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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第一卷 傭兵から商人へ① ――異世界サバイバルと最初の血

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第16章 団結か死か──進軍の号令

フィルードが三人のリーダーを呼び寄せたのは、理由があった。

部落の脅威を公に語れば、粗悪な傭兵たちは恐怖に呑まれ、士気を失う危険があるからだ。

驚きと困惑を浮かべる兵士たちを後に、四人は列を離れ、人目のない茂みへと移動した。

そこでフィルードは、先ほどブライアンに話した戦略を改めて説明する。今度はさらに詳細を添えた。

目の前の三人は、ただの荒くれ者ではない。高価な装備を揃えている以上、豊富な実戦経験があるはずだ――だからこそ、彼らを味方に引き込む必要がある。

言葉を重ねるにつれ、三人の表情が変わっていった。

最初は無関心。次に驚愕。そして最後には、純粋な感嘆。

先ほどまで敵意を隠さなかったユリアンでさえ、その目は複雑な光を帯びていた。

最初に口を開いたのはマイクだった。

「フィルードさん……あなた、貴族の教育を受けているんじゃないですか?しかもかなり高度な。俺はこれまで数多くの小貴族と接してきましたが、あなたほど戦場を俯瞰できる者には会ったことがない。戦略も戦術も理路整然……実行可能性は非常に高い。異論はありません。これからは全面的に従います。そして、俺の町の傭兵たちもできる限り導きましょう!」

「そうだな!」ブルースが興奮気味に頷く。

「驚かされたよ、フィルードさん。俺も異論なしだ!」

そして最後にユリアンが、かつての傲慢さを消し去り、頭を下げた。

「フィルードさん、先ほどの無礼をどうかお許しください。あなたほどの若さで、これほどの視野を持つなど信じられなかったのです。ですが今は理解しました。異論はありません。これからの行動、あなたの指揮に従います!私の町の傭兵たちも、必ず説得してみせます!」

フィルードは爽やかに笑って答える。

「私は貴族ではありません。ただ、戦争に強い興味を持ち、子供のころから研究してきただけです」

そしてユリアンに向き直り、穏やかに続けた。

「ユリアン勇士、私は怒っていません。立場を置き換えて考えれば当然です。もし俺があなたの立場で、突然若造に指揮を執られることになったら、俺も同じように疑ったでしょう」

四人は顔を見合わせ、笑みを交わした。

こうして協力が固まり、五十三名の精鋭部隊は瞬く間に統合された。

兵力の内訳はこうだ――

槍兵三十八名。もっとも安価な鉄槍ゆえ、大多数を占めている。

剣と盾を持つ兵士十名。装備は粗末だが、数は揃っている。

そして弓兵五名。フィルードとマイクは制式の長弓を携え、ケビンを含む三人は威力の低い猟弓を持つ。

フィルードはまず槍兵を十人一組にまとめ、密集した槍陣の基本だけを叩き込んだ。突撃時に「槍の森」を維持できれば十分だ。

剣盾兵にも同じように最低限の連携を要求し、形だけでも部隊らしい統制を整える。

さらに彼は、粗悪な傭兵たちも見捨てなかった。

午後まで何度も集団突撃の訓練を繰り返させる。汗と怒声の渦の中で、全員の動きは次第に揃っていった。

訓練を終えた一行は、その日のうちに十数マイルを行軍し、部落近くの谷間に潜伏した。簡素なパンで腹を満たし、早めの就寝。

翌朝。夜明け前。

フィルードは真っ先に目を覚まし、ブライアンに「音を立てるな」と念を押した。

そして三人のリーダーとケビンを連れ、五人だけで部落の様子を偵察に向かう。

峡谷に広がる無数のテント。小川が流れ、やがて大河へと注いでいる。まさに理想的な住居だ。――猪人族が長い間求め続けてきた拠点に違いない。

「フィルードさん」ブルースが小声で囁く。

「もし猪人族が出てこなかったら……いつまで待つんです?」

「心配はいらない」フィルードは首を振る。

「今は冬じゃない。狩りも放牧もある。必ず外に出てくる」

彼の予想通り、夜明けとともに二十余りの猪人族が現れた。先頭は数名の騎兵。大きな馬にまたがり、威圧感を放っている。

フィルードはすぐに判断した。

「ケビン!戻ってブライアンに伝えろ。二十以上の戦士が出てきた。大部隊をすぐに連れてくるように!」

「了解!」ケビンは草むらを抜け、全力で走り去った。

リーダーたちも同時に立ち上がり、追跡しようとしたが――

「伏せろ!立ち上がるな!」フィルードが制した。

「今出てきたのは二十三人。おそらく戦士の大半だ。ならば戦術を変更する。大部隊が到着したら、部落を直接奇襲し、不意打ちで仕留める!」

三人のリーダーは即座に理解し、にやりと笑った。

三十分もせず、ブライアン率いる大部隊が到着。

フィルードはまず粗悪な傭兵たちに命じる。

「石を拾え!投石武器として使え!」

今、敵の主力は部落を離れている。ならば一気に片付けるのが最善。

「前進!」

だが傭兵たちは興奮し、全力で走り出した。

「馬鹿者!全力疾走するな!一定の速度を保て!息切れしたらただの餌だぞ!」

鋭い叱責に、隊列はすぐに速度を落とす。

部落まで数百メートル――その時、猪人族の見張りが彼らに気づいた。骨笛の鋭い音が峡谷に響き渡り、混乱が広がる。

「殺せ!」

百名を超える傭兵たちが一斉に突撃。

投げつけられた石が獣皮のテントを叩き、中の猪人族を叩き起こす。飛び出してきた者たちを迎え撃つのは、冷たい光を放つ長槍の群れだった。

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