傭兵です。商隊の護衛で通りかかっただけで……偶然、戦いを目にして加勢したまでのこと。どうかお気になさらず」

カールは豪快に笑い、フィルードの肩を叩いた。

「謙遜するな。あなたがいなければ我が隊は全滅していたかもしれん。真の勇士だ!」

フィルードは一瞬ためらった後、おずおずと切り出した。

「あの……倒したジャッカルマンたちの装備なのですが……私たちが持ち帰っても?」

「当然だ!」

カールはにっこりと笑った。

「それはあなた方が命を懸けて得た戦利品だ。それに――助けてくれた礼に、私から武器もいくつか譲ろう!」

「おお……! ありがとうございます、男爵様!」

フィルードは思わず頭を下げた。

その後、兵士たちが休息し体力を回復する間、フィルードたちは戦利品を集めた。収穫は膨大だった。半身鉄甲三着、鉄をはめ込んだ革鎧二十一着、二重革鎧八着。さらに両手剣三本、片手剣十一本、盾十一枚、斧二本、精鉄の長槍十六本、制式長弓六張――まさに一攫千金である。

整理が終わると、負傷者を担ぎながら一行はモニーク城へ向かった。

その途中、カールは半身鉄甲二着を取り出し、フィルードに手渡した。

「フィルード兄弟、もう『様』などと呼ぶな。私は軍から与えられた名誉男爵にすぎない。軍を離れれば爵位も消え、ただの騎士に戻る。

この二着は私が自ら討ち取った戦利品だ。ささやかだが受け取ってほしい」

フィルードは形式的に数度辞退した後、ついに受け取った。これほどの鎧は金があっても容易に手に入らない代物だからだ。

「ところでカール兄弟、なぜ獣人討伐に?」

「いや、違う。我々は伯爵の命で周辺を偵察していたのだ。だが、まさか三百もの獣人軍と遭遇するとは思わなかった。装備はこちらが勝っていたが、数で押され……危うく全滅するところだった」

「……やはり」

フィルードは顔を引き締めた。

「この道中、獣人の部族をやたらと目にしました。商隊の掌櫃によれば、これは異常な兆候だとか。もしかして……戦争が始まるのでは?」

カールは周囲を見回し、兵士が離れているのを確認すると低声で答えた。

「フィルード兄弟、その推測は正しい。この数年のうちに必ず人族と獣人族の戦争が始まる。……だから、今はあまり動き回らぬ方がいい」

血の匂いがまだ漂う戦場で、フィルードはただ黙って頷いた。

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